スキルUP

社会人のミスは組織のもの。主観や感情を排してチームで対処を/ミスしても評価(7)

「やばい!」「しまった!」が最高のチャンスに変わる! 分析力、計画力、学習力、伝達力を上げる「ミス・失敗」の扱い方を、『ミスしても評価が高い人は、何をしているのか?』(飯野謙次著)よりご紹介します(第7回)。

情報発信と謝罪のまとめ

第6回を踏まえると、ここでの情報発信と謝罪は、下記のようになります。

「〇月〇日に発注した××の書類に入力ミスがあり、本来は100ケースでよいものが、現在1000ケース、納品されております。余剰分を返品できるか、またその際の支払いについては、確認次第またご報告いたします。申し訳ありませんでした」

「△△様からお預かりしている××ですが、管理に不備があり破損してしまいました。破損程度については、現在確認中です。わかり次第、対応を相談させてください。申し訳ありませんでした」

なお、先の「影響範囲をカバーできる人第5回)」に「広報」が含まれていない場合でも、そのミスや失敗が組織全体の評判に関わるものであれば、この時点で広報にも知らせておきましょう。

近年、広報での対応は、ますますスピードが求められてきています。その時点で社外に情報発信・謝罪するかも含め、広報の専門家と相談してください。影響をより小さくとどめる助言を得ることができるでしょう。

本人が対処に当たらないほうがいい、という指示は「いじめ」!?

社会を揺るがすような大きなミスや失敗の場合、当の本人がその対処に当たらないほうがよい、という判断が下されることもあります。

たとえば、2002年に長崎の造船所で、建設中だった日本最大級の大型客船、ダイヤモンドプリンセス号が炎上する事故がありました。原因は手順から逸脱した溶接作業による発火です。無線技術による作業要員の管理や迅速な避難によって死傷者は出ませんでしたが、火災以前にその船の建造に関わっていた人はすべて、事故の処理や修復のチームからは外されました。

新たに組まれたチームによって、ダイヤモンドプリンセス号の焼損した部分は完全に取り外され、2年も経たないうちにサファイアプリンセス号としてデビューしました。

実は、ダイヤモンドプリンセス号とサファイアプリンセス号は同時期に姉妹船として建造されていたため、サファイアプリンセス号を急遽仕上げてダイヤモンドプリンセス号として納入し、後に修復されたダイヤモンドプリンセス号をサファイアプリンセス号として、納期の遅れを短く済ませたのです。

このような対応は、人員の層の厚さあってこそですが、それ以上に冷静な経営判断のたまものといえます。当人が対処に関わると冷静な判断が妨げられるという判断のもとになされた采配でしょう。

日常の業務でこれほど大きなミスに遭遇する人はまれかもしれませんが、事務作業などのちょっとしたミスでも、その影響が大きい場合には、当人以外で処理チームを結成したほうがよい結果になることは多くあります。

当人は、「自分でなければ対処できない」と思うかもしれませんが、ミスや失敗はあなた個人のものではなく、組織やグループのものです。より客観的な立場からなされた采配は、処罰でもいじめでもありません。

(4)対応策の検討と実行――ミスや失敗はあくまでも、組織のものと心得る

さて、(3)で処置すべき人が決まったら、ここでやっとミスや失敗の対処を考えることになります。起こってしまったミスや失敗について、チームで対応策を相談し、結論を出してください。


ここでのポイントは、周囲を巻き込むような大きなミス・失敗の場合は、必ずチームで対応策を練ることです。あるいは、あなた自身が対応策を考えるとしても、どう対応するのかを事前に共有してください。

繰り返しになりますが、ミスや失敗はあなた個人のものではなく、グループやチーム、そして組織のものです。その意識を持つことが、ミスや失敗を通して成長していくためには欠かせません。

そして、ミスや失敗が組織やグループのものである以上、組織やグループによってなされた判断には、必ず従ってください。


ここまで、ミスや失敗はあくまで組織のもの、と繰り返してきましたが、ここ数年で起こった不祥事を見ると、経営者すらも根本的に考え方が間違っているケースが見られます。

たとえば2017年に発覚した三菱マテリアルの子会社の検査記録データ改ざんの際、当時の社長は会見で、不正行為を行なった人間のコンプライアンス意識の低さについて触れました。

こういった発言が自身の正当化と保身になると勘違いしてしまったわけですが、結果としては「現場への責任転嫁」として批判を招くこととなりました。


このようにミスや失敗の責任を担当者に押し付けたり、上層や周辺の人たちが「巻き込まれた被害者」面(づら)をして、社会的な信用がさらに低下する、ということはあとを絶ちません。

大きな不正の起こるところには、不正をそのまま見落としてしまう仕組みがあり、その責任は仕組みを許容しているトップにあるというのは、やはり間違いありません。

ミス対処のコツをプライベートで活用するには?

本連載では皆さんを「会社員」と位置づけて、仕事上のミスや失敗の対応についてお伝えしています。しかし、ミスや失敗は仕事を離れたところ――失敗を共有すべき組織やグループがない状態でも起こり得ます。具体的には、交通事故や、日常生活でのトラブルが当てはまります。こういった場合には、どうすればいいでしょうか。


私は、日常生活におけるミスや失敗のほとんどが、組織におけるミスや失敗と同じ対処法で事足りると考えています。

たとえば交通事故の場合。これは明確で、警察が上司の役割を担ってくれます。あるいは日常生活のミスであれば、家族や友人をグループと見ることができるケースがほとんどです。

ミスや失敗に際して、「当人だけ」で当たろうとすると、得てして主観的で感情的になりがちです。ぜひ、「無関係ではないけど、感情的にもならない第三者」とグループの意識を持ってみてください。


著=飯野 謙次

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ミスしても評価が高い人は、何をしているのか?

ミスしても評価が高い人は、何をしているのか?

作者: 飯野 謙次
出版社/メーカー: 日経BP
発売日: 2019-11-14
メディア: 単行本

【著者紹介】飯野 謙次(いいの・けんじ)
スタンフォード大学工学博士。東京大学特任研究員。失敗学会事務局長。スタンフォード大で機械工学・情報工学博士号を取得し、Ricoh Corp.へ入社。2000年、SYDROSE LPを設立、ゼネラルパートナーに就任 (現職)。2002年、特定非営利活動法人 失敗学会副会長となる。

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