英語学習

本当に大丈夫?「小学校からの英語教育義務化」に潜む落とし穴とは/川尻秀道

2020年から実施される小学校からの英語教育義務化では、乗り越えるべき課題も多くあります。「英語力」と「異文化間コミュニケーション力」を高めるために必要なことについて、MBALoungeの川尻秀道さんが持論を展開します。

2020年から新学習指導要領が実施され、小学校3年生から英語が必須となり、5年生から正式な教科となります。

いよいよ小学校からの英語教育義務化が始まり、日本の国際化を後押しする――そう思う人も多いかもしれませんが、本当にそうでしょうか?

現時点で日本の国際化にマイナスである理由

私は、低年齢からの英語教育自体は、日本の国際化にプラスであると思います。言語の習得は、早ければ早いほうがいいと思っているためです。

ただし、新学習指導要領のもと小学校で義務化することは、日本の国際化にマイナスだと思います。

その理由は一つ。

現段階で、「小学校で英語教育をする教員のスキルが不足している」ということです。

教育は諸刃の剣です。

優秀な教師に恵まれれば生徒はどんどん伸びますが、そうでない教師にあたれば逆に悪影響を与えます。

小学校で英語教育をする人材が適切ではない場合、子供は英語や異文化間コミュニケーションに対して無関心になる可能性が高く、場合によっては苦手意識を持ってしまうことになります。

日本の国際化に必要な2つの力

そもそも「日本の国際化」とは何かという議論がありますが、私の解釈では「国際的な視野をもった日本人が他国の人や企業と取引をして日本に利益をもたらすこと」です。

これには、「英語力」と「異文化間コミュニケーション力」がなければ話になりません。

小学校教員の英語力は?

日本経済新聞の記事「『英語話せない』小学校教師の不安 ロボットも教壇に」(2019年3月27日)から、小学校教員の英語力が端的にわかる部分を紹介します。

“英語に自信のない教員たちを支えるのが、簡単な英会話の練習相手となったり発音を聞かせたりする外国語指導助手(ALT)だ。(中略)20年度を目前にALTの確保は各自治体にとって重要課題になっている。”

“市教委の担当者は「日本語が堪能ではない外国人ALTとコミュニケーションを取るのに苦労する教員もいる。授業計画などを相談するのは日本人同士の方がスムーズだ」と強調する。”

多くの教員が英語指導に苦手意識があり、英語教育の供給面で四苦八苦しているのが分かります。

同記事では、外国語指導助手(ALT)が小学校教員を支えるパートナーとして重要な役割であるが、彼らとのコミュニーションも大変だと指摘。こんな調子で小学生に有益な英語授業を提供できるのか、不安になります。

小学校教員の異文化間コミュニケーション力は?

仮に英語力を克服できたとしても、異文化間コミュニケーション力を高めるカリキュラムになるかどうかも、はなはだ疑問です。

同記事によると、教員の英語力不足をサポートするためロボットの英語教師が導入されたとあります。

“福岡県大牟田市の市立明治小学校では身長約60センチのヒト型ロボット「NAO」が教壇に立っている。”

“3年生の「外国語活動」の授業に毎回参加し、ネーティブスピーカーと変わらない発音で児童に話しかける。早口で聞き取れない児童が「Once more」と話しかけると、同じセリフを繰り返すこともできる。”

教員が人間とコミュニケーションをしない授業で、果たして子供たちは異文化間コミュニケーションを学ぶことができるのでしょうか。

また、ALTと授業計画さえも立てられない教師については、異文化間コミュニケーションは不足していることは明白です。

さらに、記事では「ロボットがネーティブスピーカーと変わらない発音で児童に話しかける」とありますが、なぜネーティブスピーカーと変わらない発音である必要があるのかも疑問です。逆に国によって発音が違うことを学ぶべきです。

もちろん、すべての小学校の教壇にロボットが立つわけではないと思いますが、「国際化のためのコミュニケーションは発音や文法ではない」(少なくとも私はそう思います)と理解している教員は、どのくらいいるのか疑問です。

英語教員の留学経験が圧倒的に不足

そのような異文化間理解は、やはり留学経験がないとなかなか身に付きません。

しかしながら、文部科学省が実施した「平成29年度英語教育実施状況調査(小学校)」によれば、小学校の英語教師のうち留学経験者は全体の5.5%に過ぎず、留学経験者の中でも約半数は1ヵ月未満の留学経験とのこと。

海外になる学校や研修施設等へ通うなどの留学経験がある教師は、全体の5.5%(19,432人)で、このうち、1ヵ月未満の留学経験が最も多く、全体の2.8%(9,708人)となっています。

英語教員の留学経験が、圧倒的に不足しているのです。

◇ ◇ ◇

日本の国際化にプラスになる教育改革を進めるために、必要なことは明白です。

まずは教員の英語力アップ、そして日本語でもいいので、異文化間理解を促進する授業の導入から始めるべきなのです。


川尻 秀道

カテゴリ:英語学習

【著者紹介】川尻 秀道(かわじり・ひでみち)
ラウンジグループ株式会社  代表取締役兼CEO 。
1978年1月生まれ。静岡県出身。少年時代は、勉強「普通」、スポーツ「普通」、顔「普通」。三拍子そろった普通の少年。あまりの「普通」の人生に危機感を感じ、人生最大のリスクを背負って2007年8月よりMBA国際認証トリプルクラウン校であるクイーンズランド工科大学(オーストラリア)のQUT Business SchoolへMBA留学。現在は、ラウンジグループ株式会社代表取締役兼CEOとしてMBA・大学院留学支援サイト「MBA Lounge」や留学準備とビジネスの会員制コミュニティ「U29 Lounge」などの事業を展開。「留学支援とビジネス教育を通じて『自ら行動し、自らの人生を豊かにできる』人財を育て社会に貢献する」ことをミッションに掲げ日々奮闘中。

※参考リンク
「英語話せない」小学校教師の不安 ロボットも教壇に(日本経済新聞)

★英語力を高めるヒントが満載「英語学習」記事一覧は こちら

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