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自社の“強み”を活かせる企業だけが生き残れる『コア・コンピタンス経営』/MBA必読書50冊②

グローバルエリートたちは、ビジネスの「セオリー」を知っている! ビジネスマン必読の50冊のエッセンスが1冊で学べる『世界のエリートが学んでいるMBA必読書50冊を1冊にまとめてみた』(永井孝尚著)より、「読む」だけで差がつくビジネスマン向けの本をご紹介いたします(第2回)。

未来をつくり出すのは、自分たちの本当の強みだ

本書が出版された1995年当時、日本企業はまだ圧倒的に強かった。

一方で米国企業は、長い低迷から脱して成長段階に入ろうとしていた。

こんな中で米国企業に対して「自社の強みを磨き、未来を開け」と提言したのが本書である。原題は「未来のための競争」(Competing for the Future)だ。

本書ではソニー・ホンダ・シャープ・東芝など多くの日本企業が成功事例として取り上げられているが、皮肉なことにこれらの日本企業はその後低迷に苦しむ一方で、米国企業は復活した。では、なぜ日本企業は低迷するようになったのか?

多くの日本企業が「自社の強み」の磨き上げを怠ったり、あるいは自ら手放してしまったためだ、と私は考えている。かつての日本企業が持っていた「強み」を学ぶ上で、本書はとても参考になる。そこで、そのポイントを紹介したい。

コア・コンピタンスが競争力の源泉

「自社の強み」は、未来を開く原動力である。本書では自社しか持たない強みのことを「コア・コンピタンス」と呼んでいる。「コア」は「中核」、「コンピタンス」は「能力」。つまり「中核となる能力」という意味だ。

話は変わるが、私は饅頭が大好きだ。「できれば皮は最小限で、餡(あん)だけあれば……」と思ったりする。会社を饅頭にたとえると、コア・コンピタンスとは会社の能力の中で、一番おいしい餡の部分である。

コア・コンピタンスは「コア技術」と「顧客の利益」の組み合わせだ。これが強い製品を生み出す。

かつて、ソニーのコア技術は「小型化技術」だった。ソニーの電子技術とメカニカルな機械技術の組み合わせにより、製品の小型化が可能になり、顧客に「携帯性」という価値を提供した。そして携帯ラジオ・ウォークマン・ハンディカムなど、顧客をワクワクさせるような商品を数多く生み出した。

ホンダのコア技術は「徹底的に究めたエンジン技術」だ。1970年代、日本と米国は大気汚染が深刻で、当時世界で一番厳しい排ガス規制を行っていた。そこでホンダはCVCCというエンジン技術により、省エネや排ガス規制に対応した初代シビックを生み出した。シビックは燃費もすぐれていたので、オイルショックでガソリン価格が上がったこともあり、世界的な大ヒット車になった。

かつてのシャープのコア技術は、液晶技術だった。液晶技術により製品の小型化・省エネ化が可能になり、小型電卓、電子手帳ザウルス、液晶テレビなどを次々とヒットさせた。

このようにコア・コンピタンスが、競争力ある製品を生み出す。

しかし10年単位で見ると、自社しか持っていなかったコア・コンピタンスが、他社も持っている単なる能力に変わることもある。

かつてソニーのコア・コンピタンスだった「小型化」と「携帯性」は、いまやアップルやサムソンなどのスマホメーカーも実現している。

誰も真似できないおいしい饅頭の餡も、いずれライバルたちが必ずそのおいしさに追いつく。コア・コンピタンスも、時間をかけて常に磨き続ける一方で、常に新たなコア・コンピタンス(=おいしい餡)も育てていく必要がある。

コア・コンピタンスの見直しで復活した「ユニ・チャーム」

製品開発は、短距離リレーに似ている。速く市場に商品を出し続ける勝負だ。

一方でコア・コンピタンスをつくり上げる競争は、遠泳+180kmの自転車競争+マラソンを組み合わせたトライアスロンのアイアンマンレースに似ている。様々な競技種目があるトライアスロンのように、コア・コンピタンスには様々な要素が複雑に絡み合う。これらを極め、焦らずじっくり育てていくことが必要だ。

しかし企業は、ともすると自分のコア・コンピタンスが見えないことも多い。

会社が危機を迎えたときこそ、コア・コンピタンスを見極めることがとても大切だ。

コア・コンピタンス見直しを契機に、成長している日本企業もある。

ユニ・チャームは2002年に業績が低迷したとき、自社のコア・コンピタンスを徹底的に見極め、次のように定めた。

「不織布吸収体の加工・成形技術により、清潔・衛生・新鮮な快適環境を提供すること」

前半の「不織布吸収体の加工・成形技術」がコア技術。「清潔・衛生・新鮮な快適環境を提供」が顧客の利益だ。そしてコア・コンピタンスを活かせる5つの事業に集中し、コア・コンピタンスを活かせない事業は売却・撤退した。強みに特化したユニ・チャームは、その後グローバル企業へと成長した。

デジカメの登場による写真フィルム市場衰退の前兆をつかみ、市場撤退を決めて新事業立ち上げに全力で取り組んで生き残った富士フイルムの事例も図示しているので参考にしてほしい。富士フイルムもコア・コンピタンスを見直して復活した。

シャープは逆に、自らコア・コンピタンスを手放してしまった。

かつての勝ちパターンはコア技術である液晶技術を新製品につなげることだった。しかし液晶テレビが大きな売上を占めると、製品技術である液晶テレビへ重点投資し、コア技術への投資を怠った。液晶テレビが衰退し始めると、次の目玉商品を生み出せずに低迷し、今は海外企業の傘下で再建を目指している。


多くの日本企業が成功事例として取り上げられた本書の出版から、24年が経った。

その後、コア・コンピタンスを磨き上げ、あるいは見直し、成長する日本企業もある。一方で自らの強みを見失って低迷を続けたり、破綻する日本企業もある。

多くの日本企業は「自社ならではの強み」を持っているが、「企業の強み」の構造を理解していないビジネスパーソンは少なくない。今こそ本書から、私たちが学べることは多いはずだ。

◇ ◇ ◇

「コア技術×顧客利益」を考え抜き製品を生み出すことが成長のカギ

『コア・コンピタンス経営』著者:ゲイリー・ハメル/C.K.プラハラード

ハメルは、ロンドン・ビジネススクール客員教授( 戦略論、国際マネジメント)。経営論、戦略論の専門家として活躍しながら世界的企業のコンサルタントも務める。プラハラードは、インドに生まれ、1975年ハーバード大学大学院で経営学博士号を取得cc。企業戦略論の研究者であり、多くのグローバル企業のコンサルタントを務める。「世界で最も影響力のあるビジネス思想家」に何度も選出されている。



永井 孝尚

カテゴリ:資格取得

【著者紹介】永井 孝尚(ながい・たかひさ)
2013年に日本IBMを退社して独立、ウォンツアンドバリュー株式会社を設立して代表取締役に就任。執筆の傍ら、幅広い企業や団体を対象に新規事業開発支援を行う一方、毎年2000人以上に講演や研修を提供し、マーケティングや経営戦略の面白さを伝え続けている。主な著書にシリーズ60万部『100円のコーラを1000円で売る方法』(KADOKAWA)、10万部『これ、いったいどうやったら売れるんですか?』(SB新書)ほか多数。

【書籍紹介】『世界のエリートが学んでいるMBA必読書50冊を1冊にまとめてみた』(KADOKAWA)

【記事内の書籍紹介】『コア・コンピタンス経営―大競争時代を勝ち抜く戦略』(日本経済新聞社)

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