英語学習

「あやふや読み」に要注意! 「読むだけ学習法」の重要ポイント/黒坂岳央

読むだけ英語学習は有効ですが、やり方を間違えると良くない読みグセがついてしまいます。そこで今回は読むだけ学習法をする上での注意点を、黒坂岳央さんが解説します。

読むだけ英語学習法は費用の面でも、効率の面でも極めてパフォーマンスの高い学習法であることをお伝えしてきました。

世の中に数多くの多読の重要性や、多読で英語力を向上させられる啓蒙書が存在していることも、読むだけ英語学習の効果の高さを物語っていると考えます。

さて、読むだけ英語学習は間違いなく素晴らしい勉強法なのですが、注意が必要な点もあります。やり方を間違えると「あやふや読み」という非常にやっかいな読みグセがついてしまい、一度身についたあやふや読みから脱却するのは容易ではありません。

そこで今回は、読むだけ学習法をする上での注意点や、ポイントをお話したいと思います。

日本人でも日本語運用能力には大きな個人差がある

「日本人であれば、誰しも完璧な日本語を操ることができる」と思っていないでしょうか?

確かに日本人は流暢で完璧な日本語を話すことができます。しかし、こと「日本語運用能力」についていえば個人差がとても大きいのです。

例えば日常的にビジネス書や経済新聞にしっかりと目を通しているビジネスマンと、「すげー」「マジ」が口癖の若者と比較すると、両者の日本語運用能力には歴然たる差が存在します。「いい天気ですね」「お元気ですか?」といった挨拶程度の会話では影響はありませんが、これからの日本経済の先行きや、どう生きるべきかといった個人の価値観や見解が反映されるようなオピニオンの品質に大きな違いが生まれます。

こうした日本語運用能力の差とは、すなわち「普段からどれだけ活字に触れているか」という部分が大きいと考えます。母国語でも外国語でも言語の運用能力が高い人で、普段まったく活字を咀嚼しない人など皆無ではないでしょうか。思わず想像力を掻き立てられるような表現力、第三者が聞いて分かりやすく、サラサラと流れるような論理展開、的確な語彙の源泉となるのは「読解」なのです。

この点においても読むだけ英語学習は極めて効果が高いのです。知的で論理的な文章を英語で読解することで、英語力を向上させるだけでなくその文章から表現力や語彙力などをそのまま自分の血肉とすることができるからです。

私は昔、アメリカ人が政治の話をしている時に「Yes! I believe, “pork barrel politics” should really be abolished.(利益誘導政策は廃止するべきだと思う)」といったところ、外国人である私がpork barrel politicsという表現を知っていることに驚かれた事があります。私は日々、読んでいた経済新聞に出ていた表現をそのまま使っただけに過ぎないのですが、こうした語彙を使うだけでアメリカ人から一目置かれてしまったという経験がありました。

日本語でもことわざや格言を的確に使うとインテリさを演出できるように、外国語でも表現や語彙力で読解の中で得られた表現や語彙を自分の英語に取り込むだけで、良いのですから読むだけ英語学習の素晴らしさはこの点にも活きています。

いきなり英語多読に手を出すな

さて、いよいよ読むだけ英語学習の具体的な方法をご紹介していきます。英語多読の有用性を理解された人は、今すぐにでも英語の本に突撃してしまいたい気持ちになっているかもしれませんが、ここで注意が必要です。

それは、「多読は何も考えずにとにかくたくさん読めば英語力が身につく」と勘違いしないでほしいということ。「多読は質より量」と考えられがちですが、最低限の質あっての量なのです。これを間違えてしまうと、時間をムダにするだけでなくあやふや読みのクセがついてしまうのです。

The party was great! You should have been there yesterday.

という文章があった場合、あやふや読みだと「あなた」はパーティーに参加したのか、していなかったのかという事が正しく理解できません。

正しく理解するためには単語だけでなく、仮定法という英文法の知識も必須です。そしてこうした知識はひたすら読むだけで身につくものではなく、体系的な英文法をインプットすることで最短最速かつ正しく理解することができます。

「多読は万能。勉強は全くせずにとにかく読みさえすれば良い」という考えに陥らないよう、気をつけましょう。

例えばお経を学習するケースで考えると、お経を理解する上でもっとも効率的なのは、「意味がわからないまま、とにかく何千回も聞き流す」のではなく、「お経を体系的に勉強する」方が圧倒的に速く正しく理解ができます。

また、金融や経済の知識がまったくゼロの状態の人が、金融のビジネス誌をわけがわからないまま読むより、最低限の金融・経済の知識をつけた方が速く身につくのと同じです。

英語の多読は確かに極めて有効な学習法で、それは間違いありません。しかし、着手する前には必ず英文読解に必要な知識を付けておくべきなのです。

英語学習で重要なのは英単語・文法・読解力

それでは英文読解に必要な知識とは何でしょうか? 私はそれを

・英単語
・英文法
・読解力

の3つのキーワードにあげたいと考えています。

「単語の意味はいちいち辞書で調べなくてもいい。文脈から推測せよ」という主張を真に受けて、単語力がない状態で英文読解に挑んでも、英単語力がないと文字通り手も足も出ません。一文の中に未知の単語が3つも4つもある状態で英文読解をしてもまったく効果がないのです。自動車で快適なドライブを楽しむように、引っ掛かりがなくスイスイと進むためにも英単語力は絶対に必要な知識です。

そして英文法。これは英語を理解する上での共通ルールで、理解できないまま放置してもその部分が後から自然に身につくことはありません。「ブロークンイングリッシュでもとにかく通じれば良い」という人もいますが、この考えは危険です。なぜなら聞き手に大きな負担を強いているからです。

「今日はこれから物理の先生の講義を受ける」という文章がすっと理解できるのは日本語の文法力があるからです。「講義を今日は物理の受ける先生から」とブロークンジャパニーズで話されると理解に時間がかかるわけです。いくら単語力が遭っても、英文法の理解がなければ正しく理解できないのです。

If you hadn’t saved me, I would have died.

という文章に使われている単語はいずれも簡単なものばかりですが、英文法の知識がなければ「私」は無事なのか? それとも死んでしまったのか? が理解できません。英文法は英単語と同じくらいしっかりとした理解が必要な領域なのです。

そして英文読解です。自動車学校へ通い、運転の仕方を座学で学び、教習所のコースを一通り走る練習をしても、公道に出て運転の経験を積まなければスムーズに走れるようにはなりません。英語も同じく、英単語と英文法をしっかりと理解した後は、とにかくたくさん読む訓練を積むことでスイスイと快適に読むことができるようになるのです。

以上の通り、英単語、英文法、そして英文読解訓練というステップを踏むことで初めて多読の入り口に立つことになります。このステップなくして、挑戦してしまっては学習効果の薄いリーディングとなりますので注意が必要です。

重要なのは楽しく継続する環境づくり

最低限の知識を身につけたら、その後にすることはひたすら読解です。日本人も義務教育課程を終えたら、たくさんの本やニュースなど活字を読むことで、メキメキと読解力を養う事ができるのと同じです。

英語も読むことを継続することで、どんどん英単語が頭に蓄積していき、読解力も向上してスピーディーに正確に読むことができるようになります。そして読解を通じて英会話力も身につける事ができるのです。

たくさん読解をして英語力が高まる→英語力が高まるからどんどん読めるようになる→読めるのが楽しいから無理なく読解を続けられる。

という好循環を作り出すことができれば、自然に継続することができ、継続するから英語力も向上していきます。

では、どうすれば楽しく継続できるようになるのでしょうか。私からアドバイスがあるとすれば、それは「とにかく読んでいて楽しく、興味が持てて、理解度が80%以上あるリーディング素材を選ぶ」ということです。

どれだけ学習効果があると人から言われても、自分が読んでいて楽しくなければその素材は自分にとっては有益なものではありません。重要なのは「自分が読んでいて興味が持てるのか? 楽しいのか?」ということです。英語学習のためにいやいや読むのではなく、楽しいから止められずにガンガン読み進めるという状況を作り出すことが重要です。

私の場合は金融投資に強い関心があるので、ウォール・ストリート・ジャーナルなどを読んでいた時期がありました。同じニュースを日本の新聞が悲観的に報道するのと異なり、同紙では意外にも楽観的に見る展開となっていて驚かされたものです。また、アメリカ人の視点や考え方でニュースの内容が書かれているのが非常に面白く、経済ニュースを読んでいた私は日米の考え方や視点の違いなど比較文化を学んでいるような感覚を得られたものです。

このように英語は「面白くないことを我慢して取り組むお勉強」ではなく「楽しくてたまらないから止められずにやっていたら実力がついていた」という環境構築をすることが、無理なく継続できる秘訣となります。


黒坂 岳央

カテゴリ:英語学習

【著者紹介】黒坂 岳央(くろさか・たけお)
1981年、大阪府生まれ。「水菓子 肥後庵」代表。ビジネスジャーナリスト。高校卒業後、5年間のニート&フリーター生活の後、関西外国語大学短期大学部に入学。在学中にシカゴの大学へ留学し、会計学を学ぶ。卒業後は、ブルームバーグLP、セブン&アイ、コカ・コーラボトラーズジャパン勤務を経て、高級果物ギフト専門店「水菓子 肥後庵」を設立。

【書籍紹介】
『1年でTOEIC985点&英検1級! 中学レベルの僕が「読むだけ勉強法」で英語をペラペラ話せるようになった! 』

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