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保護主義? それとも自由貿易? 国際市場相手なら国の方針も見極めて/お金の教科書(16)

大富豪が多い欧米諸国では、早期から子どもへの金融教育が導入されています。海外で学生時代に叩き込まれる基礎教養「一生モノのお金の基礎知識」を、『アメリカの高校生が学んでいるお金の教科書』(アンドリュー・O・スミス著)よりご紹介します(最終回)。

国境を越えたビジネス

近年、国家間の貿易に関してはふたつの考え方があるようだ。ひとつは「保護主義」と呼ばれる考え方で、政府が国内で生産されたものを優先し、外国の製品やサービスの輸入を難しくすることだ。もうひとつの考え方である「自由貿易」とは、政府の規制をなくし、製品やサービスの輸出入が自由にできる制度という意味になる。

もしあなたが国際市場を相手にするビジネスをしているのであれば、国が保護主義をとるか、それとも自由貿易をとるかで大きな違いが生まれる。各国の方針を個別に分析することが求められるだろう。

保護主義か自由貿易かという議論は、近代を通してつねに行われてきたが、専門家の間では自由貿易のほうが全世界の利益になるという結論になっている。自由に貿易ができれば、それぞれの国が自分にとって「比較優位」になる製品やサービスの生産だけに集中できるからだ。

比較優位とは、簡単に言えば、「自分がいちばん得意なこと」だ。農地になるような土地がほとんどないのなら、農業セクターを確立しても意味がない。工場の設備が整っていないのなら、ハイテク産業を推進しても意味がない。苦手分野をムリに克服するのではなく、すでにできることに力を注いだほうが、その国だけでなく、世界経済全体が豊かになる。これが比較優位の考え方だ。

とはいえ、自国の製品を守るために保護主義をとるべきだと主張する勢力は世界中に存在して、彼らの中には目的を達成している例もある。自国の製品を守る方法は、輸入品に関税をかけるというものだ。輸入品の値段を上げることで、国内で売れにくくするのだ。その一方で、国同士で自由貿易の協定を結ぶと、関税が引き下げられたり、撤廃されたりする。

通貨は国によって違う。そのため、ある国から他の国にサービスを売る場合、通貨も一方の国の通貨からもう一方の国の通貨に交換する必要がある。

どんなビジネスでも、国境を越えて製品やサービスの売買をするなら、必ずこの外国為替の取引が必要になる。一般の消費者が外国の通貨を手に入れるには、たいてい銀行に行って自国の通貨と交換することになる。その際、だいたい3%ほどの手数料がかかる。銀行以外の両替では、手数料が10%になることもある。ビジネスの取引であれば手数料はもっと安い。

誰もが同じ通貨を使って取引すれば、国際貿易のコストを下げることができる。たとえば、世界で事業を展開するビジネスの多くは、本拠地に関係なくアメリカのドルを取引に使っている。そしてEUでは、加盟28カ国のうち19カ国でユーロという統一通貨が使われている。

ビジネスが貿易で同じ通貨を使うのは、「為替リスク」を避けるためだ。為替リスクとは、持っている外国の通貨を自国の通貨に両替したときに、価値が下がってしまうことを意味する。

たとえば、アメリカのビジネスがメキシコに製品を売り、代金をペソで受け取ったとしよう。この代金を帳簿に記入するときは、アメリカの通貨であるドルに換算しなければならない。その際、ペソの価値が下がっていると、少しのドルにしか交換できないので、ドルにしたときの利益が減ってしまう。これが為替リスクだ。

そこで多くのビジネスは、「為替ヘッジ」と呼ばれる方法で、為替リスクを減らしたり、またはまったくなくそうとしたりしている。とはいえ、国際市場で取引をするのであれば、どんなビジネスであってもコストやリスクを完全に避けることはできない。


著=アンドリュー・O・スミス

カテゴリ:マネーテク
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アメリカの高校生が学んでいるお金の教科書

アメリカの高校生が学んでいるお金の教科書

作者: アンドリュー・O・スミス, 桜田直美 (翻訳)
出版社/メーカー: SBクリエイティブ
発売日: 2019-11-20
メディア: 単行本

【著者紹介】アンドリュー・O・スミス
学生時代からお金、投資、財務計画についてのアドバイスを受け、アメリカで最初の大学投資クラブの一つであるペンシルバニア投資連合の設立を支援。受託者、財務顧問、弁護士として、信託基金、不動産、投資パートナーシップ、有限責任会社、保健信託などに助言をしてきた。現在は科学専門メーカーYenkin-Majestic Paint Corporationの最高執行責任者。

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