英語学習

「留学すれば自然に英語ができる」というウソに騙されるな/黒坂岳央

海外に身を置いて英語を浴び続ければ、それだけで英語は上達すると言われますが、本当でしょうか。黒坂岳央さんが「留学すれば自然に英語ができる」に隠された勘違いを暴きます。

英語を学びたい人の中には、「自分の身を海外に置けば、エスカレーターに乗るように英語力が高まる」と思っている人は少なくありません。

このような意見が出てくる背景には、英会話スクールの提唱する、「英語圏の赤ちゃんは膨大な量の英語のシャワーを浴びて語学力を高めた。それと同じことをすればいい」という考え方があります。

こうした提案は確かにもっともらしく聞こえます。しかし、その話にそそのかされて、高い費用と時間をかけて留学をしても決してものになることはないのです。

英語圏の赤ちゃんと語学留学の違い

なぜ英語圏で育つ赤ちゃんが英語を身に付ける話と、大人になって語学留学をして英語を身に付ける話を同列に並べてはいけないのでしょうか。

英語をシャワーのように浴びる、という点では似たように感じるかもしれませんが、決定的に違う点があります。それは「フィードバック」です。

赤ちゃんは大人が片時も目を離すことなく、ずっと日本語で相手をします。起きている間中、1年365日間ずっと正しい言語を聞き続けるわけです。

私も子育てをしている身ですので、体験を通じて理解できた点なのですが、赤ちゃんや幼児は最初の頃は言葉を頻繁に間違えて理解します。私の長男も、エビのことを「ビビ」といい、うさぎのことを「ぷっぷ」と言っていました。

ですが、根気強く正しいエビ、うさぎと何十回も毎日毎日聴かせ続けたことで、ようやく正しい発音を身につけることができたのです。

こんなに語学学習をする最適な環境下にあっても、若い脳を持っていても、言葉を満足に使えるようになるには何年も何年もかかります。

語学留学はそもそも何にも染まっていない幼児の真っ白な脳と異なり、母国語に染まった状態です。さらに、滞在中は外国語に触れる環境とはいえ、お母さんが赤ちゃんにつきっきりで言葉のフィードバックをしてくれるものではありません。

語学留学といっても、集団で外国語のレッスンを受け、その後は自由行動ですから自分で積極的に語学上達に向けた努力をしなければ、日本にいる時とほとんど変わらない生活を送ることになります。

結果的に、語学留学をしても「日本にいるときより少し英語を使う機会が多かった」というだけでしかなく、何も変わらずに帰国することになります。

語学留学をするだけで、自然に努力なくあっという間にペラペラと話せるようになる、ということはありえないのです。

語学留学は語学学習しやすい環境があるだけ

語学学習は確かに語学の勉強をする上で、やりやすい環境にあるのは事実です。例えて言うなら、ITエンジニアのプロフェッショナルを目指す人がシリコンバレーにいって、世界的なIT企業で勤務するようなものでしょう。

周囲は一流のエンジニアばかりで、日々ITエンジニアにとって有益な情報が飛び交う、理想的な環境が広がっています。でも、そこに身を置くだけでは何も変わることはありません。

シリコンバレーの有名IT企業の中で机の前に座っているだけで、自然に努力なくITエンジニアのプロフェッショナルになれるわけではないのです。とにかくコードを書いたり、勉強をすることではじめて、自分の血肉になっていきます。

これは英語でもまったく事情は同じです。

語学留学をすれば自然に英語力が高まる、というのは、プログラマーと一緒のオフィスで働けば勝手にプログラマーになれる、というのと同じくらいおかしな話なのです。

外国語を学ぶ場所(国)は関係がない

外国語の上達に重要な点は、勉強をする場所(国)ではありません。その気になれば満員電車の中でも飛躍的に力を高めることはできますし、実際、私自身が日々利用していた満員電車の移動中の勉強で大きな力の高まりを感じたのです。

外国語はとにかく大量のインプットをして、後はそれを徹底的に使う訓練をするだけです。

私は著書の中で「英語は多読で力をつけよ」と提唱していますが、これは日本国内でできることです。アウトプットについていえば、海の向こうまでいかなくても国内にもオンライン英会話のサービスは山ほどありますからそれを利用すれば良いのです。

究極的なアウトプット訓練は「仕事」です。私はインプットして高めた英語力を仕事で使うことで、短期間でも急激な伸びを感じました。

仕事ですから、できないのでは話になりません。120%のすごい集中力を持って臨み、最初の方は四苦八苦した場面もありましたが期間を経て大きな力になりました。

普通はお金を払ってレッスンをするところを、仕事にしてしまうことで逆にお金を稼ぎながら訓練を積むことができるのです(もちろん、仕事で使える程度には英語力を高めておくことは必要ですが)。

スマホ全盛期の今、語学留学の有用性はなくなってしまいました。その気になればスマホ1台あれば、いくらでも英語の記事を読み、メールを書き、動画ニュースを聞き、そして会話ができてしまいます。

そろそろ語学留学にまつわる「幻想」がなくなってもいい時期に来ているのではないでしょうか。


黒坂 岳央

カテゴリ:英語学習

【著者紹介】黒坂 岳央(くろさか・たけお)
1981年、大阪府生まれ。「水菓子 肥後庵」代表。ビジネスジャーナリスト。高校卒業後、5年間のニート&フリーター生活の後、関西外国語大学短期大学部に入学。在学中にシカゴの大学へ留学し、会計学を学ぶ。卒業後は、ブルームバーグLP、セブン&アイ、コカ・コーラボトラーズジャパン勤務を経て、高級果物ギフト専門店「水菓子 肥後庵」を設立。

【書籍紹介】
『1年でTOEIC985点&英検1級! 中学レベルの僕が「読むだけ勉強法」で英語をペラペラ話せるようになった! 』

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