1時間で9紙読める! プロが実践している情報収集法/お金の教養⑰

デフレの長いトンネルから脱け出そうとしている日本経済。変化に適応して資産を殖やすには何が必要か。『知らないと損をする! 株高時代の「お金の教養」』(菅下清廣著)で学びましょう。今回は第17回目です。
つくられた記事よりインタビューに注目
毎朝出勤前に9紙の新聞を読んでいるという話をしたとき、「1時間で9紙も読めるの? 」と疑問を持たれたでしょう。
読めるのです。なぜなら、読みたい記事を探して、ピンポイントで読み込むからです。それ以外の情報は、ざっと流し見するだけです。
読みたい記事とは、関心のある分野の記事、ということだけではありません。
私は「加工情報」ではなく、「生鮮情報」を優先して読みます。
加工情報とは、共同通信などが配信する情報に従って各社が記事にしたもの。
対して、生鮮情報は文字通り生の声です。
政治家・経営者・財界人など特定の人物への取材をもとに、その発言を記事にしたもの。取材記事のほか、対談やインタビュー、署名入りの本人の寄稿も生鮮記事です。
こうした情報を重点的に仕入れておくと、この先の動向が見えてきます。
では、テレビの場合はどうでしょうか。
どんな番組にせよ、その番組の放送時間ぶんだけ拘束されるわけですから、時間の短縮化は不可能。ならばテレビは非効率なメディアかというと、そんなことはありません。
ポイントを押さえて見ると、情報の質がぐっと上がります。
たとえばニュース番組に政治家が出ているとき、私が着目するのはなんと、表情と肌ツヤです。驚かれるかもしれませんが、ここを見る目を磨くことはバカになりません。勢いのある人は目の力が強く、肌にもハリがあります。
さらに、役に立つのはニュース番組だけではありません。芸能界には必ず、どんなときにも「ブレイク中の人」や「話題の人」がいます。その人物の表情や人相をチェックしましょう。
良い人相なら、景気は上向きになります。表情の暗い、嫌な顔の人がやたらテレビに出ていたら、景気も湿りがちになるでしょう。世の中や景気は、人の心を映します。ウソだと思ったら、よく観察してみてください。
「どこを見るか、どう見るか」のポイントさえできれば、たわいないバラエティも、めっぽう景気予測に役立つのです。くだらない番組だと決めつけるのは禁物。
大事なのは、自分がそこから何を読み取るかなのです。
ベネズエラと日本の卵
報道を読み解くときのコツを、もう一つお教えしましょう。それは、その情報を得ただけで完結するのではなく、「ということは、どうなる?」と考えることです。
突然ですが、南米の大国ベネズエラが今、ハイパーインフレになっているのをご存じですか? ベネズエラは産油国です。外貨収入の95%が石油輸出によるものです。
ところがこの石油価格が大幅に下落、4分の1に下がってしまいました。
外貨が急激に不足し、物価が高騰。
インフレ率、なんと2600%超。
こうなると、通貨の価値はほぼゼロです。
では国民たちはどうやって日用品や食料を買うかというと……。
物々交換で手に入れているのです。パスタ1キロでおむつ1袋、小麦粉1袋でシャンプー1本など、定番の組み合わせも出てきているそう。
中でも、普通の国の通貨並みになんでも買える万能アイテムがあります。
それはなんと「卵」です。
食料品不足のなか、タンパク質を手に入れることは国民にとって生命線。ちなみにベネズエラ国民の平均体重は激減しているそうです。報酬や給与を卵で払う事例も増えていて、 ある会社では「ボーナスが卵144個」というウソのような話も。
――という話を知って、「へえ~」で終わってはいけません。
私が「ウォール・ストリート・ジャーナル」でその記事を読んだ後、すぐにしたのは、日本国内の卵の会社を探すことでした。
通貨が機能を失ったとき、真っ先に代替となるのは卵であると知り、いずれは世の中全体で、卵の価値にスポットライトが当たるだろう、と考えたのです。
良質であれば、なおさら人気が出るはず。実際、日本のグルメ番組でも高級ブランド卵が時々取り上げられている。いずれは海外輸出されるかもしれない……。
そう考えて調べたところ、見つけたのが北海道にある「ホクリヨウ」という肉や卵の生産・販売を行う会社でした。
自社農場で健康に飼育された母鶏から産まれた卵の品質と安全性は最高級。
一つひとつの卵に賞味期限と農場のコードが印字される、徹底した品質管理。
これは株主になるしかない、と思ったところ、すでに株価は上昇中。下がってくるのを今待機中です。
ニュースは漫然と読んではいけません。
「ということは? 」を合言葉に、連想をつなぎながら読みましょう。

菅下 清廣
この連載をもっと読む
【著者紹介】菅下 清廣(すがした・きよひろ)
スガシタパートナーズ株式会社代表取締役。国際金融コンサルタント。投資家。学校法人立命館 顧問。メリルリンチをはじめとする名門金融機関で活躍後、現職。変化の激しい時代に次々予想を的中させることから「経済の千里眼」の異名をもち、政財界にも多くの信奉者をもつ。『今こそ「お金の教養」を身につけなさい』(PHP ビジネス新書)、『マネーバブルで勝負する「10 倍株」の見つけ方〔2018 年上半期版〕』(実務教育出版)など著書多数。
【書籍紹介】『知らないと損をする! 株高時代の「お金の教養」』(KADOKAWA)