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「景気がいい」「景気が悪い」とは? 景気を読めるようになるために/お金の教科書(15)

大富豪が多い欧米諸国では、早期から子どもへの金融教育が導入されています。海外で学生時代に叩き込まれる基礎教養「一生モノのお金の基礎知識」を、『アメリカの高校生が学んでいるお金の教科書』(アンドリュー・O・スミス著)よりご紹介します(第15回)。

景気はどうすれば読めるのか

世の中の景気や経済情勢はビジネスに大きな影響を与える。一般的に「経済」とは、お金、ビジネス、雇用、支出、貯蓄、投資、生産に関わるすべてのことが、どういう状態になっているのかということだ。

いちばん単純な経済は、人々が生きていくために生産したり消費したりするシステムのことをさしている。このシステムが機能するには、まず商品やサービスを提供する組織が必要だ。そしてその組織が、この章の主役であるビジネスということになる。

ビジネスが製品を売るには、その製品を作る労働者が必要だ。つまりビジネスは、労働者を雇うことで雇用を創出していることにもなる。そして人々は、労働者として働くことで給料をもらい、そのお金でものを買って「消費者」になる。賢い人は給料をすべて消費せず、余った分を貯蓄に回す。人々の貯蓄が銀行からビジネスに貸し出され、ビジネスはそのお金で将来に向けた投資を行う。

良好な経済とは、生産、消費、貯蓄、投資のすべてが活発に行われることだ。これらの活動は「経済活動」と呼ばれている。経済活動が活発になれば、雇用が増え、給料が上がり、ビジネスの利益も増える。反対に悪い経済の特徴は、経済活動が停滞することだ。ビジネスは儲からなくなり、倒産するところも出てくる。その結果、雇用が減り、失業者が増え、人々は生活に困るようになる。

経済活動を州ごと、地域ごと、国ごとに分析することによって、政府が問題を早期に発見して対策を打つことが可能になる。国の経済活動を示すもっとも一般的な数字が「国内総生産(GDP)」だ。

GDPとは、その国の中で1年に生産されたすべての財(製品)とサービスの総額だ。専門家によっては、GDPだけではその国の本当の生産力はわからないという意見もある。環境の質や、住人の気分など、人間的な価値が考慮されいないからだ。たとえばブータンは、GDPの代わりに「国民総幸福量(GNH)」という数字を重視している。

どんなビジネスであっても、外国の経済情勢の影響を避けることはできない。資材の調達、顧客、金融システムなどで外国との関わりがあるからだ。「グローバルエコノミー」とは、すべての国の経済の全体像や、それぞれの経済の関わり方を意味している。ある大きな経済の国で何かが起こると、他の大きな経済の国も影響を受ける。なぜなら、彼らは貿易、投資、ビジネスを通じてつながっているからだ。

アメリカは世界最大の経済大国だ。第二位が中国で、そして日本、ドイツと続く。(注1)ヨーロッパ連合(EU)は加盟二八カ国のほぼすべてで同じ通貨を使い、経済統合もしているので、EU全体で一つの経済とみなされることもあり、その場合はアメリカと同じくらいの経済規模だ。

アメリカは経済規模が大きいので、多くのビジネスは国内だけで成り立つことができる。小規模ビジネスの多くは、海外市場のことまで考える必要はない。とはいえ、世界の経済のつながりは年々強くなる一方なので、どんな国であっても外国の影響をまったく受けずにいるのは難しい。


注1. World Bank, “GDP (current US$),” 2014 data, country tables accessed November 26, 2015.

「景気がいい」「景気が悪い」とはどういうことか

アメリカは1年間で約18兆ドルの財とサービスを生産している。この18兆ドルという数字がアメリカのGDPだ。(注2)これはかなりの大金だ。

経済にまったく動きがなければ、GDPはずっと18兆ドルのままだ。成長もしていなければ、縮小もしていない。しかし、ずっと同じという状態で満足できる人はいないだろう。そこで政府は、毎年3%かそれ以上の成長を目指している。アメリカ経済で考えるなら、毎年5400億ドルずつGDPが増えていく計算だ。

ちなみに5400億ドルという数字は、ポーランドや台湾のGDPと同じくらいになる。一般的に、経済が成長すると、雇用が増え、給料が上がり、人々の将来の見通しも明るくなる。

反対に成長がマイナスになると、経済は縮小する。この状態は「景気後退」と呼ばれる。たとえばアメリカのGDPは、2008年の14兆7000億ドルから2009年の14兆4000億ドルに減少している。3000億ドル分の経済活動が失われたということだ。(注3)

経済の縮小で困るのはビジネスだけではない。人々も大きな影響を受ける。景気後退はたいていの場合、失業、給料が上がらない、あるいは下がる、政府と家計の借金が増える、党派の対立が激しくなるといった痛みを伴うことになる。

経済専門家の中には、景気後退も景気循環の一部であり、たしかに痛みを伴うが、期間は短いのでそれほど大きな問題にはならないと考える人もいる。それに景気が悪くなると、企業は生産性を上げる努力をするので、長い目で見れば経済にとっていいことだという。

経済を成長させるひとつの方法は、生産性を上げることだ。生産性とは、ある一定のインプットに対して、どれくらいのアウトプットがあるかということを意味する。

たとえば、あなたがマクドナルドで働くことになったとしよう。最初のうちは、1時間で作れるハンバーガーの数は15個だ。この1時間で15個という数字が、あなたの生産性ということになる。

そして経験を積むうちに、やがて1時間に20個作れるようになり、さらに25個作れるようになった。これは、あなたの生産性が向上したという意味になる。生産性が向上すれば、給料の上昇にもつながるかもしれない。

生産性が高いとは、資源をより効率的に使って財やサービスを生産できるということだ。だから、生産性が上がると、経済全体が成長し、私たちの生活水準も向上する。

経済には「低成長」という状態もある。まったく成長していないわけではないが、成長率が年に1~2%しかないような状態だ。アメリカの場合、人口が増えているので、低成長は大きな問題だ。アメリカの人口は、2014年には3億1870万人だったが、2020年には3億3450万人になると見込まれている。つまり、年に1%弱のペースで人口が増えているということになる。(注4)

人口の増加を考えれば、年に1%の経済成長で現状維持だ。それ以下では、国民ひとりひとりの取り分が少なくなることを意味する。経済が低成長に陥ると、ほとんどの人は生活を切り詰めなければならなくなる。

注2. U.S. Department of Commerce, Bureau of Economic Analysis, “National Income and Product Accounts,” November 24, 2015.

注3. U.S. Department of Commerce, Bureau of Economic Analysis, National Economic Accounts, “Gross Domestic Product,” current dollar and real GDP tables, November 24, 2015.

注4. U.S. Census Bureau, “Projections of the Size and Composition of the U.S. Population: 2014-2060,” March 2015.


著=アンドリュー・O・スミス

カテゴリ:マネーテク
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アメリカの高校生が学んでいるお金の教科書

アメリカの高校生が学んでいるお金の教科書

作者: アンドリュー・O・スミス, 桜田直美 (翻訳)
出版社/メーカー: SBクリエイティブ
発売日: 2019-11-20
メディア: 単行本

【著者紹介】アンドリュー・O・スミス
学生時代からお金、投資、財務計画についてのアドバイスを受け、アメリカで最初の大学投資クラブの一つであるペンシルバニア投資連合の設立を支援。受託者、財務顧問、弁護士として、信託基金、不動産、投資パートナーシップ、有限責任会社、保健信託などに助言をしてきた。現在は科学専門メーカーYenkin-Majestic Paint Corporationの最高執行責任者。

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