資格取得

顧客が“本当に解決したいこと”を見抜けば、売り上げは倍増する『ジョブ理論』/MBA必読書50冊⑩

グローバルエリートたちは、ビジネスの「セオリー」を知っている! ビジネスマン必読の50冊のエッセンスが1冊で学べる『世界のエリートが学んでいるMBA必読書50冊を1冊にまとめてみた』(永井孝尚著)より、「読む」だけで差がつくビジネスマン向けの本をご紹介いたします(第10回)。

イノベーションには成功パターンがある

世の常識を次々と破壊する人を「イノベーター」と呼ぶことが多い。中には「オレはイノベーターだ。常識外れの無茶な挑戦をする」と考え、そう振る舞う人もいる。

しかし単に無茶をするだけでは、成功確率は低い。実はイノベーションには、成功パターンがある。これが分かれば成功を運任せにする必要がなくなる。

本書でクリステンセンは、運任せにせずにイノベーションを起こす方法を紹介している。それが「ジョブ理論」。「ジョブ」とは「顧客が片づけなければいけないこと」だ。


ジョブ理論は「ジョブ」「雇用」「解雇」という独特の言葉で商品を買う理由を考える。

我が家はマンションの1階だ。庭の雑草は生え放題。管理人さんからは「手入れしてください」と言われている。この「庭の手入れをしなければならない」が「ジョブ」だ。

しかし私は庭仕事が大の苦手。私が庭の手入れをやらないので、見かねた妻が専門の庭師にお願いしたら、短時間できれいサッパリ雑草がなくなった。しかも庭一面を人工芝でカバーし、草が生えないようにしてくれた。我が家では草むしりの「ジョブ」から私はめでたく「解雇」され、庭師が「雇用」されたのだ。

ジョブ理論ではこのように、顧客の立場に立って次の質問を問い続けていく。


「どんな『ジョブ(用事)』を片づけたくて、あなたはその商品・サービスを『雇用』するのか?」


この「ジョブ・雇用・解雇」というたとえは、日本人には馴染みにくいものだ。

米国企業では、新しい仕事が発生するたびに、そのスキルを持つ人を雇用する。その仕事が終わると、解雇される。ジョブ理論は、この米国流の仕事方法にたとえたものだ。

「オンライン通信課程」でイノベーションを起こした大学

事例で考えると分かりやすい。米国のある大学は、全米2番手グループの大学だった。

「美しいキャンパス、手頃な学費、充実した教育」という売り文句で生徒を募集したが、反応は今ひとつ。ジョブ理論を学んだ学長は、「学生がこの大学を雇用して片づけたいジョブは何だろう?」と疑問を持った。

入学希望の高校生に聞くと、キャンパスや学費、教育には関心はなく「応援できるスポーツチームはあるか?」「人生の意味を話し合える先生と交流する機会はあるか?」という質問ばかり。ここにはライバルがたくさんいる。競争が厳しいのは目に見えている。

一方で、大学にはオンライン通信課程もあった。ほぼ放置していたのに学生が来ていた。

様々な事情で大学進学せず社会人になった人たちで、仕事や家庭と両立して学んでいた。

平均年齢30歳。彼らの声はこうだった。

「生活レベルを向上させるために、立派な学歴がほしい」

彼らは、利便性・サポート体制・資格取得・短期終了を求めていた。同じ悩みを持ったまま教育を受けずにいる人も多かった。

そこでこの大学は、オンライン通信課程を強化した。それまで問い合わせが来ても放置していたが、24時間以内に担当者が折り返し電話するように変えた。通信課程の学生ごとにアドバイザーを付け、社会人が学ぶ必要性を訴える広告も出した。

10年後の2016年、この大学の売上は5億4000万ドル(600億円)。年平均売上成長率は34%。「米国の中でもイノベーションに富んだ大学」と評されるまでになった。

顧客の「片づけたいジョブ」を見つけ、解決策を提供して「雇用」され成功したのだ。

顧客の「ジョブ」を見失ったスーパー

逆に顧客の「ジョブ」を見失って失敗したのが、ウチの近所にあるスーパーだ。

普通のスーパーだが、普段の食品や台所道具などの日用品が揃うので、我が家は重宝していた。夕方になるとレジには奥様方が行列して、賑わっていた。

ある日このスーパーが全面改装し、全国の食材を揃えたオシャレな空間に生まれ変わった。「沿線にはグルメな専業主婦が多い。好みにあわせよう」ということのようだ。

しかしグルメな食材を数多く陳列するため、洗剤などの日用品は売るのをやめた。

改装から数週間後。夕方の奥様方のレジ行列が消えた。見た感じで客数は3割減だ。

このスーパーは「沿線に住む、グルメな専業主婦」をターゲットに、オシャレな高級食材店に生まれ変わった。一見すばらしい。私も思わぬ食材を見つけることがある。

しかし以前のスーパーは、「夫や子供の帰宅前に夕飯づくりを済ませるため、短時間で買い物を済ませたい」というジョブを抱える主婦たちに「雇用」されていたのである。

グルメな食材専門店に特化したために、主婦の「必要なものをすべて短時間で買い揃える」というジョブには応えられなくなり、「解雇」されたのである。


「沿線に住む、グルメな専業主婦」というように、表面的に顧客のプロフィールを考えるだけでは、いまや商品は売れない。

必要なのは、顧客を徹底的に観察し、顧客に「雇用」されることだ。

ここで問うべきは、「顧客は、どんな商品やサービスを求めているのか?」ではない。それだけでは、他の選択肢(=ライバル)がよければ、そちらを選ぶ。

ここで問うべきは、「顧客は、どんなジョブを片づけたくて、その商品・サービスを雇用するのか?」なのだ。

「ジョブ」と「ニーズ」の違い

スティーブ・ジョブズやアマゾンのジェフ・ベゾスのような世界を変えたイノベーターは、人とは違う目でモノゴトを見て考え続けている。これを具体的な方法論にしたのが、ジョブ理論なのだ。


一方でこんな疑問もあるかもしれない。

「よく『ニーズを考えろ』ともいわれるよね。『ジョブ』と『ニーズ』はどう違うの?」

ニーズは「健康でありたい」とか「何か食べたい」というように漠然としている。解決方法もいろいろある。しかしその解決方法で商品を買うかどうかは、必ずしも確実でない。

ジョブは顧客の具体的で切実な状況で生まれる。たとえばこんなものだ。

「草ボウボウの庭を、なんとかしたい」

「よりよい仕事に就くために、立派な学歴がほしい」

「夕方の忙しい時間に、買い物を短時間で済ませたい」


ジョブ理論で考えると、ライバルは同じ市場にいるライバルだけではなくなる。

映画やドラマをネット配信するネットフリックスのリード・ヘイスティングスCEOは、「ライバルはアマゾンか?」と問われて、こう答えている。

「リラックスするためにすることは、すべてライバルだ。ビデオゲームとも競うし、ワインとも競う。実に手ごわいライバルだね」


ヘイスティングスは「家でリラックスした時間を過ごしたい」というジョブについて考え抜き、ネットフリックスを成長させている。徹底的に顧客視点で考え抜くジョブ理論でビジネスを捉え直すと、まったく新しい視点が得られるはずだ。

クリステンセンは同著の『イノベーションへの解』で「片づけなければならない用事」、つまり「顧客がやりたいけれど、できないこと」として、「外出先でいつもの音楽を聴きたい」という「用事」を例に挙げ、ソニーのウォークマンが破壊的技術で解決したと述べている。

ジョブ理論は、その「片づけなければならない用事」さらに深掘りしたものだ。クリステンセンはこのために会社を立ち上げ、ジョブ理論を多くの企業で10年以上実践・検証してきた。その成果をまとめたのが本書である。

「顧客はなぜ商品を買うのか?」という問いに、本書は多くのことを教えてくれる。

今の顧客は実に多くの選択肢を持っているので、単にニーズに対応するだけでは買ってくれないのだ。「いい商品なのに売れない」と悩む人は、ぜひ一読をお勧めしたい。

◇ ◇ ◇

顧客が片づけたい「ジョブ」を見抜き、「雇用」される商品をつくれ

『ジョブ理論』著者:クレイトン・クリステンセン

ハーバード・ビジネス・スクール教授。「破壊的イノベーション」の理論を確立させた、企業におけるイノベーション研究の第一人者。ハーバード・ビジネス・レビュー誌の年間最優秀記事に贈られるマッキンゼー賞を5回受賞。イノベーションに特化した経営コンサルタント会社など複数の企業の共同創業者でもある。「最も影響力のある経営思想家トップ50」(Thinkers50) の1位に2度選出。



永井 孝尚

カテゴリ:資格取得

【著者紹介】永井 孝尚(ながい・たかひさ)
2013年に日本IBMを退社して独立、ウォンツアンドバリュー株式会社を設立して代表取締役に就任。執筆の傍ら、幅広い企業や団体を対象に新規事業開発支援を行う一方、毎年2000人以上に講演や研修を提供し、マーケティングや経営戦略の面白さを伝え続けている。主な著書にシリーズ60万部『100円のコーラを1000円で売る方法』(KADOKAWA)、10万部『これ、いったいどうやったら売れるんですか?』(SB新書)ほか多数。

【書籍紹介】『世界のエリートが学んでいるMBA必読書50冊を1冊にまとめてみた』(KADOKAWA)

【記事内の書籍紹介】『ジョブ理論 イノベーションを予測可能にする消費のメカニズム』(ハーパーコリンズ・ ジャパン )

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