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カリスマは不要? 超一流企業の“ウソ”を暴く『ビジョナリー・カンパニー』/MBA必読書50冊⑥

グローバルエリートたちは、ビジネスの「セオリー」を知っている! ビジネスマン必読の50冊のエッセンスが1冊で学べる『世界のエリートが学んでいるMBA必読書50冊を1冊にまとめてみた』(永井孝尚著)より、「読む」だけで差がつくビジネスマン向けの本をご紹介いたします(第6回)。

基本的理念は、首尾一貫せよ

海外グローバル企業は、カリスマ性あるトップがすばらしい戦略を考え抜き、強力なリーダーシップで率いている企業ばかりに見える。しかし現実には、時代を超えて超一流の企業ではカリスマは不要だし、戦略も試行錯誤だということが分かる一冊だ。

著者のコリンズは、業界トップ企業の地位を何十年も維持する未来志向(ビジョナリー)の超一流企業を「ビジョナリー・カンパニー」と名付けた。

米国700社のCEOへアンケートして18社のビジョナリー・カンパニーを選び、創業から現在までの歴史を6年間かけて調査し、基本原則と共通パターンをまとめたのが本書だ。1994年に出版された世界的なロングセラーである。その18社は次の通りだ。

3M、アメリカン・エキスプレス、ボーイング、シティコープ、フォード、GE、HP、IBM、J&J、マリオット、メルク、モトローラ、ノードストーム、P&G、フィリップ・モリス、ソニー、ウォルマート、ウォルト・ディズニー(1950年以前設立の企業が対象なので、グーグルやマイクロソフト、アップルといったIT企業は入っていない)。

調査すると従来の「常識」は間違いが多いことが分かった。具体的に見ていこう。


時を告げるのではなく、時計をつくる

「成功した会社は、起業家のアイデアを武器に起業した」と思われがちだが、多くのビジョナリー・カンパニーはたいしたアイデアもなくつくられている。

HP社はヒューレットとパッカードがガレージで会社をつくり「まずは電気料金を払おう」と手当たり次第やるところから事業が始まった。

ソニーも会社を立ち上げた後、井深大と7人の社員がどんな商品をつくるか話し合い、布に電線を縫い付けた電気座布団などで日銭を稼いだ。

創業期にヒット商品で成功した比率は、むしろビジョナリー・カンパニーのほうが低い。

ビジョナリー・カンパニーは、すぐれた製品や戦略をつくるよりも、すぐれた組織をつくり上げることに、より多くの時間を使っている。

HP創業者は、社員が創造力を発揮できる環境をつくるために組織構造を考え抜いた。

雑誌インタビューでも「我々の究極の作品は、オシロスコープや電卓でなく、HP社と『HPウェイ』という経営哲学だ」と述べている。

ソニーの井深大は、製品づくりが進まずに資金繰りに苦しんでいた時期に、「真面目なる技術者の技能を、最高度に発揮せしむべき自由闊達にして愉快なる理想工場の建設」の一文で始まるソニーの「設立趣意書」をつくった。

すぐれた商品を生み出したから、ビジョナリー・カンパニーになったのではない。カリスマ性あるリーダーが、高い商品力を持つ製品をつくり出しているわけでもない。

創業者がすぐれた組織をつくり社員に活力を与え社員の創造性を引き出した結果、すぐれた商品を次々生み出すビジョナリー・カンパニーになったのだ。

カリスマ性あるトップがすぐれた商品を生み出しても、商品には必ず寿命がある。

自らが時を告げるのではなく、「時を刻む時計をつくる」(=組織をつくる)のだ。

基本理念を貫き通す

「時を刻む時計をつくる」ために重要なのが「基本理念」だ。「社会貢献」「誠実さ」「従業員の尊重」「顧客へのサービス」「卓越した創造力」「地域社会への責任」などだ。

ビジョナリー・カンパニーはこの基本理念を組織の土台にしている。基本理念は単なる金儲けを超えたものだ。「我々は何者で、何のために存在し、何をやっているのか」を具体的に示す。他企業では基本理念がなかったり、誰も意識していない。

コリンズが18社を調べた結果、基本理念は各社で異なっておりすべてに共通する「正しい」基本的理念は存在しなかったという。

18社に共通する点は、「理念を貫き通している」ことだ。基本理念を会社の目標や施策に一貫性を持って反映させ、社員の日々の考え方や行動に浸透させているのだ。

社運を賭けた大胆な目標への挑戦

基本理念を進化させる仕組みも必要だ。18社中14社が、自社の進化を促す強力な仕組みとして「社運を賭けた大胆な目標」を設定し、挑戦している。

爆撃機専業メーカーだったボーイングは社運をかけて707を開発し、ジェット旅客機時代を切り拓いた。727、747も大胆な目標を設定して成功させ、業界トップの地位を確保した。

GEのCEOジャック・ウェルチは「参入したすべての市場で1位か2位になり、GEを小さな会社のスピードと機敏さを持つ企業に変革する」という方針を打ち出した。

社運をかけた大胆な目標とは、社員一人ひとりの意欲を引き出し、具体的でワクワクさせ、焦点が絞られて、すぐに理解できるものだ。

社外からは身のほど知らずで大胆な目標に見えるが、意外なことに社内の人たちは「目標を達成できない」とはまったく考えていないことも多いという。

これはロッククライミングに似ている。傍目には、ロープを使わず高い岸壁をよじ登るのは危険きわまりない。しかし本人は自分の力量に合った岸壁を選んでいて、「足場を確保し、集中力を保ち一歩一歩登れば、失敗するわけがない」と固く信じている。

社運を賭けた大胆な目標は、基本理念を強化し目指す方向に合っていることが必要だ。ボーイングの挑戦も「航空技術のパイオニアになる」という基本理念に沿ったものだ。

カルトのような文化

ディズニーランドは「ミッキーマウスの中に人が入っている」と公に認めていない。

ディズニーランドの使命は、世界中の子供たちに夢を与えること。だからミッキーマウスには人は入ってない。外の人間からすると「なにもそこまで……」と思うことでも、社内では当然のことなのだ。その考えに共感する人をスタッフに選び抜き、研修で教育する。

このようにビジョナリー・カンパニーは、カルトに似ているところがある。カルトと共通するのは、①理念への熱狂、②教化への努力、③同質性の追求、④エリート主義だ。

しかし、カルトそのものではない。カルト宗教では、信者たちがカリスマ指導者を個人崇拝する。ビジョナリー・カンパニーでは、この個人崇拝がない。社員が固く信じるのは、基本理念だ。矛盾するようだが、カルトのような同質性が多様性を生み出している。基本理念を信じていれば、肌の色、身体的特徴、性別などはまったく関係なくなるのだ。

大量のものを試し、うまくいったものを残す

ある日J&J社は、「絆創膏で皮膚が炎症した」という医師の抗議を受け、小さな缶にスキンパウダーを入れて送った。この小さな缶がヒット商品「ベビーパウダー」になった。

また別の社員は、妻が包丁で何度も指を傷つけたので、外科用テープにガーゼを貼り付けて使わせてみた。これが同社最大のヒット商品「バンドエイド」になった。

ビジョナリー・カンパニーでは、大成功した商品は綿密な戦略計画ではなく、偶然から生まれることが多い。戦略的計画ではなく試行錯誤が新しいものを生み出している。

ダーウィンの「変異が起こり、自然淘汰され、種が進化する」という進化論に沿っているのだ。

進化による進歩を促すには、迅速にいろいろなものを試し、「誤りは必ずある」と認め、小さな一歩を踏み出し、社員に自由を与えることが必要だ。その上で、表彰制度をつくり、部門長に新商品売上比率の目標を与えるといったように、社内に仕組みもつくる。

ダメなのは、支配したり細かい管理をしたりすることだ。試行錯誤を許さないと、逆に進化の可能性を抑えてしまう。

生え抜きの経営陣

ビジョナリー・カンパニーの経営陣は生え抜きが多い。社外からCEOを迎えるケースは例外。すぐれた経営者を育成する仕組みを持ち、優秀な経営陣の継続性が保たれている。

ガースナーは低迷するIBMに社外からCEOに就任し、数年のうちにIBMを再生させ、1990年代を代表する経営者として称賛を浴びた人物だ。

コリンズは本書で、「ガースナーの成功はIBMの基本的な理想を維持しつつ劇的な変化ができるかがカギ」と言っている。その後、ガースナーは迅速に問題を解決し、企業文化の変革に取り組み、後継CEOにはIBM生え抜きのパルミサーノを選んだ。まさにコリンズの指摘通りになっている。

普通の人でもビジョナリー・カンパニーをつくれる

コリンズは「ビジョナリー・カンパニーをつくり上げた人は、単純な方法でビジネスをしているごく普通の人」という。ただし単純は安易という意味ではない。一貫性が大事だ。

また本書にある基本原則と成功パターンは、現代も変わらない。コリンズは2011年に出版した『ビジョナリー・カンパニー4』で、大混乱の時代に勝ち続けるマイクロソフトやインテルのような企業を「10X(10倍)企業」と名付け同様の方法で分析している。彼の結論は、「ビジョナリー・カンパニーの概念は、10X企業でも有効」だ。


世界的に見ても日本には長寿企業が多い。帝国データバンクによると、日本には創業100年以上の会社が2万6000社あるという。それらの企業には、必ず基本理念があり、基本理念を時代にあわせて進化させている。たとえば近江商人は「三方よし(売り手よし、買い手よし、世間よし)」を信条としたが、この考えは高島屋、伊藤忠、トヨタ自動車、東レ、ワコールなどに引き継がれている。

本書を読むと日本企業の良さも改めて見えてくる。日本企業が今後、何を変え、何を変えてはいけないのかを考える上で、本書は実に示唆に富んでいる。

◇ ◇ ◇

基本理念を首尾一貫して徹底した結果、偉大な企業として発展する

『ビジョナリー・カンパニー』著者:ジム・コリンズ

スタンフォード大学経営大学院教授を経て、現在はコロラド州ボールダーで経営研究所を主宰。企業と非営利団体の指導者に助言するコンサルタントとして活躍している。10年にも及ぶ企業調査を通して、数々のコンセプトを打ち出してきたほか、著書『ビジョナリーカンパニー』シリーズでミリオンセラーを連発した。ドラッカー亡き後、世界で最も影響力のあるビジネス・シンカーといわれる。

永井 孝尚

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【著者紹介】永井 孝尚(ながい・たかひさ)
2013年に日本IBMを退社して独立、ウォンツアンドバリュー株式会社を設立して代表取締役に就任。執筆の傍ら、幅広い企業や団体を対象に新規事業開発支援を行う一方、毎年2000人以上に講演や研修を提供し、マーケティングや経営戦略の面白さを伝え続けている。主な著書にシリーズ60万部『100円のコーラを1000円で売る方法』(KADOKAWA)、10万部『これ、いったいどうやったら売れるんですか?』(SB新書)ほか多数。

【書籍紹介】『世界のエリートが学んでいるMBA必読書50冊を1冊にまとめてみた』(KADOKAWA)

【記事内の書籍紹介】『ビジョナリー・カンパニー ― 時代を超える生存の原則』(日経BP社)

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