スキルUP

最も大切な「よはく」のつくり方。駆け出しプレイング・マネージャーの「時間創造術」/倉下忠憲

プレイングマネージャーになったら、仕事をぎちぎちに詰め込んではNG。部下のトラブルにも落ち着いて対応できる時間的な余裕を常にもっておくためのコツを、倉下忠憲さんに教えてもらいました。

プレイング・マネージャーになると担当業務が増えてくるので、何かしらの管理は必要となります。

しかし、管理しているだけですべての問題が解決するわけでもないのが悩ましいところです。

たとえば、「手持ちの作業 > 手持ちの時間」となっていれば、どれだけ管理をうまくやったところで、いつかはパンクしてしまうでしょう。この不等式を完全にひっくり返すのは難しくしても、できるだけイコールに近づけていきたいところです。

そこで、「時間の作り方」です。

もちろん、「時間を作る」といっても、一日を25時間にすることはできません。時間そのものは操れないこと(≒制約条件であること)が前提です。

さらに、エネルギー系飲料を飲んで奮戦するのも、単に睡眠時間を削っているだけで、時間を創造しているとは言い難いものがあります。むしろそれは、時間の「前借り」のようなもので、のちのち一気に取り立てが(しかも利子がついて)やってくることに注意しておきたいところです。

二つの「時間作り」

さて、時間そのものが動かせない以上、できることは二つしかありません。

・手持ちの作業にかかる時間を減らす
・手持ちの作業そのものを減らす

「手持ちの作業にかかる時間を減らす」は、ようするに作業の効率化です。ある作業に30分かかるところを、15分でできるようになれば、15分の時間が「捻出」されます。実際は、その15分を別の作業に当てられます。

おそらく現場の仕事でもさまざまな効率化を進められてきたでしょうから、ここでわざわざ取り上げる必要はないかもしれませんが、さしあたり事務作業に関しては効率化が図りやすいので、徹底的にそれを進めていきましょう。ショートカットの活用、再利用可能なテンプレートの作成、必要に応じて即座に取り出せるアンチョコや虎の巻の整備は、中長期的な時間の捻出に効いてきます。

また、使用する資料や情報に関しては、Evernote等のツールで一元管理しておき、検索で一発に引き出せるようにしておきましょう。複数の案件に関わるようになってくると、そうした情報の検索が地味に積み重なっていきます。すぐに見つけられるようにしておくことは有用です。

さらに、マクロやプログラミングが扱えるなら、処理の自動化も検討しましょう。ExcelならVBA、ファイル処理ならRubyやPython、ネット系ならJavaScriptなど、選択肢はたくさんあります。

手持ちの作業そのものを減らす

上記のようなことを積み重ねて、地味に時間を捻出していくわけですが、それだけでは足りません。別の、そして少しひねった視点が必要となります。具体的に言えば、「自分のやること」を減らしていくことが必要です。

一つには、やることそのものを減らしてしまえば、効率化よりも大きい時間の捻出が可能な点があります。30分の作業を効率化して10分短縮するよりも、その作業をなくせば30分の時間が生まれます。非常に簡単です。

しかし、それだけではありません。「自分のやること」を減らしていかないと、どうしてもマネージャーの仕事はうまく回らなくなるのです。

考えてみてください。マネージャーは仕事について裁量を持ちます。だから、増やそうと思えばいくらでも仕事(≒やるべきこと)を増やしていけます。つまり、手持ちの作業は増大していきます。作業を効率化すれば多少はバランスできるででしょうが、そうやって生み出した時間をまた別の「やるべきこと」に使っていたのでは、いつまで経っても「よはく」は持てません。

そして、その「よはく」こそが、マネージャーにとって大切なのです。

「よはく」の価値

マネージャーは、自分で自分の仕事をするだけでなく、他人の仕事をフォローもしなければなりません。躓いている人を助けたり、トラブルに対応したりといった作業も「自分の仕事」に含まれるわけです。

そして、たいていそうした事態は、突然やってきます。「そろそろ○○くんがトラブルを起こすな」と予知するのは難しいでしょう。つまり、トラブルの発生そのものを計画することはできないわけです。

ではもし、「やること」が過剰に詰まっていたらどうなるでしょうか。そんな状況では、ごく小さいトラブル一つでも、計画は破綻してしまいます。ぱんぱんに詰まっている袋に、さらに荷物を詰めるような行為なのですから当然の帰結でしょう。

これを避けるには、時間のバッファー(緩衝材)が必要です。「やること」がない時間、あるいは比較的優先順位が低い行動に割り当てられた時間です。そうした時間を持っていれば、突発的なトラブルに対処してなお、計画通りに進めるようになります。

プレイング・マネージャーが効率化を進めたり、やることを減らしたりするのは、そのような時間を確保するためです。決して、手持ち時間における作業量を最大化させるためではありません。

プレイヤーにおいては、「作業量の最大化」の視点は有用に働いたかもしれませんが、マネージャーでは視点を切り替える必要があります。生産性のない時間の確保が、全体の運用を最適化させるのです。

まとめ

作業の効率化は有効ですし、それを進めるのは楽しくすらありますが、プレイング・マネージャーの仕事としてはそれだけでは充分ではありません。

仕事を減らすこと、特に「自分の仕事」を減らしてバッファーを確保することが大切になってきます。そのためには、他の人に仕事を任せることも必要になるのですが、「自分でやった方が早い病」にかかっている人にはなかなか難しいかもしれません。

そうした話については、次回で考えてみることにしましょう。


倉下 忠憲

カテゴリ:スキルUP

【著者紹介】倉下 忠憲(くらした・ただのり)
1980年、京都生まれ。ブログ「R-style」主宰。コンビニ業界で働きながら、マネジメントや時間・タスク管理についての研究を実地的に進める。その後、執筆業に転身。現在は書籍執筆やメルマガ運営を主とする物書き。著書に『EVERNOTE「超」仕事術』『Scrap box情報整理術』(C&R研究所)、『ハイブリッド発想術』(技術評論社)などがある。自分で出版を行うセルフパブリッシングも意欲的に取り組んでいる。

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