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欲しいのは権力? 達成感? 人間関係?「幸せの軸」を見つけよう/こんな働き方(9)

人生ハードモードの方、必読!「日本のムダ」に潰されない、自分らしい生き方とは? 元アップルのマネジャー松井博氏の著書『なぜ僕らは、こんな働き方を止められないのか』より、毎日をラクに楽しく過ごす方法をご紹介します(第9回)。

自分の「幸せの価値観」が何に根ざしているのかを見極めよう!

転職を検討する時、誰もが必ず思うこと――。それは、「今よりも幸せになりたい」という気持ちです。新卒で初めて就職する時にも、誰かと婚約する時にも、「幸せになりたい」と望むのと同じです。「仕事を通して幸せになる」という意識がないと、新卒時の就活でも転職でも失敗しがちです。

一般的に「幸せ」というと、恋人や友人や家族といった豊かな人間関係に囲まれて、助け合いながら生きていくようなイメージがあります。これは確かに一つの幸せの形であり、僕自身も家族や友人に恵まれてハッピーに暮らしています。

しかし、人間が幸せを感じるのは、充実した人間関係だけとは限りません。実はこれ、おおよそ3つのタイプに分けられるのです。ある人は権力を得ることに何よりも強い喜びを感じますし、またある人は何かを達成することに強い満足感を感じます。はたまたある人は、権力も達成感もどうでもよくて、それより何より円満な人間関係を築き上げ、それを維持することに大きな意味を見出します。

具体的な例を挙げてみましょう。

[権力動機タイプ]

このタイプの人々は、競争に勝つことに大きな喜びを見出します。競争を勝ち抜き、権力を得て、他者に大きな影響力を持つことが何よりも大切なのです。責任を課されることを厭いませんし、むしろ任されることに強いやりがいを覚えます。

また、このタイプの人は他人と仲良くしたり、何かを達成するよりも、尊敬されたり、信望を得たり、他人に強い影響力を持つことを何よりも重要なことと感じます。管理職や経営者に向いているタイプと言ってもいいでしょう。

[達成動機タイプ]

その一方で、何かを達成することに強い喜びを感じる人もいます。このタイプの人は勝か負けるかは割とどうでもよくて、自分の理想を追い求めることに意義を見出します。

例えば、儲けなんか度外視して究極の味を目指しているラーメン屋さんなどがこのタイプに属します。この人に「ラーメン屋さんは競争が厳しいからやめときなよ。アフィリエイトの方が儲かるよ」などと言っても意味がないわけです。何しろ、この人の究極の目的は究極のラーメンを作り、お客様に喜んでもらうことだからです。

プロセス改善や新製品開発にメチャクチャ燃える人がいます。いつも新しいことを考えていて、手を替え品を替え新しいことに挑戦します。週末を潰して新しいツールを作ってきたりします。より効率の良いやり方とか、革新的な手法とかを常に考えている工夫魔です。完璧主義者が多く、何でも自分の手でやりたがり、人に任せるのがあまりうまくありません。このタイプは一人で放っておくのが一番です。

[親和動機タイプ]

円満な人間関係を築くことに幸せを感じる人々です。このタイプの人は競争とか創意工夫とかは割とどうでもよくて、皆と同じように働き、円満な関係を築くことが最大の関心事なのです。

新しいプロセスが導入されたり、上司が変わったりして人間関係が乱れることを嫌います。一人で黙々と働くよりも、みんなとワイワイ働く職場を好みます。こうした社員が多いとイノベーションは起きにくいのですが、平和で過ごしやすい職場が構築されます。


さて、この幸せの3つの要素は別に僕の発明でも発見でも何でもなく、マクレランドの欲求理論(McClelland's Theory of Motivation)としてよく知られた説です。

人は誰しもこの3つの要素を兼ね備えています。しかし、この3つのウェイトは人によってかなり異なります。例えば僕自身は達成動機が強く、工夫魔と言ってもいいくらいのレベルです。

例えば英語を教える時にも、新しいカリキュラムを考えて試行錯誤を繰り返すのが大好きです。また、発音の本を執筆した際は、何度もその構成を変えたりして編集者の方を散々困らせました。そして、何でも自分でやらなければ気が済まず、人に任せるのはかなり苦手です。

では権力志向がないのかというと、そんなことはありません。アップル時代には日本人のなかで一番出世した部類でしたし、別に大した大学を出ているわけでもないのに、MITやハーバードの大学院を出た連中と競い合って、能力不足だと思ったこともありませんでした。それは自分に能力があったというよりも、要するに競争が好きだったからだと思います。

その一方で、人と円満にやるのは子供の頃からかなり下手です。つい余計な一言を言って和を乱してきました。結局のところ、みんなと仲良く円満にやることにあまり大きな価値を見出していないのだと思うのです。図にするとこんな感じです(図1)。

対して、かつて同じ職場にいたKさんは、とにかく揉め事の嫌いな人でした。出世など微塵も考えておらず、それよりもいつも新しい仕事の仕方を考えていました。また、決して目立とうとはせず、「みんなで楽しく」が何よりだったようです。Kさんの動機を図にしてみるとこんな感じでしょうか?(図2)

これは僕とKさんを比べてどちらが優れているとか劣っているとかという話ではありません。あくまでも動機付けの傾向の話です。僕はKさんと創意工夫の部分では話が合いましたが、ほかはそうでもありませんでした。こうして図にしてみると、その原因がよくわかります。

さて、ここからが本題です。自分にとってこの3つの要素のどれがもっとも重要なのかをなるべく早い時期に見極めることができると、幸せを追求しやすくなります。

例えば親和動機の強いKさんのような人が権力闘争の真っ只中に放り出されたら、生き地獄となってたちまちうつ病を患ってしまうでしょう。一方、権力志向も強い僕のような人が親和動機の高い集団のなかに放り込まれたら、集団の和を乱して忌み嫌われます。

なお、概ね企業というのは、どこでも「権力志向タイプ」と「達成動機タイプ」が出世しやすい傾向にあります。これは企業同士が競争している資本主義の世界に生きている以上、ある程度やむを得ないことではないかと思います。しかし、かといってこの2つのタイプばかりが集まるとギスギスした働きにくい環境が出来上がります。

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なぜ僕らは、こんな働き方を止められないのか

なぜ僕らは、こんな働き方を止められないのか

作者: 松井 博
出版社/メーカー: KADOKAWA
発売日: 2019-09-27
メディア: 単行本

【著者紹介】松井 博(まつい・ひろし)
Brighture English Academy代表。米国にて大学卒業後、沖電気工業、アップルジャパンを経て、米国アップル本社に移籍。退職はカリフォルニア州にて保育園を開業。

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