スキルUP

プレゼンで目指すべき「3つのゴール」とは? 『世界No.1プレゼン術』レビュー/けいろー

準備することが多く、当日の不確定要素も多いプレゼンテーション。成果をあげるために、プレゼンを三つのゴールに分けて解説した書籍『世界No.1プレゼン術』について、けいろーさんが紹介します。

「思うようにプレゼンができなかった……」と落ちこんだ経験のある人は、少なからずいるのではないでしょうか。何か大きな失敗をしたわけではなくても、「もう少しうまく話せたんじゃないか」と、モヤモヤが残るあの感覚。

用意した原稿を読むだけになってしまった。聴衆のほうを見て話せなかった。意味のない口癖が漏れてしまった。時間配分を間違えた――。

そのような小さな心残りが、「うまくできなかった」というネガティブな感情に結びついてしまうような。全体を見れば必ずしも悪くはなかったのに、振り返ると後悔しかない。慣れないプレゼンを終えたあとには、そのようなモヤモヤがしばしば残るものです。

というのも、プレゼンテーションには意識しなくてはならないポイントが多すぎるんですよね。

プレゼンでは事前にスライドを作りますが、伝えたい情報を盛りこむだけでは不十分。時間配分を意識し、見やすいデザインを検討し、聴衆に伝わるメッセージを考える必要がある。企画書などの文章を書くのとは異なり、スライドでは複数の要素を並行して考えなければなりません。

さらにプレゼン本番ともなれば、気にかけるポイントは無数にあります。口調やスピードといった話し方、目線や姿勢といった自分の立ち振る舞いを意識しつつ、時間配分やスライドを進めるタイミングも気にかけながら、会場の反応も考慮して話さなければならない。途中で機材トラブルがないとも限りませんし、どんな質問が飛び出してくるかわからない質疑応答も待っている。

特に普段はあまり人前で話す機会のない人ほど、胃が痛くなるような思いで準備を進め、プレゼン本番を迎えるのではないでしょうか。であれば、終了後には「終わったー!」という達成感もそこそこに、「でも、あそこはうまくできなかっな……」などと、後悔の念がわいてきてもおかしくないように思います。

さて、本記事で紹介する『世界No.1プレゼン術』は、そんな悩みを解消してくれる1冊です。年200回以上のプレゼンテーションをこなし、社内外で支持を集めるプロの語るプレゼン術。大勢の前で話す場面に限らず、効果的な「伝え方」を学ぶことのできる内容です。

そもそも「プレゼンテーション」とは?

一口に「プレゼン」と言っても、考えられるケースはさまざま。数百から数千の聴衆を前に話すような機会はそうそうないでしょうが、社内の会議で数十人の参加者を前に発表するとか、社外に向けた説明会で壇上に立って話すという機会はあるかもしれません。

また、何も「複数人を前に話す」だけにとどまらず、個人間のコミュニケーションにおいても「プレゼン力」が必要とされる場面は多々あります。自社の商品を売りこむ営業職はその最たるものですし、社内で企画を提案する際にも欠かせません。仕事において特に重要なスキルのひとつ──それが「プレゼン力」であると言えるでしょう。

ですが、そもそも「プレゼン」とはどういうものなのでしょうか。

なんとなく「大勢を前に話す」こと、そのなかでも特に「何らかの提案や意見を発表する」ことを指してそう呼んでいる印象もありますが、それだけでは説明不足です。「用意した原稿を読む」だけでは、プレゼンの目的を果たしたとは言えません。

プレゼンで目指すべき「3つのゴール」

では、プレゼンのゴールはどこにあるのでしょうか。世界に10万人のスタッフを抱えるマイクロソフト社、その頂点に立つ賞を「プレゼン」によって受賞した経験のある筆者・澤円さんによれば、プレゼンには次の3つのゴールがあるのだそうです。

①聴いた人がハッピーになる
②聴いた人から行動(決断)を引き出す
③聴いた内容を他人に言いふらしたくなる

ここでは「営業」を例に挙げて考えてみましょう。営業職の仕事といえば、自社の商品やサービスを顧客に売りこむこと。商品の特徴を紹介し、他社よりも優れている点を示し、あの手この手の営業トークで買ってもらう──というのが、世間的な「営業」のイメージなのではないでしょうか。

しかし当然ながら、それだけではお客さんは見向きもしてくれません。「最新の技術を取り入れている」「他社よりもスペックが優れている」といった話をしたところで、顧客の心は動かせない。いま使っている商品に満足しており、特に困っていないのなら、新しいものをわざわざ買う必要がないからです。

だからこそ、営業職には「提案力」が不可欠。

商品の価値を伝えるのではなく、それを使うことによって得られるメリットを示し、より良い生活・体験を顧客に「提案」すること。メリットを具体的にイメージしてもらうことで初めて、「じゃあ買ってみようかな」と興味を持ってもらえるのです。さらに、実際に利用してみた結果がイメージどおりであれば、「この商品、よかったよ!」と周囲の人に伝えてもらえるかもしれません。

以上のような営業職の考え方は、先ほどの「3つのゴール」とも合致します。

その商品によって得られるメリットを顧客に提示することで(①)、商品を購入してもらい(②)、あわよくばポジティブな口コミを広げてもらう(③)。営業職に必要な「提案力」を、そのまま「プレゼン力」と言い換えても良さそうです。

このような「3つのゴール」を目指す考え方は、営業職にだけ当てはまるものではありません。職場の会議でも、週末の勉強会でも、さらには日常的なコミュニケーションにおいても同様です。これら「3つのゴール」を想定して話すことによって、自分が望む成果を自然と引き寄せられるようになる。

それが、本書の目指すところでもあります。

本質的な「伝え方」に注力したノウハウ本

本書が「プレゼン術」の本として優れているのは、「目的と伝えたいことがはっきりしている」という一点に尽きます。先ほど挙げた「3つのゴール」を中心に据え、その目的を達成するために必要な要点にのみ絞って取り上げているのです。

逆に「魅力的なスライドの作り方」「聴き手の印象に残る会話術」といった、小手先のテクニックについてはあまり言及していません。触れるとしても、その方法が「3つのゴール」の達成に関わってくる場合のみ。それ以外のノイズになりそうな情報は、極力省いているような印象を受けました。

たとえば「スライドの作り方」に関して本文で触れられているのは、数字を用いた説明の有用性、たとえ話がもたらす効果、ストーリーを盛りこんだ構成の考え方など。いずれも「② 聴いた人の行動を引き出す」にあたって効果的な方法だと言えそうですね。

しかし一方で、一から十まで懇切丁寧に説明するような「作り方」や、詳細な「デザイン」については書かれていません。取り上げているのは、目的を達成するために必要となってくる「ビジョン」や「構成」といったポイントが中心。スライドはあくまで手段としてしか捉えておらず、それよりも本質的な「伝え方」に注力して説明した内容となっています。

本書ではほかにも、プレゼンにおける「核」の作り方、構成を考えるにあたっての基礎、話し方の極意──といったトピックを挙げてプレゼン術を紐解いていますが、そのどれもが「伝え方」に焦点を当てたもの。その延長線上には常に「3つのゴール」があることがわかる、一本筋の通った内容です。

目的がはっきりしているので読んでいて迷うこともなく、それでいて実践的。知識ゼロの状態から学ぼうと考えている人の「軸」となり得る、最初の1冊に適したプレゼンの入門書。

それがこの、『世界No.1プレゼン術』という本です。

本記事の冒頭で「プレゼンには意識するべきポイントが多すぎる!」と書きましたが、スライド作りや話し方をバラバラに考えていれば当然、混乱もしようというものです。迷わないために必要なのは、プレゼンにおける明確な目的。「3つのゴール」という明確な目的を見定めたうえでプレゼン術を紐解いていく本書は、そのような問題を解消するのに役立つはずです。

はっきりとしたゴールが見えれば、あとはそこを目指して走るだけ。苦手意識を持っている人にこそおすすめしたい、プレゼンの「走り方」を教えてくれる1冊です。

けいろー

【著者紹介】けいろー
フリーライター。ネットカルチャーを愛するゆとり世代。新卒入社したメーカーを退職後、趣味で始めたブログ「ぐるりみち。」経由で仕事をもらえるようになり、ノリと勢いで独立。本、グルメ、街歩き、旅行、ネット、アニメなどに関心あり。執筆実績として『HATSUNE MIKU EXPO 2016 Japan Tour』公式パンフレットなど。バーチャルな存在になりたい。

【書籍紹介】
『マイクロソフト伝説マネジャーの 世界No.1プレゼン術』

StudyWalker「スキルUP」カテゴリの記事を読む
カテゴリ:スキルUP

関連記事

  • 「オシャレ? なにそれおいしいの?」という人に読んでほしい〜『ユニクロ9割で超速オシャレ』/タロログのビジネス書読んで試してみた
  • 停滞待ったなしの日本で“無双”するには?『働き方 完全無双』レビュー/けいろー
  • 社会人の基礎体力! 実務で役立つ「文章術」を身につけるために読むべき3冊/けいろー
  • 「メンタル」を上手にコントロールする方法とおすすめ本3冊/けいろー
  • NEW
    その「英語の常識」、間違ってます クイズ

    その「英語の常識」、間違ってます クイズ

  • 地球の雑学クイズ

    地球の雑学クイズ

  • 中学3年間の英語で身につける日常会話テスト

    中学3年間の英語で身につける日常会話テスト

  • 思考力、教養、雑学が一気に身につく!  東大王・伊沢拓司の最強クイズ100

    思考力、教養、雑学が一気に身につく! 東大王・伊沢拓司の最強クイズ100

  • 突然アタマが鋭くなる! 最強京大クイズ

    突然アタマが鋭くなる! 最強京大クイズ

  • 通学派vsオンライン派 英会話の勉強を始めるならどっち?

    通学派vsオンライン派 英会話の勉強を始めるならどっち?

スキルUPの人気記事ランキング

  • 借金玉氏に聞く、発達障害でも「食える人」と「食えない人」の差とは?【前編】

  • 食欲がわかない場所/北欧女子オーサのニッポン再発見旅⑨

  • 芸妓さんの雰囲気にズキュン!/北欧女子オーサのニッポン再発見旅⑩

  • ゆるキャラ文化の源流を発見!/北欧女子オーサのニッポン再発見旅⑦

  • 「おにぎりは温めますか?」の不思議/北欧女子オーサのニッポン再発見旅⑧

{ カテゴリ別ランキングを見る }

ページトップに戻る