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年金を払うのをやめることはできないの?/給料のカラクリ⑦

連載「給料のカラクリ」の第7回です。今回は、皆さんの給料から引かれる金額が一番大きい社会保険についてです。意外に知られていないメリットが、いくつもあります。

社会保険のうち3つが給料から引かれています

皆さんの給料から差し引かれる社会保険は、①健康保険、②厚生年金、③雇用保険の3つとなります。

このうち、①健康保険、②厚生年金、この2つは狭い意味での「社会保険」のグループになります。会社が行う諸手続きは、2つあわせて行います。

一方、③雇用保険は、労災保険とともに「労働保険」のグループです。
労災保険の保険料は、会社が全額負担となっています。こちらの諸手続きも、会社が2つあわせて行います。

以下、順に説明をしてきます。

全国どこでも3割負担で済む「健康保険」

健康保険は、病気やケガ、出産、死亡などの費用を軽くするための保険制度です。

健康保険に加入していれば、本人負担は医療費の3割です。1万円の医療費なら、皆さんは3,000円だけ払うことになります。

これは扶養する家族が増えても、毎月払う保険料は変わりません。家族分も同様に3割負担で医療を受けることができます。これは大きなメリットですね。

幼児と高齢者は少し負担率が軽くなっています。6歳までは2割負担、70歳以上は所得に応じて1割または2割負担です。

市区町村により、子どもは3歳まで、就学前まで、中学生まで、というように一定の年齢まで無料というところが多くなっています。

老後にもらえる「厚生年金」

厚生年金は、老後の生活に備えたものです。

将来もらえる年金額は、皆さんの生涯賃金の額によって左右されます。たくさんもらっていた人は、給料からの天引き額が多くなっていますので、将来の年金額も多くもらえるようになります。

また、年金を払った期間が原則25年以上で65歳になったときに、受給できるようになります。

年金だけやめることはできるか?

皆さんの将来の年金額は、日本の人口構成から考えると、残念ながら今もらっている人たちと比べて少なくなることは確実です。

健康保険はだれでも必要でしょうが、厚生年金は皆さんにとってずっと先の話になります。

「年金だけ支払いをやめたいのですが……」

いえ、これは法律上できないことになっています。

年金加入の2つのメリットもありますので、これは後ほど説明します。

仕事中のケガなどに手厚い「労災保険」

次は、「労働保険」のグループです。

1つ目の「労災保険」は、皆さんが仕事中や通勤途中でけがや病気したときに、保険給付される制度です。工場勤務をしている人は、利用したことがあるかもしれません。

2つ目の「雇用保険」は、皆さんが会社を退職した場合や、勤めていた会社が倒産した場合などで失業したときに、生活の安定や再就職の促進を目的としたものです。皆さんが、会社をやめたときにお世話になります。

以下、各保険について、もう少し詳しく説明をしていきます。

「健康保険」と「厚生年金」は会社が半額を負担

「健康保険」と「厚生年金」の保険料は、皆さんからの給料の天引き額も大きいですが、同じ金額を会社が負担しています。これは入社して間もない人は、意外に知らないことが多いようです。

さらに、「雇用保険」は少ないですが、会社の負担が半額以上となっており、さらに「労災保険」は会社が全額を負担しています。

「社会保険」と「労働保険」のサラリーマンと会社の負担率一覧表(平成30年4月現在)
「社会保険」と「労働保険」のサラリーマンと会社の負担率一覧表(平成30年4月現在)

ちなみに、会社を辞めてフリーで働くと、国民健康保険、国民年金、いずれも全額が個人負担となります。

サラリーマンのほうが多くもらえる「厚生年金」

次に、サラリーマンの年金の仕組みを説明します。

サラリーマンは「厚生年金」を払っていますが、将来高齢になってから「老齢基礎年金」と「老齢厚生年金」を合計して受給することになります。

一方、フリーや個人事業として働いている人は、「国民年金」に加入することになります。将来もらう年金は「老齢基礎年金」のみとなります。

サラリーマンの「厚生年金」には「国民年金」も含まれているので、両方の年金を合計してもらえるのです。つまり、サラリーマンは、会社負担分も含めて支払う額が多い分、将来受け取れる年金額も多くなるのです。

また、国民年金や厚生年金をはじめ、皆さんが給料から天引きされて負担している社会保険の金額は、所得税や住民税を計算するうえで、たいへん優遇されています。負担した額が、まるまる「所得控除」となります。つまり、負担額すべてが税金の対象にはならないのです。

「障害年金」と「遺族年金」

国民年金や厚生年金の制度で、意外に知られていない大きなメリットとして、「障害年金」と「遺族年金」が付いていることがあります。

まず、「障害年金」とは、年金の保険料を払っている人が、病気やケガで障害を負ってしまったときに、一生涯の生活の保障をしてくれるものです。

障害の重い順に、1級~3級と定められています。国民年金の加入者は、1級、2級の障害を負ってしまった場合、障害年金がもらえます。また、サラリーマンのように厚生年金の加入者は、1級~3級いずれでも障害年金がもらえます。

障害の程度が同じままの場合、障害年金は、65歳になるまでもらうことができます。65歳になると、今度は通常の年金をもらえますので、結果的に切れ目なくもらうことができます。

次に、「遺族年金」です。

遺族年金は、働き盛りで亡くなった場合、残された家族に対して支払われる年金です。国民年金に加入している人は、本人が亡くなったとき、遺族は「遺族基礎年金」がもらえます。亡くなった時点で、18歳までの子どもがいることが前提となります。

サラリーマンの遺族の場合は、さらに、「遺族厚生年金」が上乗せされます。「遺族厚生年金」については、子どもがいない妻、55歳以上の夫、父母、祖父母も対象となり、受給者の範囲が広がります。

失業保険の原資になる「雇用保険」

次は、給料からの引かれる「雇用保険」が一部原資となっている「失業保険」です。

差し引かれる金額は、数百円~数千円と少ないのですが、失業したときに給付を受けることができます。

サラリーマンの場合、通常の退職のケースで、加入期間に応じて90日から150日の失業給付をもらうことができます。また、会社の倒産や解雇のケースは、30歳未満の場合で、90日から180日の失業給付をもらうことができます。

ホワイトカラーも無縁でない「労災保険」

最後に、「労災保険」です。

労災保険は、仕事中のけがや病気をした場合に支払われる保険です。さらに、通勤の途中で事故にあった場合でも、対象になります。

ただし家に帰る途中で飲みに行ったり、いつもの帰り道と違う方向での買い物の途中に事故に遭った場合は、対象にならないのでご注意ください。

(つづく)

落合 孝裕

カテゴリ:マネーテク
【著者紹介】落合 孝裕(おちあい・たかひろ)
税理士・CFP。横浜市立大学卒業。大手食品メーカーを退職後、91年税理士登録、96年落合会計事務所を開業。中小企業向けの会計・税務、資産家向けの相続税・贈与税を専門としている。テレビ朝日「グッド!モーニング」、TBSテレビ「Nスタ」、「ひるおび!」、「イブニングワイド」、日本テレビ「ズームイン!!SUPER」、などTVの取材多数。また、読売新聞、産経新聞、週刊ダイヤモンド、週刊東洋経済、PRESIDENT、日経マネー、AERA、サンデー毎日、週刊ポスト、週刊SPA!、など新聞・雑誌への取材・執筆実績は430回(2018年3月現在)。研修講師の実績は、中小企業大学校、東京商工会議所、など。
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