怒りの使い方、間違っていませんか?/アンガーマネジメント超入門【前編】

私たちの日常は、ままならないことであふれています。急いでいる日に限ってタクシーが道を間違える。後輩に注意したら逆ギレされ、上司からの無茶振りで仕事が激増する。お弁当を食べようと思ったら、箸がない……!
でもムカムカ、イライラしていては仕事の効率は落ちるし、周囲には怖がられるばかり。うっかり怒りを暴発させてしまえば、人生が変わってしまうような事態だって考えられます。
さあ、アンガーマネジメントの第一人者、安藤俊介さんから「怒りをコントロールする技術」を学びましょう!(取材・文:浦上藍子)
怒りに“ハイジャック”されたまま行動すると大損する!
怒りは、人間が生きるうえでなくてはならない感情です。危険を回避し、身を守る行動がとれるのも、怒りという感情があるからこそ。怒り自体は、決して悪者ではありません。
大事なのはその表現の方法。怒りのままに行動すれば、積み上げてきた信頼関係やキャリアを壊してしまう可能性もあるからです。
カッとなって、相手を口汚く罵ってしまった。
逆上して、「出ていけ!」「今すぐ辞めろ!」など、思ってもいない発言をしてしまった。
怒りにまかせて、つい手を上げてしまった。
これらはすべて、怒りにハイジャックされた状態で行動してしまったことが原因。強い怒りの感情にのっとられて、自分自身がうまく操縦できなくなってしまっているわけです。
あとになって「なんであんなことを言ってしまったんだろう」「もっとこうすればよかったのに……」と後悔しても、口から出た言葉は取り返せません。
怒りのままに行動する人は、そのたびに周囲との軋轢を生み、信頼関係を損なってしまうリスクを抱えているようなもの、と言えるでしょう。
怒る目的は「リクエストを伝える」こと
ここでもう一度考えてみたいのは、私たちはなぜ怒るのか、ということです。多くの人は、「怒ることこそ、最も強力に自分の要求を伝えることができる手段である」と考えています。これが実は大きな勘違い!
怒りの奥には、必ず伝えたいことがあるはずです。
「ミスがあったらすぐに報告してほしい」
「時間に遅れたら謝ってほしい」
「もっと能動的に意見を言ってほしい」
こうしたリクエストを伝えることが第一目的であり、相手を反省させるためでも、へこませるためでも、ましてや自分がせいせいするためでもない、ということをまず認識する必要があります。
どうしたらリクエストが通るだろう? と考えれば、やみくもに怒鳴りつけても効果は薄そうだ、ということはすぐにわかりますね。
リクエストを伝えず、自分の感情ばかりを押し付ける怒り方は、怒り下手の最たるものです。
「ムカついた!」「お前のせいで恥をかいた!」「イライラさせるな!」
こんなふうに感情をぶつけられても、相手は何をすればいいのかまったくわからず、責められた、否定されたという嫌な印象だけが残ります。こんな怒り方は、相手にとっても自分にとって建設的なものではありませんね。
反対に、リクエストをきちんと伝える怒り方ができれば、相手は自分が何をすればいいのかがわかり、状況を改善することができます。叱られたことで成長につながったと、より深い信頼関係で結ばれるきっかけにもなるでしょう。ビジネスの場でも、家族や友人の間でも、正しく怒ることができれば、それは決してマイナスにはなりません。
むしろ、部下を持ったり、チームをまとめたりする立場になれば、きちんと怒ることが重要な仕事のひとつになる、と言えるでしょう。
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安藤 俊介
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一般社団法人日本アンガーマネジメント協会代表理事。アンガーマネジメントコンサルタントとして、企業、官公庁、教育委員会、医療機関などで数多くの講演、研修などを行う。2017年4月には、厚生労働省「職場のパワーハラスメント防止対策についての検討会」委員に就任。『アンガーマネジメント入門』、『イライラしなくなるちょっとした習慣』、『叱り方の教科書』など著書多数。9月に最新刊『怒りが消える心のトレーニング』を上梓。
■HP:日本アンガーマネジメント協会
【新刊紹介】[図解] アンガーマネジメント超入門 怒りが消える心のトレーニング
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初めて学ぶ方の1冊目に、また、これまでアンガーマネジメントを学んだ人は振り返りに、自信を持っておすすめします。日本アンガーマネジメント協会公認ファシリテーター養成講座の課題図書にも選定。