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効率の追求は弊害も大きい! 試行錯誤の繰り返しで応用力がつく/こんな働き方(7)

人生ハードモードの方、必読!「日本のムダ」に潰されない、自分らしい生き方とは? 元アップルのマネジャー松井博氏の著書『なぜ僕らは、こんな働き方を止められないのか』より、毎日をラクに楽しく過ごす方法をご紹介します(第7回)。

「効率が良い」って、本当にそんなに良いことなのだろうか?

時間を有効に活用することは、基本的に効率を良くすることとイコールなのですが、ここで一度立ち止まり、効率が良ければそれでいいのかということを考えてみたいと思います。

効率良く学習して、短期間で英語を身につけたい。プログラミングを身につけたい。テニスがうまくなりたい。ギターが弾けるようになりたい。そんな思いは誰にでもあるでしょう。僕自身もそのうちの一人です。

しかし、最近になって、「『効率が良い』というのは、本当にそんなに大事なことだろうか?」と考えるようになったのです。効率を追求することが悪いわけではありませんが、弊害も随分大きいと思うのです。

今から25年以上も前に、自転車で青森から東京まで旅行したことがあります。後に東日本大震災の津波で壊滅的な被害を受けることになる多くの小さな町や村を実際にこの足で踏みしめ、空気の匂いを嗅ぎ、泊まり、土地の料理を食べました。もう随分遠い日のことですが、今でも記憶に色濃く焼き付いています。

行きは新幹線と在来線を利用して、移動はあっという間でした。確かに効率はいいのですが、東京から青森の間に存在する小さな村々も、美しい景色も、そこに住む人々とも知り合う機会はありません。効率を追求すると、実は手に入らないものがたくさんあるのです。そんな当たり前のことに気付かされたのは、これが最初のことだったかもしれません。

もう一つ例を挙げましょう。例えば、新しい街に引っ越したとします。すると大抵の人は、スマホを最大限に活用して街を開拓するに違いありません。そして、これは間違いなく効率がいいです。しかし、行くところは食べログが紹介するお店や、検索上位に出てくるところに偏ってしまいます。また目に入るのはスマホの画面ばかりで、街そのものをろくすっぽ見なくなってしまうのです。

僕が若かった頃はまだスマホもグーグルマップも食べログも存在しなかったので、紙の地図を片手に見知らぬ街を彷さまよ徨うしかありませんでした。

グーグルマップに比べると随分効率が悪かったのですが、思いがけない発見がたくさんありました。「ああ、この道はこの街道に繋がっているのか」「この裏路地のラーメン屋さんは意外に美味しいね」などなど。そうこうするうちに、やがてその街に体そのものが馴染んでいったのです。

同じことは学習にも当てはまります。最近、僕は久しぶりに自炊を再開したのですが、クックパッドのおかげで戸惑いは驚くくらい少なかったのです。レシピを検索しては、色々なものを作ってみました。

しかし、どうも応用が利かないのです。レシピ検索サイトにだけ頼っていると、食材をどう組み合わせると何ができるのか、どんな調味料を使うとどんな風味になるのか、いつまで経っても感覚が育たないのです。

そこでレシピ検索サイトはやめにして、メチャクチャな料理を色々と作ってみました。随分失敗もしましたが、やがて感触が芽生えてきて、残り物で手早く簡単なものを作れるようになっていきました。効率は悪かったかもしれませんが、効率の良さを優先していると得られない「何か」が、間違いなく手に入ったのです。

そう。効率の良い学習方法というのは弊害も大きいのです。効率があまりにも良いからこそ、そこで思考停止してしまうこともあるのです。世の中には5年も10年もピアノを習っているのに、楽譜を見ないと何も弾けない人がごまんといます。あれなど「効率の良い学習方法」の典型的な被害者と言ってもいいでしょう。

また、手取り足取り先生に教えられすぎると、自力で開拓する能力がいつになっても育ちません。「教えられすぎ」という問題も意識しておいた方がいいことの一つです。良い先生というのは、実は教えすぎないよう気をつけ、自力で開拓する余地をたくさん残しておいてくれるものなのです。

では英語はどうでしょう? プログラミングは? テニスや水泳は?

特に英語は「効率的な学習方法」と呼ばれるものが星の数ほども存在します。しかし、どうしたわけか、ネイティブとバリバリ渡り合えるような英語力を身につけた人と遭遇することは滅多にありません。これは一体どういうことなのでしょうか?

実は、目的を部分限定すれば、効率の良い学習方法というのは間違いなく存在します。とりあえずTOEIC(R)で高得点を取る、英検2級に受かる、などのように目的を限定すると、最適化した学習方法というものは確かにあるのです。それは例えば専用の問題集だったり、単語帳だったりします。

さらにネットを使えば、一瞬にして星の数ほどの学習方法を見つけることができます。ゴミ情報が多いのも確かですが、役立つ良質な情報も多くあります。インターネットは間違いなく学習の高速道路なのです。

しかし、それだけでは届かない世界もあります。当たり前ですが、TOEIC(R)で高得点を効率良く取ることと、ビジネスの現場でネイティブとバリバリ渡り合える実力をつけるのは、全く別の話です。本当に応用の利く力をつけたいと思ったら、効率という考え方からは一度離れて、自分なりに試行錯誤を繰り返していく必要があります。

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自分なりの学習方法を編み出すチカラ

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なぜ僕らは、こんな働き方を止められないのか

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作者: 松井 博
出版社/メーカー: KADOKAWA
発売日: 2019-09-27
メディア: 単行本

【著者紹介】松井 博(まつい・ひろし)
Brighture English Academy代表。米国にて大学卒業後、沖電気工業、アップルジャパンを経て、米国アップル本社に移籍。退職はカリフォルニア州にて保育園を開業。

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