英語学習

ビル・ゲイツとやり合うために編み出した「英語練習」の極意/成毛眞⑨

30歳の目前、突然マイクロソフトに。英語を身につけるために著者がとった勉強法とは……。成毛式「割り切り&手抜き」勉強法で効率よく英語を学びましょう。今回は第9回目です。

少ない食材を「使い回して料理する」感覚

私の英語練習法とサボりの精神は、切っても切り離せないものです。

私はサボりたがりであり、コツコツとした努力が嫌いで、ラクをして王道を行くためにはどんな努力も惜しまないタイプなので、目標を定めた後は、いかにしてラクにその目標に近づくかを、徹底的に考えました。

そこでたどり着いた成毛式英語練習の極意は以下の通りです。

【①〝文法通り〟にこだわらない】
極めてフォーマルな場でない限り、日本人は日本語を学校で習った文法通りに話してはいません。

「要するに赤じゃなくて緑にしたかったんだけど、言い訳っぽいけど、全然」

文字で見たらぎょっとするような乱れた日本語です。しかし、こう言っている人がいたなら「ああ、本当は緑にしたかったのね」と理解できます。それから「なんらかの理由で赤にしたことを100%いいとは思っていないんだな」ということもわかります。

もちろん「言い訳をするようですが、私は以前は、赤ではなく緑にしたいと考えていたのです」と言うこともできます。ただこうした表現は、文字にしているからスンナリ理解できますが、もし耳から聞いたら、「そうなんだ」と納得する前に「かしこまってどうしちゃったの」とも思うでしょう。

であれば、文法にこだわってこだわってこだわりすぎることには意味がない。そもそも、文法は中高6年間の蓄積で十分と思っていいでしょう。冠詞はaなのかtheなのかなどは、もっと後の段階になってから悩めばいいのです。

【②それっぽく話したい】
しかし、中高6年間で学んでも、英語ができないという人は少なくありません。それは、習った英語をそれっぽく使う練習をしてこなかったからです。

私は、ただ単語をボソボソと言うだけの、いかにも日本人的な発音はしたくないと思いました。これは勉強効率というよりも、私の好みの問題です。

ただ、こう決めて良かったと思っています。それっぽく話せるようになるほうが、日本人的英語が上達するよりも嬉しいので、モチベーションが続くからです。

後で詳しく書きますが、日本人らしい英語より、それっぽい英語のほうが、日本人の前でも堂々と話せるので、引っ込み思案になることもありません。

【③なるべく暗記も減らしたい】
全く暗記をしないわけにはいきません。しかし、いきなり難しい言葉を覚える必要もないでしょう。まずは最低限の努力でそれっぽく。具体的には、知っている単語を使い倒すのです。

また料理にたとえると、こういうことです。

フランス料理のシェフのようなプロを目指すのでなければ、冷蔵庫に、ありとあらゆる食材を用意する必要はありません。買ったのに出番のない食材を冷やし続けるほどムダなことはないですよね。滅多に使わない食材にお金をかけるくらいなら、より手に入れやすく使い勝手の良いもので代替すればいいですし、それに、普段の食材でいかに様々な料理を作るかを考えるほうが、経済的かつ現実的です。つまり、ムダがない。

英語も同じです。あまり使い道のない言葉を覚えるくらいなら、haveとかgetとかtakeとか、別のよく使う言葉で代用すればいいではないですか。

難しい言葉は覚えない、その代わり、よくある言葉で切り抜ける。私の場合、こう割り切ったおかげで、どう言えばいいのかまったく見当の付かないような事柄でも、なんとか表現する力がつきました。暗記をサボりたいがあまり、単語を使い回すことが自然にできるようになったのです。Kill two birds with one stone、一石二鳥です。

日本語でも同じです。たとえば「輻輳する」が読めなくても(使えなくても)、「混み合う」ならわかりますし、「凝縮する」だって「一点に集中させる」に言い換えられればそれで十分ではないですか。

読んだり聞いたり、つまり英語をインプットするときもそうです。わからない言葉がひとつやふたつなら、という前提の下での話ですが、知らない言葉があっても、文脈や行間を読めば理解できます。

マイクロソフト時代、世の中で「多様性」ということがこれほど言われるようになるずっと前から、私はさまざまな会議の中で何度もdiversityという言葉を聞いていましたが、じつは意味はよくわかっていませんでした。最初は、「分割する」という意味のdivideの派生語のように思えて「2分割する」という意味だと勝手に解釈していました。しかし、何度も聞いているうち、文脈から判断すると、どうしてもその単語は「多様性」という意味でないとおかしいことに気が付きました。こうやって私は、diversityが多様性を意味することを〝発見〞したのです。

さて、「言い換え」の重要性に話を戻しますと、実はこういったことは、日本語でも頻繁に行われています。子どもや、その分野の専門用語を知らない人に対して、無意識のうちにやっているはずです。逆に、正しい表現が思い浮かばずに口ごもったときには、話している相手から「それってこういうこと? 」と助け船を出されることもあるでしょう。

英語を使うときも、それでよし。必要以上に単語数にこだわるのは愚の骨頂です。Quality over quantity、量より質でいいのです。

(つづく)



成毛 眞(元マイクロソフト日本法人社長)

カテゴリ:英語学習

【著者紹介】成毛 眞(なるけ・まこと)
1955年、北海道生まれ。中央大学商学部卒業後、自動車部品メーカー、株式会社アスキーなどを経て、86年日本マイクロソフト株式会社設立と同時に参画。91年、同社代表取締役社長に就任。2000年に退社後、投資コンサルティング会社の株式会社インスパイアを設立。10年、おすすめ本を紹介する書評サイト「HONZ」を開設、代表を務める。早稲田大学ビジネススクール客員教授。

【書籍紹介】『ビル・ゲイツとやり合うために仕方なく英語を練習しました。 成毛式「割り切り&手抜き」勉強法』(KADOKAWA)
「やらないこと」を、最初に決めよう――留学・海外在住経験なし、社会人になってから英語を学び、外資系トップまで務めた著者による「必要最低限」の練習法。本書は、あなたの英語勉強効率を飛躍的に高めてくれる。

この連載をもっと読む

あなたへのオススメ記事

  • 仕事ができる人は英語ができなくても問題がないワケ/成毛眞⑤
  • 「英語らしい英語って何だ?」問題を落語で解説/成毛眞⑥
  • 英語学習の目標設定は「いい加減さ」が欠かせない/成毛眞⑦
  • 学習時間をムダに増やす「英語の細道」を回避するコツ/成毛眞⑧
  • 知っていたら自慢せずにはいられない! マニアックすぎる雑学クイズ

    知っていたら自慢せずにはいられない! マニアックすぎる雑学クイズ

  • 食通だったら全問正解!? 日本ならではの「食べもの」クイズ

    食通だったら全問正解!? 日本ならではの「食べもの」クイズ

  • その言い方、大丈夫? 上司&取引先への言葉遣いのマナー

    その言い方、大丈夫? 上司&取引先への言葉遣いのマナー

  • 知られざるエピソードにびっくり! ネーミングの秘密がわかるクイズ

    知られざるエピソードにびっくり! ネーミングの秘密がわかるクイズ

  • 喪服が黒なのはなぜ? 日本文化を深掘りするクイズ

    喪服が黒なのはなぜ? 日本文化を深掘りするクイズ

  • 観戦がもっと楽しくなる!? スポーツの英語雑学クイズ

    観戦がもっと楽しくなる!? スポーツの英語雑学クイズ

英語学習の人気記事ランキング

  • 英語習得に“年齢の壁”はない?! ネイティブ並みに喋れるようになる秘訣

  • 実際のところ、英検とTOEICはどっちが役に立つの?/黒坂岳央

  • theなし複数形とthe+複数形の違いとは?/関正生のやり直し中学英語

  • 最も効果的な「英語学習法」とは? 科学的に実証されたノウハウを大公開!

  • 「イッヌ」に相当する英語のネットスラングが発見されてしまう

{ カテゴリ別ランキングを見る }

資格・スクール情報

  • 中小企業診断士とは? 試験&仕事内容を解説

    中小企業診断士の仕事内容は? 養成課程って何? 中小企業診断士について知っておきたいことを詳しく解説します。

    中小企業診断士とは? 試験&仕事内容を解説
  • 行政書士とは? 試験&仕事内容を詳しく解説

    行政書士って何? どんな仕事をするの? 試験の難易度は? 行政書士に関する素朴な疑問を解決します。

    行政書士とは? 試験&仕事内容を詳しく解説
ページトップに戻る