スキルUP

停滞待ったなしの日本で“無双”するには?『働き方 完全無双』レビュー/けいろー

停滞しつつある日本社会において、若い世代に必要な「戦わずして勝つ」ための考え方を示してくれるのが、『働き方 完全無双』(ひろゆき著)。ライターのけいろーさんが、そのポイントを紹介します。

人生における「敵」とは?

突然ですが、人生における「敵」って何だと思いますか?

「敵」と書くと穏やかではありませんが、何も特定の個人を指すものではありません。ここで考えたいのは、概念的な意味での「敵」のような存在。自分がどうにかしたい、打ち倒したいと考えている、日常生活における諸問題を指すものです。

たとえば、人間の過剰な欲望や感情を「罪」と見なすような宗教の視点、自分の怠惰や嫉妬──ネガティブな感情をどうにかしたいと考えている人は、少なからずいるのではないでしょうか。あるいはもっと身近なところで、「糖質はダイエットの大敵!」といった場面で「敵」を見出している人もいるかもしれません。

では、入社して間もない若手社員にとっての「敵」とは何でしょうか。

持論になりますが、20代にとっての「敵」は「停滞」だと考えています。

意欲も体力も満ち足りている若い時期は、「何もしない」でいるのが何よりも怖い。仕事をサボり、勉学を疎かにし、向上心を忘れて娯楽に興じるばかりでは、進歩も何も得ることはできません。時には休息も必要ですが、せっかくの若い時期を無為に過ごしてしまうのはもったいないように思います。

もちろん「遊ぶのが悪い」というわけではありません。娯楽から得られる学びだってあるでしょうし、羽を伸ばしてリフレッシュすることが、優れたアイデアやモチベーションにつながることもあるはず。僕自身、自分のことは学ぶ意識の低い、怠惰な人間だという認識を持っていますが……。それでも普段は、停滞しない程度にがんばりつつ、遊べるときには全力で遊ぶことでバランスを取っているつもりです。

ところがどっこい。そういった個人の努力とは裏腹に、日本社会を俯瞰すると、「停滞」は避けられないという見方もあります。この国は今後、経済的に苦しくなっていくことが明らかであり、どれだけ個人が足掻こうが、日本の停滞を止めるのは不可能だというのです。

いつ仕事がなくなるとも知れず、自身の能力がこれから先も通用するとも言えず、明るい未来が見出せず、漠然とした不安が付きまといがちな昨今。自分のことだけでもいっぱいいっぱいなのに、国単位で見てもお先真っ暗。なんとも世知辛い世の中で、僕らはどのように立ちまわればいいのでしょうか。

不安や停滞といった「敵」と戦おうにも、個人にできることは限られています。平均寿命が延び、価値観が変わり、次々に新しい技術が登場している現在、個々の問題を考えるには、社会はあまりにも複雑になってしまいました。「敵」を倒そうにも、その全容がまったく見えないのです。

なればこそ今、必要なのは、「戦わずして勝つ」ための考え方。

『働き方 完全無双』は、その「戦わない」選択肢のひとつとして、人生の「抜け道」を示してくれる本です。著者は、2ちゃんねるの元管理人としておなじみのひろゆきさん。お金がなくても幸せに生きるための考え方を示した前著『無敵の思考』に対して、今回は「働き方」について説いた内容となっています。

運ゲーの人生を幸せに生きるために、ワンチャンを狙う

『働き方 完全無双』というタイトルからして、本書のテーマは明確。どのような場面においても“無双”するための、ビジネスシーンにおける“働き方”を示した内容。きっと具体的なノウハウがたくさん提示されており、読んだ瞬間から仕事に役立つ知識が得られるのだろう──と、そんな印象を受けた人もいるかもしれません。

しかし、実際にページをめくってみると、本書が提示しているのは「個人として、ワンチャンを狙いながら幸せを目指す」生き方。王道ではなく邪道、直球ではなく変化球、最短距離ではなく回り道を志向する、一般的な「働き方」のビジネス書とは一線を画した内容です。──そりゃそうです、なんたって“著・ひろゆき”なのですから。

「ワンチャンを狙う」という言葉にもあるように、筆者は「人生は運ゲーである」と捉えているような節があります(あくまで個人的な感想です)。

第1章のタイトルからして「能力なんてものは存在しない」ですし、世間的には「成功」と捉えられている2ちゃんねるですら、ひろゆきさん自身は「たまたま、そこにいたから勝てた」のだと断言しているほど。「勉強すれば成功する」「努力すれば夢は叶う」などという聞こえの良い言葉は一切なく、多くの事象は「たまたま」に帰結すると書いています。

では、そんな偶然性が支配する現代社会において、何をもって“無双”しようというのか。──答えは簡単です。「たまたま」で成功が決まるなら、その「たまたま」を狙えばいい。人生が運ゲーだというのなら、「運」のパラメータを底上げすればいいのです。

少し前であれば、仕事に必要なのは「スキル」でした。専門職にせよ総合職にせよ、何らかの能力に秀でた人が評価される社会。ある仕事において必要な技術や、特定の分野で成功するのに欠かせない能力は明確であり、その多くは努力によってカバーすることができました。

しかし、その分野に参入する人が増えれば、スキルの価値は当然下がります。技能を会得する方法はマニュアル化され、真似すれば誰でも身につけられるようになり、持っていることが当たり前になる。それどころか、人工知能に取って代わられるようなケースすら出てきています。

つまり、横並びでは“無双”しようがないのです。同じことをしている集団の中から、個人が抜きん出るのは難しい。しかも今後、停滞がほぼ確定している環境下で同じ働き方を続けていては、いずれ共倒れしてもおかしくありません。「みんな同じ」では、その先にあるのは「みんなで負ける未来」だと考えられます。

だからこそ必要なのは、邪道であり、変化球であり、回り道であるわけです。

まずは、「社会」という大きな単位ではなく、「個人」という小さな単位で考える。そして、競争に勝つのではなく、周囲と比べて相対的に有利になるべく、自分を「たまたまそこにいる」状況へと導く。本書が紐解くのは、そうやって “ワンチャンを狙う” ための立ち振る舞い方です。

個人としてワンチャンを狙うための「攻め方」を説いた1章に始まり、企業や社会に殺されないための「守り方」を教えてくれる2章を経て、3章では経営者視点の「企業の論理」を解説。終章では「日本の生き延び方」を提案するという、ミクロからマクロへ向かう構成となっています。

「競争から降りる」ことで幸せになる

「ワンチャンを狙う」「相対的に有利になる」といった表現が象徴的な本書。それは、ともすれば自分本位な、周囲を顧みず、ずる賢く立ちまわろうとする考え方なのではないか──と、疑念を抱いた人もいるかもしれません。

たしかに、一部はそう読めなくもないのですが……。でも1冊を通して読むと、そのような印象はまったく受けません。基本的には弱者の目線から諸問題を切り取りつつ、同時に全体を俯瞰して述べた論説もある。働きたくない人目線で「守り方」を提示したかと思えば、働きたい人目線での「攻め方」も書かれている。そんな1冊になっています。

たとえば、「従業員を都合よく酷使するブラック企業は根絶やしにするべき」と述べつつ、別の項目では、「働くことが好きな人の活躍できる環境は守っておいたほうがいい」と書いているように。「働き方」ひとつとっても多角的に取り上げているため、昨今の労働問題の論点を整理するのにも役立つように感じました。

また、読んでいて印象的だったのが、「『競争相手ではない関係』になる」という言葉。これは、日本という国単位で「戦うことをやめる」ことを推奨する言説のなかに書かれていた一文なのですが、それだけでなく、本書全体に通底するテーマであるようにも感じました。

個人目線では、「イス取りゲームではなく『イスを増やす人』を応援する」。日本目線では、「パイを奪い合う競争から降りて、パイを増やすほうの道を選ぶ」。本書では、たびたびこのような表現が登場します。

競争の渦中で漁夫の利を狙うという意味での“ワンチャン”ではなく、競争をやめて、より良い環境に身を置こうとすること。その「たまたま良いところにいた」状況に居合わせる確率を高めようとすること。──それが、本書の言う“ワンチャン”なのではないかと。

自分の幸せのために誰かの居場所を奪うのではなく、自分がたまたま居合わせた場所が「居場所」になるような状態を目指す。同時に、居場所を増やそうとしてくれている人は全力で応援するし、新しい技術や取り組みには関心をもって飛びこむようにする。

多様性を認め、戦うことをやめるよう促す本書。「働き方」と題した本ではありますが、労働と直結した各々の「暮らし方」を見直す、ひとつのきっかけとなりうる内容だと感じました。「日本がヤバい」で始まる本書ですが、最後には「日本はこの方向に向かえばおもしろそう」と思える、前向きな「停滞」のススメも提案しています。

現状に絶望するでなく、必要以上に煽るでもなく、冷静に事実とデータを示したうえで、一人ひとりが幸せに生きるための「働き方」を示してくれる。将来に対する漠然とした不安や、自身の現在の仕事への疑念、捉えどころのない停滞感や倦怠感を感じている人に、今まさに読んでほしい1冊です。

 

けいろー

【著者紹介】けいろー
フリーライター。ネットカルチャーを愛するゆとり世代。新卒入社したメーカーを退職後、趣味で始めたブログ「ぐるりみち。」経由で仕事をもらえるようになり、ノリと勢いで独立。本、グルメ、街歩き、旅行、ネット、アニメなどに関心あり。執筆実績として『HATSUNE MIKU EXPO 2016 Japan Tour』公式パンフレットなど。バーチャルな存在になりたい。

【書籍紹介】
『働き方 完全無双』

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