資格取得

アジアの巨人を率いる現代の「チンギス・ハン」経営術/川尻秀道

MBAにおけるケーススタディは、実在の誰かに成り代わって意思決定を学ぶ方法です。今回は、フォックスコン創業者のテリー・ゴウを取り上げ、経営に生かせる考え方を紹介します。

中国、香港、シンガポールなどのビジネススクールを筆頭に、MBA出願者の間ではアジアMBAの人気度が年々増しています。

欧米のビジネススクールでMBAを取得した人たちであっても、新たなキャリアを求めてアジアに移動しているのが実情です。

そんなビジネス的にも魅力があるアジアの企業や経営者について学んでおくことは、将来、アジアを基盤にキャリアを積んでいく人たちとっては役にたつでしょう。

今回は、そんなアジアビジネスにおけるケーススタディとして、アジアの巨人、フォックスコン(中国語名:鴻海科技集団、英語名:Foxconn Technology Group、以下“フォックスコン”)とその創業者、テリー・ゴウ(中国語名:郭台銘、以下“テリー・ゴウ”)を取り上げます。

現代のチンギス・ハン

現代のチンギス・ハンことテリー・ゴウが日本のメディアに大きく取り上げられたのは、彼が会長を務めるフォックスコンが2016年3月にシャープを買収したときでしょう。

テリー・ゴウは台湾の専門学校を卒業後、海運会社でのサラリーマン生活を経て、1974年2月にフォックスコンの前身である鴻海プラスチック企業有限公司を立ち上げました。

それから40年余り、たった1代で年間売上高約14兆円の超巨大企業を作り上げ、2兆円企業シャープを買収した世界的経営者です。

専門学校卒のテリー・ゴウは、MBAホルダーではありません。

しかしながら、彼の現場叩き上げの経営手法で、現代のチンギス・ハンと呼ばれています。

黒子ビジネスからブランドビジネスへ〜サプライチェーン

フォックスコンはシャープ買収でその知名度は上がりましたが、それまではなかなか耳にすることのない企業でした。それもそのはず、同社はシャープ買収時まで、黒子ビジネスに徹していたためです。

フォックスコンの主な事業は、メーカーの電子機器製品の受託生産で、このような企業をEMS(Electronics Manufacturing Service)企業と呼びます。主要顧客にはアップル社などがあり、iPhoneの製造などを行なっていました。

フォックスコンが他のEMS企業と違うのは、生産マニュアルに沿って製造するにとどまらないところです。

同社は製品の設計、試作の段階からプロジェクトに携わり、部品調達、製造、発送、補修、アフターサービスまでをカバーします。

ただの製造業者ではなく、サプライチェーンの多くの部分を担い、自社のサービスに付加価値をつけることに成功し、ここまで成長したのです。

シャープ買収により、フォックスコンは自社ブランドを持つ企業となりました。今後は黒子ビジネスからブランドオーナーとして新しいビジネスモデルを模索していくことになります。

フォックスコンがどのような戦略でシャープブランドを立て直していくのか、注目です。

常に一流の顧客を持つことを心掛ける〜顧客リレーション

長年、黒子ビジネスに徹してきたテリー・ゴウはこう言います。

「常に一流の顧客を持て」(出典:『野心 郭台銘伝』安田峰俊著/プレジデント社、p.187)

フォックスコンの顧客には、アップル、ソニー、任天堂、レノボ、キャノン、ノキア、アマゾンなどがあり、世界を代表する有名企業がズラリと並びます。フォックスコンは、これらの超有名企業の縁の下の力持ちとして成長をしてきた企業です。

また、こうも言っています。

「 四流の顧客が力を合わせれば一流の顧客を獲得できる。」(出典:『郭台銘=テリー・ゴウの熱中経営塾』張殿文著、薛格芳訳/ビジネス社、p.92)

弱いものであっても一致団結することで、上述のアップルやソニーなどの一流顧客を勝ち取ってきたというのです。

一流顧客に支えられて、ここまで成長してきたのがよく分かります。

独裁経営で会社を成長させる〜リーダーシップ

フォックスコンの経営スタイルは、独裁で知られます。

テリー・ゴウ自身、「独裁為公(独裁をもって公をなす)」と宣言しており、自らを独裁者と認め、独裁を貫く経営スタイルを採用していることが分かります(参考:『鴻海・郭台銘 シャープ改革の真実』毎日新聞経済部著/毎日新聞出版刊、p.22)。

例えば、フォックスコン中国工場では従業員の自由な発想、職場の改善提案などは許されていません。上司の命令は絶対服従が鉄則です。これは、工場で働くブルーカラーに限ったことではないようです。

また、ある高級幹部が日本に留学中の娘に会うために休暇を取った際、フライト直前に会社から呼び出しがありました。「飛行機のドアが閉まったのでいけない」と拒否したところクビになった、という逸話もあります。

テーマを決めて企業を見てみると発見がある

以上、アジアの著名な経営者として、フォックスコンのテリー・ゴウを取り上げました。

MBAの「リーダーシップ」の講義では、コーチ型、ビジョン型、カリスマ型、そして独裁型などあらゆるリーダーの特徴を学ぶことになります。

例えば、「なぜテリー・ゴウは独裁型のリーダーシップスタイルを選んだのか?」というテーマを決めて、学んでみる。こんな風にしてフォックスコンを研究してみるのも、面白いかもしれません。


川尻 秀道

カテゴリ:資格取得

【著者紹介】川尻 秀道(かわじり・ひでみち)
ラウンジグループ株式会社代表取締役兼CEO 。
1978年1月生まれ。静岡県出身。少年時代は、勉強「普通」、スポーツ「普通」、顔「普通」。三拍子そろった普通の少年。あまりの「普通」の人生に危機感を感じ、人生最大のリスクを背負って2007年8月よりMBA国際認証トリプルクラウン校であるクイーンズランド工科大学(オーストラリア)のQUT Business SchoolへMBA留学。現在は、ラウンジグループ株式会社代表取締役兼CEOとしてMBA・大学院留学支援サイト「MBA Lounge」や留学準備とビジネスの会員制コミュニティ「U29 Lounge」などの事業を展開。「留学支援とビジネス教育を通じて『自ら行動し、自らの人生を豊かにできる』人財を育て社会に貢献する」ことをミッションに掲げ日々奮闘中。

【書籍書籍】
『野心 郭台銘伝』(プレジデント社)
『郭台銘=テリー・ゴウの熱中経営塾』(ビジネス社)
『鴻海・郭台銘 シャープ改革の真実』(毎日新聞出版)

★社会人の学びに役立つ「資格取得」記事一覧はこちら

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