資格取得

ディズニーランドに学ぶ、顧客との絆『顧客ロイヤルティのマネジメント』/MBA必読書50冊③

グローバルエリートたちは、ビジネスの「セオリー」を知っている! ビジネスマン必読の50冊のエッセンスが1冊で学べる『世界のエリートが学んでいるMBA必読書50冊を1冊にまとめてみた』(永井孝尚著)より、「読む」だけで差がつくビジネスマン向けの本をご紹介いたします(第3回)。

新規開拓よりも、今の顧客

「購入いただければ、私が責任を持ってサポートさせていただきます」

熱心な営業だったが、買った途端に音沙汰がなくなった。新規営業に忙しいようだ。

(あれ? 責任を持ってサポートするって、何だったの?)

新規顧客の開拓に忙しい営業は、実に多い。

たしかに新しい顧客を見つけることも大切だが、もっと大切なのは今の顧客を大切にすることだ。単なる道徳観とか精神論の話ではない。ビジネスの話である。今の顧客を大切にすれば、売上も利益も大きくアップするからだ。本書はその仕組みを教えてくれる。


基本となるのが「顧客維持率」の考え方だ。これは今の顧客のうち、1年後も取引がある顧客の比率だ。顧客維持率が高いと、顧客が買い続ける期間も長くなる。

図のように、顧客維持率50%だと顧客は毎年半分ずつ減り続け、2年後に4分の1、5年後はたった3%しか残らない。

顧客維持率95%だと、顧客は毎年5%しか減らない。顧客数は1年後には95%、2年後は90%、5年後でも77%が残っている。

顧客が長く買い続ければ長い目で見てその顧客からの売上も増えていく。今の顧客を放置して新規顧客開拓ばかりやるのは、実にもったいないことだ。

栓をせずに風呂にお湯を入れ続けると、お湯は抜ける一方で溜まらない。同じように顧客を放置して新規顧客獲得している間に、大切な今の顧客は離れている。今の顧客を大切にすることが必要なのだ。

「顧客ロイヤルティ」が莫大な利益につながる

今の顧客を大切にするにはどうすればいいのか?

ここで必要なのが「顧客ロイヤルティ」という考え方だ。ロイヤルティとは「絆」という意味。「顧客ロイヤルティ」とは「顧客との絆」のことだ。

「顧客」と一言でいうが、顧客ロイヤルティで見ると顧客にはいろいろある。大きく分けると、買う前の「見込客」。初めて買った「新規顧客」。繰り返し買う「得意客」だ。


「ディズニーランド命」である知人のキョーコさんの場合。

キョーコさんは、子供の頃にディズニーランドのCMを見て、「いつか行きたいなぁ」と思っていたという。この段階で、ディズニーランドから見ると「見込客」だ。

高校生の時、親友と一緒に初めてディズニーランドに行った。「まるで夢の世界!」と感激したという。キョーコさんは「新規顧客」になった。

その後キョーコさんはリピーターになり、年間パスポートで月に2回行くようになった。彼女が「ディズニー生活」というブログを始めると大人気。ブログを見てディズニーランドのリピーターになった人も多いという。ここまでくると立派な「得意客」だ。

このように「見込客→新規顧客→得意客」となることで、顧客ロイヤルティが高まっていく。顧客ロイヤルティが高い顧客は、莫大な売上と利益を企業にもたらす。

長い目で見て顧客が企業にもたらす価値のことを「顧客生涯価値」という。図は、顧客ロイヤルティが高い顧客の顧客生涯価値が高くなる仕組みを解き明かしたものだ。

キョーコさんの場合、こうなる。

【①顧客獲得コスト】顧客を獲得するにはお金がかかる。ディズニーランドも広告などにお金をかけている。キョーコさんは子供の頃に見たCMのおかげでディズニーに興味を持つようになった。

【②基準利益】キョーコさんが入場チケットを買うことで、ディズニーは利益が得られる。

【③購入増加による利益】ディズニーランドの平均滞在時間は9時間だという。実はディズニーランドでは、入場やアトラクションチケット売上よりも、グッズ販売や飲食の売上のほうが多い。長時間滞在して満足した顧客ほど、様々な商品を買う。

【④営業コスト削減による利益】キョーコさんのようなリピーターは、ディズニーでどこに何があるかを熟知している。スタッフの手間がかからないので、会社側のコストは減る。売上は変わらないので、利益は増える。

【⑤クチコミ紹介による利益】キョーコさんのようなディズニーランド命の顧客は、他人に熱心に勧めたり、知人を連れてきたりする。

【⑥価格プレミアムによる利益】少々高くても、価格を気にしなくなる。


ディズニーランド来場者の98%はリピーターだという。ディズニーランドは顧客を裏切らないように、常に新しい「夢の空間体験」ができるように努力している。

「社員ロイヤルティ」を高める方法

ところで、ここで1つ疑問が出てくる。

「そもそも最重要視すべきは、顧客なのか?」

実は本書は、「一番大切にすべきは顧客である」とは言っていない。「社員ロイヤルティ」も大事だとしている。

ディズニーランドのスタッフは誰もが心からの笑顔だ。サービス業では仕事にやりがいを持つ満足度が高いスタッフが、高い顧客満足を生み出す。ディズニーランドも、スタッフの満足度を高めるために価値観の徹底共有など、様々なことをしている。

そして連載第7回『ビジョナリー・カンパニー』でも紹介するように、ディズニーランドは価値観を共有するためのカルトのような文化を持ち、維持し続けている。


1996年出版の本書は社会に大きな影響をもたらした。ポイントカードやマイレージプログラム、コールセンターなどは顧客ロイヤルティの考え方が基である。

最先端のIT企業でも実践されている。ネットフリックスやアマゾンのような海外クラウド業者は、顧客ロイヤルティを最も重要視し、日々の業務で顧客維持率を常にチェックして、必要な対策を取っている。その結果、劇的に売上を拡大させている。


低収益に苦しむ企業はこの仕組みを理解せず、新規顧客開拓が大事と考え、消耗戦を繰り返しているところが少なくない。「新規顧客開拓が一番大事」と思っている人こそ、本書に目を通して考えていただくと、新たな可能性が見えてくるはずだ。

◇ ◇ ◇

顧客ロイヤルティの仕組みを理解して、顧客生涯価値を最大化せよ

『顧客ロイヤルティのマネジメント』著者:フレデリック・F・ライクヘルド

ベイン・アンド・カンパニー名誉ディレクター。ハーバード大学卒業後、ハーバード・ビジネス・スクールにてMBA取得。ベイン・アンド・カンパニーディレクターを経て現職。顧客ロイヤルティに関するビジネス戦略の第一人者であり、企業で広く使われているNPSの創業者でもある。“Consulting Magazine” は2003年に彼を「世界のトップ25コンサルタント」に選んでいる。



永井 孝尚

カテゴリ:資格取得

【著者紹介】永井 孝尚(ながい・たかひさ)
2013年に日本IBMを退社して独立、ウォンツアンドバリュー株式会社を設立して代表取締役に就任。執筆の傍ら、幅広い企業や団体を対象に新規事業開発支援を行う一方、毎年2000人以上に講演や研修を提供し、マーケティングや経営戦略の面白さを伝え続けている。主な著書にシリーズ60万部『100円のコーラを1000円で売る方法』(KADOKAWA)、10万部『これ、いったいどうやったら売れるんですか?』(SB新書)ほか多数。

【書籍紹介】『世界のエリートが学んでいるMBA必読書50冊を1冊にまとめてみた』(KADOKAWA)

【記事内の書籍紹介】『顧客ロイヤルティのマネジメント―価値創造の成長サイクルを実現する』(ダイヤモンド社)

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