正しい日本語

実はこうだった!「させていただく」ブームから見える、日本式コミュニケーションの本質

実はこうだった!「させていただく」ブームから見える、日本式コミュニケーションの本質
KADOKAWA SEMINAR(C)

 「させていただく」の研究書で世の中に旋風を巻き起こした言語学者、椎名美智氏。「させていただく」ブームの到来と現代日本人のコミュニケーションスタイルについて、大量の資料やデータをとことん調査し、分析。この言い回しが爆発的に広がった理由と受け取る側の違和感の正体を、街中にある数々の実例とロジカルな調査分析より解き明かします。

「させていただく」が氾濫している

不祥事を起こした政治家が記者会見で、
「反省させていただきます」
「謝罪させていただきます」と言う。

芸能人が、
「〇〇さんと入籍させていただきました」
「このたび結婚する運びとなりましたことをご報告させていただきます」と言う。

コロナ禍の状況においても、
「アクリル板越しでお話しさせていただきます」
「マスクを着用でないお客様の入店を禁止させていただきます」。

近年、「させていただく」が大活躍、爆発的に使用されている一方、「使いすぎ」「違和感がある」など、否定的な意見も少なくないようです。

なぜ「させていただく」をつい使ってしまうのか?
なぜ聞く側は違和感を覚えるのか?

本書はその謎に迫っていきます。

敬意は使われるうちにすり減っていく

 理由のひとつが「敬意漸減(ぜんげん)」。敬語が使われるうちに敬意が少しずつすり減っていき、これを補うため敬語を追加していくようになるのです。

 著者の分析によると、「させていただく」はこれまでに「してくれる」→「してくださる」→「してもらう」→「していただく」→「させていただく」の順に変化、この現象は「させていただく」だけでなく、どんな敬語にも起こりうるとのこと。

 「敬意が減っていく方向には2種類あります。尊敬語のように相手を上に位置づけるような表現の場合、敬意がすり減ってくると、相手が自分と同レベルか、自分よりも下に下がってしまいます。逆に、自分がへりくだる言葉だと、自分に焦点が当たって、自分が尊大化して偉そうに聞こえるようになっていきます。」

 敬意の低下を防ぐため、言葉が時代とともに変化していくのです。

「させていただく」ブームから見えてくるもの

 ブームの理由はこれだけではありません。

 巷にあふれる看板や広告、マンガ、毒舌キャラの芸能人、SNSの投稿、落語、日本語の大辞典、約700人が参加したアンケート調査など、膨大な資料やデータをとことん分析し、原因を深掘りしていきます。

 看板や広告、案内ポスターなどは画像つきで紹介されており、「させていただく」を普段あまり使わない(目にしない)人もイメージしやすいのですが、何より特徴的なのは、「させていただく」が好まれるようになった背景と、受け取る側の違和感の正体が徹底してロジカルに解説されている点。

 アカデミックな筆致を保ちつつ、ほどよいタイミングで身近なトピックに戻りながら論評を展開、今を生きる私たちの言葉の使い方やコミュニケーションの本質が浮かび上がってきます。

 「『させていただく』を調べていくうちに、強く感じたことがあります。それは、今起きているブームはこのひとつの言葉だけの問題ではないということです。『させていただく』ブームは、日本語の敬語が敬意漸減のために次々と交代してたどり着いた現在の到着点であり、連綿と続いてきた敬語の歴史的変化の結果といえます。

 敬語はこれからも敬意漸減のために変化を続けるのですから、この『させていただく』も単なる言語変化の通過点にすぎません。」

 本書は「『させていただく』の正しい使い方を教えてくれる本」と言うよりは、とある言語学者が「させていただく」という言葉を手がかりに社会の実相を記した、いわば「言葉オタクのおしゃべり」。日本式コミュニケーションの過去、現在、未来について、知識をアップデートできる一冊です。

<書籍情報>
「させていただく」の使い方 日本語と敬語のゆくえ

著者 椎名 美智

なぜ、使わずにはいられないのか

「させていただく」は正しい敬語? 意識調査とコーパス調査で違和感の正体が明らかに。現代人は相手を敬うためでなく、自分を丁寧に見せるために使っていた。明治期、戦後、SNS時代、社会環境が変わるときには新しい敬語表現が生まれる。言語学者が身近な例でわかりやすく解説!

>>詳細はコチラ

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