スキルUP

伝えるべきは謝罪と状況。ミスの第一報に「言い訳」は絶対禁物/ミスしても評価(6)

「やばい!」「しまった!」が最高のチャンスに変わる! 分析力、計画力、学習力、伝達力を上げる「ミス・失敗」の扱い方を、『ミスしても評価が高い人は、何をしているのか?』(飯野謙次著)よりご紹介します(第6回)。

第一報で伝えるべきこと、伝えてはいけないこと

ミスや失敗をしてしまったら、その影響範囲をカバーできる人、そして上司に、ミスや失敗を伝えましょう。これが、ミスの第一報です。

ミスや失敗で評価を下げる方の多くは、この「ミスの第一報」にも問題があります。伝えるべき内容が間違っているのです。

そこでここでは、「第一報で伝えるべきこと」の前に、つい私たちが第一報で伝えたくなってしまうけれど、本来伝える必要のないことから見ていきます。

・第一報で伝える必要のないこと

第一報においてもっとも不要なのが、「自分のミスを正当化しようとする言い訳」です。この時点での言い訳は、聞く側にとっては時間を浪費する無駄な情報でしかありません。また、ミスや失敗が重大であればあるほど、言う側にとっても不要なものです。なぜなら、そもそもミスや失敗に正当化は必要ないからです。

失敗学においては、仕事を進めるうえで起こった重大なマイナスの事象については、その問題の本質は起こした担当者ではなく、業務手順にあるととらえます。

たとえば、業務手順で、「A、Bを済ませ、Cに確認をとってからDに進むこと」となっていて、あなたがうっかりCの確認を取り忘れたまま、Dに進んでしまったとしましょう。

そのとき、多くの方はきっと、「Cに確認を取り損ねたこと」を自身のミスとしてとらえると思います。しかし、失敗の本質は、そこにはありません。「Cに確認を取っていないのに、Dに進めてしまう仕組み」にあるのです。

あなたは、その仕組みの問題点にまんまとはまったために、やらかしてしまっただけ。保身のための言い訳は、本質的にはまったく必要ないのです。


「実際にミスをしたのに、そんな発想は責任逃れだ」

と思われるかもしれませんが、実はこの発想こそが、同様のミスや失敗を二度と組織が繰り返さないために、もっとも重要なポイントです。

そして実際、このような発想で業界そのものを変革した結果、ミスが極端に減った事例があります。それは、航空業界です。

私たちが乗る飛行機には、「ブラックボックス」が搭載されており、フライトデータとコクピット内のボイスレコーダーのデータが記録されています。

航空業界で重大事故が起こった場合、乗員・乗客が全員死亡することも少なくないということを踏まえると、ここには航空業界のミスや失敗への姿勢がよくあらわれているといえます。

「どんな事故でも、原因を隠さず究明しよう」という発想、「ミスや失敗をきちんと蓄積して次に生かそう」という意識が他の業界よりも強いのです。

実際、あるアメリカの航空会社は、何かミスやインシデントが起こった際も、それを適切に報告すれば、その報告者の責任は問われないことになっているそうです。報告者の名前はどこにも記されることなく、ただミスやインシデントのみが共有され、その後のより安全なフライトの実現に役立てられる、というわけです。


このようにミスや失敗の扱い方を変えたことによって、

・どこかでミスや失敗が1つ起こるたびに、同じミスや失敗が起こる可能性を下げ
られる

・ミスや失敗によって、かえって安全性がもたらされる
・ミスが起こる前より後のほうが、確実にシステムが向上している

というわけです。


業界全体・あるいは組織としてミスや失敗に対する理解があれば、ミスや失敗によって過剰に評価を下げられたり、叱責されたりすることはないはずです。

反対に、ミスや失敗の責任を個人に押し付けてくる業界や組織に所属している場合は、評価が下がったり叱責されたりするかもしれません。しかし、そこで負ったマイナスは、これから先のミスや失敗への対処法で取り戻すことができます。

ミスや失敗に際して、言い訳は不要です。すべての応急処置が終わってから、システムの向上という形で、組織に貢献することを心がけましょう。


なお、ここで登場した「インシデント」という言葉ですが、世界の中で日本だけ、その解釈が違うようです。

英語の意味は、インシデントはアクシデントを含みます。つまり、事故が起こりそうになっただけの場合も、実際に起こってしまった場合も、その両方が「インシデント」です。

一方、日本では、「まだ事故などは起こっていないものの、発生する恐れのある場合」をインシデント、「事故が起こった場合」をアクシデントと区別する例が多く見られます。しかし、この日本の解釈は誤解で、グローバルスタンダードは英語流の解釈です。

このような言葉の理解の違いは、「伝達不良」の大きな原因です。ぜひ留意して使用してください。

・第一報で伝えるべきこと

第一報で伝えるべきは、まず何をおいても「起こったこと」です。

お笑い芸人の宮迫博之(みやさこひろゆき)さんと田村亮(たむらりょう)さんが反社会勢力の宴会に参加し、金銭を受け取っていた事件の記者会見を思い出してください。

当事者2名の会見の前は、宮迫さんのついた嘘と反社会勢力とのつながりの疑惑によって、かなり厳しい意見が寄せられていました。

それが、「事実のみを伝え、謝る」という方針のもとで開いた会見によって、同情的な意見も多く寄せられるようになりました。

第一報では、なるべく臆測や希望、感情を交えず、誠意を持って「起こったこと」を伝えましょう。わからないことはわからないと言っても許されるのが第一報です。

もうひとつ、第一報で伝えるべきは「謝罪」です。ミスや失敗はプラスのきっかけではあるものの、謝らなくていいか、というとそれは別問題。あなたのミスによって、困る人が出た、他人の手を煩わせた、余計な費用がかかったというのは事実なのですから、それに対しては素直に謝りましょう。

ただし、この「謝る」という社会的行動についても、多くの方はその方法を勘違いしているようです。ただ闇雲に頭を下げ、「申し訳ありませんでした」と強く述べても、それは自己中心の謝り方です。

不祥事などの記者会見では、ただひたすら頭を下げる映像が出てくることがありますが、テレビで見ている側からすると、

「結局、何が起こってそうなったの!?」

「遺憾(いかん)だから何なんだ!」

といういら立ちの原因にしかなりません。このような頭を下げる行動では、謝罪の気持ちはまったく伝わりませんし、仮に土下座など勢いのある謝罪で相手の感情を収められたとしても、その時点で満足してしまって、その後の適切な対応への妨げになり得ます。


謝るというのは、前述のとおり、社会的行動です。あくまでも相手の立場に立って、自分のミスを明確に説明することこそが、謝罪の中心です。

ですから、謝罪においては、今現在起こっていることを極力客観的に説明してください。その際、不明点については、不明だということを伝えれば十分です。この時点で無理に説明をしようとすれば、結果的に誤情報になりかねませんので、注意してください。

また、「ごめんなさい」「申し訳ありません」「すみませんでした」という言葉は、これらの客観的な説明の締めくくりの言葉です。「その言葉を言うこと=謝罪すること」だと勘違いしている方は、今すぐ改めたほうがよいでしょう。

同様に、ミスの対応に協力してくれた人がいる場合は、謝意をきちんと伝えましょう。


なお、記者会見においては、起こったことの説明よりも先に、「まず謝る」という流れがあるようです。それは、記者会見を開くような事態は、それ以前に「起こったこと」の全部なり一部なりが、すでに世の中に出ている(たとえば先の宮迫さんと田村さんの例ですと、週刊誌などですでに、事件は報道されていました)ために成り立つ流れだと思います。

私たちの身近で起こるミスや失敗は、通常は、記者にすっぱ抜かれたりしていませんし、情報も広まっていないでしょう。その場合は、記者会見式の「謝る→説明」という流れではなく、「説明→謝る」という流れが大切です。


著=飯野 謙次

カテゴリ:スキルUP

【著者紹介】飯野 謙次(いいの・けんじ)
スタンフォード大学工学博士。東京大学特任研究員。失敗学会事務局長。スタンフォード大で機械工学・情報工学博士号を取得し、Ricoh Corp.へ入社。2000年、SYDROSE LPを設立、ゼネラルパートナーに就任 (現職)。2002年、特定非営利活動法人 失敗学会副会長となる。

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