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仮想通貨が盗まれた! 絶対安全なはずの仕組みが破られたのはなぜ?/みらいのお金⑤

仮想通貨やブロックチェーンで、私たちの暮らしは何が変わるのか? 松田政策研究所代表である松田学著『いま知っておきたい「みらいのお金」の話』から、これからやってくる「仮想通貨」社会で上手にお金を稼ぎ、使うための知識をご紹介します(最終回)。

「盗まれた」仮想通貨も正しい取引?

【カナちゃん】:あ、先生! 質問があります。さっき、「51%攻撃」がどうとかで、仮想通貨が盗まれたことがあるって言ってましたよね。それにニュースでも「仮想通貨が流出」とか聞いたことがあります。これって結局、ブロックチェーンの仕組みは安全っぽいけど、実際は安全じゃないってことなんですか?


【マツダ先生】:当然の疑問だね。日本のメディアでもすごく大きく取り上げられたから、仮想通貨はやはり怪しいという印象を持った人も少なくないだろう。


【カナちゃん】:はい。だから、本当はどういうことなのか教えてほしいんです。


【マツダ先生】:それは大事なことだね。結論から言うと、「51%攻撃」への対策はたしかにブロックチェーンの課題だ。新しくて規模の小さな通貨は、誰かにコントロールされてしまう危険性がある。ただし、日本で起きた流出事件は、ブロックチェーンは安全だけど仮想通貨は安全じゃなかった、というケースだ。わかりにくいかもしれないけれど、そもそも仮想通貨が流出するって、どういう状態だと思う?


【カナちゃん】:それがよくわからないんです。現金だったら、お札を勝手に持っていかれたら盗まれたってわかるんですけど、仮想通貨はデータでしょ? どこからどこへ出ていくの? 消しちゃった写真のデータを復元するみたいに、元に戻してもらうことはできないの?


【マツダ先生】:少しややこしいよね。さっきのブロックチェーンの話と関連するんだけど、仮想通貨というのは「その通貨のデータを持っている」こととは違う。通貨の実体は、台帳システム上に保管された、取引の記録なんだ。

たとえば「マツダがカナちゃんに1BTCを払った」という取引が記録されると、カナちゃんは1BTC持っているってことになる。同時にマツダは1BTC減ったことになる。銀行預金の場合も、実際にATMに現金を入れて預けたとしても、銀行に「カナちゃん用の現金」がとっておかれるわけじゃない。結局、銀行がカナちゃんからお金を預かったという記録でしかないんだ。

だから仮想通貨が「盗まれた」とか「流出した」と言われていることは、「知らない間にいろんな人が犯人に仮想通貨を払ったことが記録された」ということ。


【カナちゃん】:勝手に預金口座からお金を引き出されたような感じですね。ただ、銀行口座の場合、誰かがなんらかの不正な手段で私の口座からお金を引き出しても、その記録が残ります。だから、それが銀行側のミスであれば、銀行が責任を持って残高を元に戻してくれるはずです。


【マツダ先生】:そうだね。銀行口座のように、銀行が管理者として存在していればそうなる。しかし、仮想通貨には管理者が存在しないんだ(厳密には管理者がいるクローズドな通貨もあります)。だから、もしも悪い人が勝手に「カナちゃんがマツダに1BTC払った」という取引を書き込んでシステムが「正しい取引」と記録してしまったら、誰にも責任が生じないことになる。


【カナちゃん】:えっ? でも記録の書き換えのような悪いことができにくいのがブロックチェーンじゃないんですか? 話が違いますよ!


【マツダ先生】:そこが誤解されやすいところなんだ。仮想通貨のシステムが安全なことと、利用者の管理の問題は別なんだ。カナちゃんのパスワードが誰かに知られてしまって、その誰かがカナちゃんになりすましてお金を動かしてしまうってこと。これはブロックチェーンのシステムの欠陥やミスではなくて、パスワードの管理の問題だよね。たまにクレジットカードの不正利用事件があるけど、あれもなりすましが問題であって、クレジットの決済システムに欠陥があるわけじゃない。


【カナちゃん】:じゃあ、私の仮想通貨が盗まれたら、私が悪いってことになるんですか?


【マツダ先生】:日本で起きたコインチェックの事件などに関して言えば、それも違う。あれは取引所の問題だ。仮想通貨のシステムと、そのシステムを利用して両替ビジネスをしている取引所のシステムとは別物だ。仮想通貨自体のセキュリティは強固なんだけど、取引所のセキュリティが甘かったんだよ。


【カナちゃん】:私にはその違いがわからないです。


【マツダ先生】:では仮想通貨の保管の仕方から説明しようか。保管方法は大きく二つ。一つは、自分の財布で保管する方法だ。仮想通貨にも財布のようなものがあって、それを「ウォレット」という。たとえば、きみが仮想通貨を持っていて、それを個人で管理する場合はウォレットにしまっておくことになる。ウォレットにはいろんな種類があって、ウェブ上のウォレットサービスだったり、自分のパソコンにウォレットを作るソフトだったり、あるいは紙だったりするんだ。

もちろん、お金を使うときにはウェブにつながっていないといけないのだけど、保管するだけならオフラインでも問題ない。外部から接続できないから、オフラインで保管しておくほうが安全だと言える。


【カナちゃん】:データのお財布って感じで、現金とそんなに変わらないですね。


【マツダ先生】:そうだね。もう一つの保管方法は、取引所の口座に預ける方法だ。これは銀行の預金口座と同じようなもので、個人ではなく取引所で仮想通貨を保管することになる。こちらはオンラインであることも多いので、外部から攻撃されるリスクがある。取引所のセキュリティ次第ということだね。


【カナちゃん】:自分で持っておくか、よそに預けるかの違いで、現金では財布か銀行、仮想通貨ならウォレットか取引所ってことですね。


【マツダ先生】:その通り。自分のウォレットで保管する場合は、自分で決めたパスワードで守る。財布を自宅の金庫に保管して、暗証番号で守るのと同じだ。すぐに使わない分はそうしておくのが安心なんだけど、仮想通貨を取引所に預けっぱなしにしている人がたくさんいる。そしてその取引所のセキュリティが破られて、サイバー攻撃で盗まれてしまった。


【カナちゃん】:その「盗まれる」っていうのが、さっき先生が言っていた、なりすまして動かすってことなんですね?


【マツダ先生】:そう。これは勝手に取引されたということであって、システム上の取引記録だけを見れば正しい取引なんだ。だからその取引記録を消したりやり直したりすることなく、今も履歴として残っているんだよ。


【カナちゃん】:なるほど。ブロックチェーンは安全だけど、仮想通貨は安全じゃなかったって意味がやっとわかりました。

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セキュリティが未来を開く鍵

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松田 学

カテゴリ:マネーテク
【著者紹介】松田 学(まつだ・まなぶ)
松田政策研究所代表、バサルト株式会社社長、社団法人ドローンシティ協会理事長などを務める。2018年まで、東京大学大学院客員教授としてサイバーセキュリティの研究に従事。ブロックチェーンなどの情報技術や暗号通貨を活用した新しい日本の社会を構想し、様々な立場で情報発信や政策提言活動を展開している。
■Twitter:@matsudamanabu

【書籍紹介】『いま知っておきたい「みらいのお金」の話』(アスコム)

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