TOEICでは測れない! 今、必要な「おもてなし英語」ってなんだ?

街で困っている旅行者がいたら助けてあげたいし、居酒屋で隣り合った外国人と気軽に話せたら最高に楽しいはず。訪日外国人が右肩上がりに増えている今、こんなふうに感じている人も多いことでしょう。
なんたって、日本は「おもてなし」の国なのだ! 一方で、その気持ちに語学力が追いつかない、という悲しい声も……。
「駅前留学」のキャッチフレーズでおなじみのNOVAホールディングス株式会社の加瀬淳一郎さんに、「おもてなし英語」の必要性と上達のコツをうかがいました!
英語によるコミュニケーション力が売り上げを左右する!
日本政府観光局によると、昨年、日本を訪れた外国人は3119万1900人。統計開始以来の最高記録を更新しました。
語学教育アドバイザーとして数々の企業の語学研修を手がける加瀬さんは、とくにこの5年間で、日本国内での英語の必要性は急激に高まっている、と指摘します。
「今秋にはラグビーW杯、来年には東京オリンピック・パラリンピック、さらに2025年には大阪万博を控え、今後、さらに多くの旅行者が日本を訪れることは間違いありません。
街を歩けば、百貨店から商店街の個人店まで、さまざまなお店でショッピングや食事を楽しむ外国人旅行者に出会いますよね。彼らの立場になれば、言葉が通じるお店を選びたいのは当然のこと。
SNSの浸透で、個人のクチコミがまたたくまに拡散する時代です。観光業だけでなく、小売業やサービス業においても、英語力は目をつぶることのできない大きな課題となりました」
そうした背景もあってか、日本は現在、語学ブームとも言える状況。従来の英会話教室だけでなく、オンライン英会話、マンツーマンの英語コンサルタントサービスなどなど、英語を学ぶ手段や環境は整ってきました。
「ただ、訪日外国人に対応する現場では、知識偏重の英語学習だけではうまくいかないことも多いんです。
NOVAでも多くの企業に英語研修のプログラムを提供していますが、こうした課題を受けて開発したのが『おもてなし英語』の研修です。ここ5年間で、小売業・サービス業の企業での研修導入が飛躍的に伸びています」

ニーズが高まる「おもてなし英語」
NOVAの「おもてなし英語」研修は、導入する企業の業務内容、ニーズに合わせて学習内容を組み立てるオーダーメイドの研修。小田急エース、西武鉄道株式会社、東武トップツアーズ株式会社など、多くの企業で実施されています。
「実は英語が得意な方でも、外国のお客さまへの対応でトラブルになることは少なくありません。
たとえば、何度か着用済みの衣類を返品したいというお客さまに、『申し訳ありませんが、返品はできません』と伝えたとします。対応としては間違っていないように思いますが、お客さまは納得されない。
なぜなら、海外には1~2カ月前に購入したものでも、たとえ着用したものでも、返品交換ができるところもあるからです。こんなとき、『あなたの国では返品できるのですよね』とひと言添えるだけでも、随分と印象は変わるはずです。
お客さまの気持ちを汲みとってコミュニケーションをとる、これがおもてなし英語の最大のポイントです」
フレーズをたくさん覚えても、正しい文法を使いこなしていても、それだけでは不十分。価格以上の価値を感じていただけるような、まさしくおもてなしの心を持った伝え方が求められているのです。
「ですから、私たちの研修では、英語の技術だけでなく、各国の文化や習慣、歴史、マナーについて学ぶことにも力を入れています。日本ではマナー違反とされる行動も、海外ではちっとも悪いことではなかったりします。
それを知らずに『なんて非常識な! 』と腹を立てていては、お互いに不幸ですよね。そうしたすれ違いをうめていくのが、おもてなしだと考えています」
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英語学習というと、とかくテクニック偏重になりがち。でも、本当に使える英語、そして心を通わせる英語をめざすなら「おもてなし」に意識を向けることが必要です。

取材・文/浦上 藍子