英語学習

“AI翻訳時代後”でも永遠に英語力の価値はなくならない理由/黒坂岳央

AI翻訳機の登場などで、英語を学ばなくても会話できる時代になりました。そうしたなか、英語力そのものの価値はどうなっているのでしょうか。自身の留学経験から、黒坂岳央さんが解説します。

こんにちは、黒坂岳央です。

いつの時代も日本人の英語熱は衰えることがありません。大型書店へ行くと英語学習本のコーナーが大きなスペースを取っており、街を歩けばいくつもの英会話スクールが並び、ネットには英語教材がずらりと揃っています。また、英語力を測る資格のTOEIC(R)Programもかつてない盛り上がりを見せています。

下記のグラフは、TOEIC(R)Programの「TOEIC(R)Listening&Reading Test」と「TOEIC(R)Speaking&Writing Tests」の受験者数を示したものです。

画像参照元:一般社団法人国際ビジネスコミュニケーション協会公式サイト
画像参照元:一般社団法人国際ビジネスコミュニケーション協会公式サイト

画像参照元:一般社団法人国際ビジネスコミュニケーション協会公式サイト
画像参照元:一般社団法人国際ビジネスコミュニケーション協会公式サイト


「このような日本人の英語熱の高まりとは裏腹に、肝心の英語力は……」という皮肉な状況は、海外のメディアも面白がって取り上げるお決まりのオチになっています。

英語学習は市場規模の大きな産業であり、様々な業者から学習法が提供されています。英会話スクールや、聞き流し学習法、海外留学など華やかで楽しげなものに惑わされず、冷静に英語を学ぶ価値や、本質的な学習法をお伝えしていきたいと思います。

英語力の市場価値の本質を「掛け算」で考える

「もう世の中にはいくらでも英語ができる人がいる。今更英語など学ぶ必要はない」といった主張をする人がいます。この主張は果たして正しいのでしょうか?

この問いに対する私の答えは「英語力そのものの価値は減少したが、専門英語の価値はますます高まっている」です。

いわゆる「英語屋さん」と呼ばれるような「英語だけが得意で、専門性を持たないビジネスマン」が大きな所得を得ることはできた時代は終わりました。しかし、「専門性☓英語」という組み合わせとなると、依然として根強い市場価値があるのは間違いありません。

昨年2017年に日本を訪れた外国人観光客は2800万人で、東京都の2倍以上の数字です。また、東京都はアジアにおける企業の拠点の東京都への集積を目指し、「アジアヘッドクォーター特区」と呼ばれる施策を打ち出しています。これにより、日本に多くの外国人や外資系企業が入り、グローバル化はますます進んでいるのです。

このようなグローバル時代においては、「英語が使えること」に価値があるのではなく、「専門分野を英語で運用できる」ことにこそ大きな市場価値があるのです。

ここで専門性に英語力が備わることの価値をお話したいと思います。筆者が東京で会社員をやっている時代、私の専門分野は「会計」でした。これに英語力がつくことで「会計☓英語」となり、プラスアルファの市場価値をもたらしてくれました。決算や税務など会計知識や経験を豊富に持つ人材は転職市場に山ほどいましたが、それに加えて英語が得意な人材となるとその数は一気に10分の1、20分の1と小さくなります。数字はあくまで参考ですが、

英語の上級者(10人に1人) 10%
会計業務の経験者(10人に1人) 10%
英語ができて、会計業務の経験者 10%☓10%=1%

と一気に専門家の数が減ります。おかげで転職の時には多くの企業からオファーをいただきましたし、サンフランシスコのIT企業から転職オファーを頂いたこともありました。希少性は最強の市場価値です。今、あなたが従事している仕事を英語で運用できるスキルを身につけることはものすごく価値を発揮することになります。

AIニューラル機械翻訳があっても英語力の価値は消えない

「そうはいっても今後は英語翻訳機があるから、必要がなくなるのでは?」と考える人もいるでしょう。AIの到来を戦々恐々をしている人はとても多いと思います。

外国語の翻訳における正確性、速度はますます高まりを見せています。ディープラーニングを用いたニューラル機械翻訳は、機械的に直訳するのではなく、文章全体をスクリーニングした自然な翻訳結果を得られます。これはニューラル機械翻訳の翻訳機を持ち歩くことで、専属の通訳者を好きな時に取り出せるというのと同義です。

しかし、いかに高性能のAIニューラル機械翻訳があっても、自身で英語力を身につけることの価値を超えることはありません。それには次のような複数の理由があります。例えば、

英語:I play piano every day.
日本語:私は毎日、ピアノを弾きます。

という文章があります。これを翻訳機に入れるとどうなるでしょうか?「毎日」という言葉は英語は最後に来ていて、日本語は文中に来ていますから、言語構造上、翻訳機は文を最後まで聞かなければ絶対に翻訳が完成しないことになります。文を最後まで聞き、アウトプットされた翻訳を見て理解し、文章を考えて返す事になります。

これは外国人との円滑なコミュニケーションにおいて、致命的な「タイムラグ」になります。また、すべてのやり取りをいちいち、翻訳機を取り出す手間も必要ですし、どれだけAIが進化してもその言語ならではの微妙なニュアンスは訳す事ができないでしょう。

AIがどれだけ優れても、外国語をそのまま理解することのコミュニケーション能力を超えることはできないのです。

米国留学・外資系企業で必要なのは「読む力」

さて、英語力の重要性を理解頂いたところで話をより厳密にしたいと思います。世間では「英会話こそ重要だ」と言われていますが、私は米国留学、複数の外資系企業勤務の経験を経て「読む力こそ最も必要な英語スキルである」と主張したいと思います。

筆者は米国の大学に会計学を学ぶために留学をしました。現地で勉学にあてる時間の8割、9割はリーディングです。なぜなら、アメリカの大学は膨大なリーディング課題が与えられ、学外でとにかく課題書を読み、内容をレポートにまとめたり、ディスカッションしたり、プレゼンをすることになるからです。

いかに流暢に英会話ができたとしても、1週間で数百ページ(時にはもっと)といったリーディングがこなせなければ、絶対に卒業はできないのです。否、逆にリーディングさえきちんとできるならば、会話が100%完璧でなくても単位を得ることは難しくないのです。

この「読解が重要」という状況はビジネスの現場でも変わることがありません。

筆者は東京の外資系企業で財務会計や、グローバル経営企画の仕事をしていました。フロアの半分以上が外国人という環境で、必要だったのは読み書きの能力です。海外から導入されるITシステムのマニュアルを読みこなし、必要な依頼をメールで書き、その結果をフロアのマネージャーにプレゼンするのです。

仕事の大部分は資料を読んだり、調べたり、計算することに費やし、外国人と英会話する時間はごくわずかです。まったくゼロではありませんでしたが、そもそもどんなオフィスワークでも無言で集中して内容を理解したり、文章を書くことに多くの時間を割くという事情は同じはずです。

米国留学、外資系企業で最も重要なのは読む力であり、「今日はいい天気ですね」「昨日は良く眠れましたか?」といった英会話スクールで提供される英会話ではないのです。

歴史的偉人は、読んで英語を学習した

今のように英会話スクールや留学制度が充実していない時代、日本人はどのように英語を勉強していたのでしょうか? 日本が世界に誇る細菌学者の野口英世さんは、本を読みその内容をまるまる覚える「読解」で力をつけて、アメリカの学会で研究発表ができるほどの英語力があったそうです。アメリカに渡る船の中で、シェイクスピアのヴェニスの商人を読んでいたのはあまりにも有名な話です。また、語学の天才シュリーマンは18カ国語をやはり、何度も読んで暗唱することで身につけているのです。

歴史的な偉人だけではありません。筆者も自室で硬派に読解を続けるスタイルで、英語力がゼロの状態から、TOEIC(R)Listening&Reading Testスコア985点、英検1級を取得しました。

私の経歴を見て「アメリカに留学したから身についたのだ」とよく誤解されますが、アメリカの大学も外資系企業も英語が十分できるようになってから行きました。留学や外資系勤務を支えてくれた英語力の源泉は紛れもなく、大量の読解なのです。

今回お話した内容は、いずれも世間で思われている常識とはかなり毛色が異なる事実だったのではないでしょうか? 次回以降、読むだけで身につける英語学習法の詳細に迫ります。


黒坂 岳央

カテゴリ:英語学習

【参考サイト】
一般社団法人国際ビジネスコミュニケーション協会
https://www.iibc-global.org/

【著者紹介】黒坂 岳央(くろさか・たけお)
1981年、大阪府生まれ。「水菓子 肥後庵」代表。ビジネスジャーナリスト。高校卒業後、5年間のニート&フリーター生活の後、関西外国語大学短期大学部に入学。在学中にシカゴの大学へ留学し、会計学を学ぶ。卒業後は、ブルームバーグLP、セブン&アイ、コカ・コーラボトラーズジャパン勤務を経て、高級果物ギフト専門店「水菓子 肥後庵」を設立。

【書籍紹介】
『1年でTOEIC985点&英検1級! 中学レベルの僕が「読むだけ勉強法」で英語をペラペラ話せるようになった! 』

StudyWalker「英語学習」カテゴリの記事を読む

TOEIC is a registered trademark of Educational Testing Service (ETS).
This website is not endorsed or approved by ETS.

あなたへのオススメ記事

  • 仕事で使える!正しい英語勉強法/「超」独学法 野口悠紀雄氏に聞く【後編】
  • 投資対効果&学習効率大! 「読むだけ学習法」で英語の学習時間を劇的に圧縮する/黒坂岳央
  • 「あやふや読み」に要注意! 「読むだけ学習法」の重要ポイント/黒坂岳央
  • 必須英単語5000が無理なく頭に入る! 「読むだけ学習法」の実践テク/黒坂岳央
  • 「電験三種」ってどんな資格? 仕事内容・試験概要・合格率・攻略法を徹底解説!

    「電験三種」ってどんな資格? 仕事内容・試験概要・合格率・攻略法を徹底解説!

  • 知れば一気に親近感がわく! 歴史人物の「ウラの顔」クイズ

    知れば一気に親近感がわく! 歴史人物の「ウラの顔」クイズ

  • 意外なウラ話にびっくり! スポーツがますます面白くなるクイズ

    意外なウラ話にびっくり! スポーツがますます面白くなるクイズ

  • コレならOK? コレだと失礼? 上司&取引先とのビジネスマナー

    コレならOK? コレだと失礼? 上司&取引先とのビジネスマナー

  • 知ればもっとおいしくなる! 食べ物の秘密クイズ

    知ればもっとおいしくなる! 食べ物の秘密クイズ

  • いざというときもスマートに! 慶事・弔事のビジネスマナー

    いざというときもスマートに! 慶事・弔事のビジネスマナー

英語学習の人気記事ランキング

  • バカでも英語の偏差値40→70になれる!/東大「ずる勉」(3)

  • 英語ダメ人間のための単語帳とは?/東大「ずる勉」(4)

  • サラッと勉強してTOEIC800点! 超効率的な「ずる勉」/東大「ずる勉」(2)

  • 3ヶ月で東大合格! どんな試験でも使える英語勉強方法とは?/東大「ずる勉」(1)

  • 実際のところ、英検とTOEICはどっちが役に立つの?/黒坂岳央

{ カテゴリ別ランキングを見る }

資格・スクール情報

  • 中小企業診断士とは? 試験&仕事内容を解説

    中小企業診断士の仕事内容は? 養成課程って何? 中小企業診断士について知っておきたいことを詳しく解説します。

    中小企業診断士とは? 試験&仕事内容を解説
  • 行政書士とは? 試験&仕事内容を詳しく解説

    行政書士って何? どんな仕事をするの? 試験の難易度は? 行政書士に関する素朴な疑問を解決します。

    行政書士とは? 試験&仕事内容を詳しく解説
ページトップに戻る