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AIが新ビジネスと新たな雇用を生み出す/メガ景気がやってくる④

情報化と技術革新が進むと、大半の人が失業に直面する!?――AIは私たちに何をもたらすのか、『史上最大の「メガ景気」がやってくる 日本の将来を楽観視すべき五つの理由』(武者陵司著)で学びましょう(第4回)。

生産性が向上しても雇用は失われない

もう一度、30年前を振り返ってみましょう。当時もオフィスにはパソコンがありましたし、一部マニアの間では、個人でパソコンを持っている人もいました。

ただ、今のパソコンと比べたとき、性能にしても機能にしても、昔のパソコンが今のパソコンに勝てる要素は皆無です。この30年で、パソコンの性能は飛躍的に高まりました。

したがって、かなりの仕事がコンピュータに奪われたとしてもおかしくありません。

たとえば、今から30年前だと、多くの企業は、各種データを処理するために、膨大な人間を抱えていました。経理処理や販売データなどを全部手書きで記載し、金額を電卓で計算していたのです。それから30年が経過し、この手の業務に従事していた人たちは、完全にいなくなりました。

ということは、職場からかなりの数の人々が、いなくなったはずです。さぞかし失業率も上がったことでしょう。

ところが、この30年間、日本の失業率はほとんど横ばいです。この事実を目の当たりにして思うのは、第二次産業革命が今後、さらに進歩したとしても、私たちの職が奪われ、世の中全体に失業者が増え、経済が衰退するようなことにはならないかもしれない、ということです。

昔を振り返っても、同じことが当てはまります。

最も顕著な例は、農業における生産性が劇的に高まったことです。今から200年前の米国では、実に74パーセントの人々が農民でした。つまり100人中74人が農業従事者として一生懸命働き、ようやく100人が食べられたのです。

しかし、今は米国の農民は100人中2人程度です。2人が農家として働くことによって、100人が食べられるようになったのです。これは、農業の生産性が劇的に上昇したことにほかなりません。

とはいえ、かつて74人が農民として働いていたのが、2人で済むようになったということは、72人の農業従事者は農家の仕事を失ったことになります。この数字だけを見ると、生産性の向上は失業をもたらし、経済的にマイナスの面があるとも読み取れます。

ですが、実際にはどうでしょうか。このように農業の生産性が向上したからといって、農業従事者の間に失業者が増えて社会不安が高まった、などという話は聞いたことがありません。

なぜ失業者が増えずに済んだのかというと、農業の生産性が向上し、農業従事者が少なくなる過程において、新しい仕事が誕生し、そこに労働者のシフトが起こったからです。農業をしなくなった72人がどのような仕事に就いたのかは、現在の私たちの職業を考えればすぐ分かります。今日の職業の大半は200年前にはまったく存在していなかったものです。

そして新しく生まれた職業のすべてが、人々の生活を豊かにする産業によってもたらされたといえます。高度大衆消費を可能にするさまざまな工業製品、それを支える石油、電力などのエネルギー、増加した所得をうまく処理する金融産業(購買力の蓄積と移転を担う)、直接に消費者に便益を与える外食、レジャー・エンターテインメント、近代教育、近代医療などです。

このように、新しい社会的な付加価値を生み出すビジネスが誕生することで、余剰人員や余剰資本はスムーズに吸収されてきたのです。

それと同じことが、AIなど最新の技術革新にも当てはまります。近い将来、AIがさらに進化して生産性が高まれば、今、私たちが携わっている仕事の多くがAIに取って代わられることは不可避です。

しかし、たとえそうなったとしても、いい服を着て、いい家に住み、いい教育や医療を受け、いいエンターテインメントを楽しむなど、少しでも人生を楽しみ、生活をよくしていきたいという願望はいつの世も変わりありません。

要は、それに関連する新しい仕事が生まれ、余剰人員を吸収してくれるのです。農業生産性が高まっていく過程で、さまざまな仕事が生まれたのと同じです。

AI時代も、生産性の大幅な向上が新たな需要を生み出し、それが新ビジネスの創造につながり、新たな雇用を生み出すものと思われます。



武者 陵司

カテゴリ:マネーテク

【著者紹介】武者 陵司(むしゃ・りょうじ)
株式会社武者リサーチ代表。ドイツ証券株式会社アドバイザー。ドイツ銀行東京支店アドバイザー。
1949年長野県生まれ。1973年横浜国立大学経済学部卒業。大和証券株式会社入社後、企業調査アナリスト、繊維、建設、不動産、自動車、電機、エレクトロニクスを担当。大和総研アメリカでチーフアナリスト、大和総研企業調査第二部長を経て、1997年ドイツ証券入社。調査部長兼チーフストラテジストを経て、2005年副会長に就任。2009年7月株式会社武者リサーチ設立。
おもな著書に『結局、勝ち続けるアメリカ経済 一人負けする中国経済』(講談社+α新書)、『超金融緩和の時代』(日本実業出版社)、『「失われた20年」の終わり 地政学で診る日本経済』(東洋経済新報社)などがある。

【書籍紹介】『史上最大の「メガ景気」がやってくる 日本の将来を楽観視すべき五つの理由』(KADOKAWA)
失われた20年を経て、ついに日本企業大躍進のときがきた! ――日経平均2万円超えや、リーマン・ショック後の米国景気のV字回復を的中させた、驚異の先見性を誇る経済アナリストが、日本経済の現状と将来の展望をつぶさに解説します。

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