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「読むだけ」で終わらせない! “ノウハウ本”の活かし方とは? プレイング・マネージャーの読書術③/倉下忠憲

読書した内容を実践につなげるためには、読んだ内容を自分なりの言葉でまとめ、実践を習慣化する必要があります。今回は倉下忠憲さんがその具体的なステップを紹介します。

前回は、プレイング・マネージャーの読書として、読み込んでいきたい本のタイプとその目的を確認しました。振り返ると次の4つの目的が想定できます。

・使える知識を身につける
・実践できるようになる
・ある程度説明できる
・ただ知っている

ここで今回注目したいのは、ふたつ目の「実践できるようになる」です。これは、ビジネスに関するノウハウ書を読む場合の目的になります。

なにせ、そうしたノウハウを「ただ知っている」だけや「ある程度説明できる」だけでは効果がありません。実践できるようになってこそ、本を活かせるというものです。

とは言え、あなたが稀有な才能を持つのでない限り、本を一読しただけでその内容を実践できることはないでしょう。その目的に合わせた、読み方が必要になります。今回はそれを紹介してみましょう。

STEP.1 まず、読む

当たり前ですが、まず読みましょう。1冊の本を頭から最後まで目を通します。

読書の指南書には「重要そうな部分だけをピックアップして読む」といったメソッドが紹介されていますが、それはある程度本を読み慣れた人が使える方法なので、あまり参考にしないほうがよいでしょう。

逆に言えば、ノウハウ書を読み慣れれば、大切なことがどこに書かれているのかの目星が付くようになるので、そうなれば摘み食いならぬ摘み読みでも十分です。

しかし、慣れるまでは愚直に最初から最後まで読み通すのが無難です。幸いなことに、最近発売されているノウハウ書は、たいていものすごく読みやすく書かれているので、読み通せなくて挫折するという心配は小さいでしょう。

ともかく、ざっとでも良いので、1冊を読み切ります。

STEP.2 中身をまとめる

本を読み終えたら、その内容を自分でまとめてみましょう。

ほぼ断言できることですが、本を読み終えた直後であっても、その本の中身はおぼろげにしか思い出せないでしょうし、1日経つとさらに怪しくなります。でも、それで構いません。むしろちょっと忘れているくらいでちょうど良いのです。

忘却曲線という考え方がありますが、ちょうど忘れるタイミングくらいで、「もう一度思い出す」ことで記憶は強まります。だから、読了後に少し時間が空いても構いません。とにかく、一度、本の中身を自分でまとめてみます。

まとめる際、使うのはアナログでもデジタルでもなんでも構いません。

アナログなら、大きめのスケッチブックやA4サイズの用紙に1枚にまとめるのがコツです。ノートブックの複数のページにわたってまとめようとすると、内容が散漫になってしまいます。1ページに概略をまとめるだけで十分です。その場合は、用紙は多少制約があったほうがうまくいきます。

本の概略を1ページにまとめた例。
本の概略を1ページにまとめた例。

デジタルなら、マインドマップ系ツールを使うのがよいでしょう。テキストで書いていってもいいのですが、これもノートブックと同じように、話が散漫になり要点が見えにくくなります。なので、テキストの場合は、1000文字や2000文字といった制約を決めてやってみるのが良さそうです。

STEP.3 ノウハウを抜き出す

本の内容を簡単にまとめ終えたら、その中から自分が習得したいノウハウを選び、その部分だけを抽出したメモを作ります。本の文脈から「ノウハウ」だけを引き抜いた、自分だけの「虎の巻」を作るわけです(※この手法に関しては本田直之さんの『レバレッジ・リーディング』(東洋経済新報社)が参考になります)。

そのノウハウが、他の環境に依存しない独立的なノウハウであるならば、本の文脈から抜き去っても十分に通用するでしょう。というか、そういうものをノウハウ(技術)と呼ぶのです。ある環境にいる人しか使えないなら、それはノウハウではなく技能とか特殊なスキルとか、そうしたものになってしまいます。

よって、ノウハウであれば、脱コンテキストして、自分なりに「虎の巻」を作っても大丈夫なのです。

STEP.4 日常にセットする

あとは、そうして作成した「虎の巻」を、自分がよく目にする場所に置いておきましょう。

アナログであれば、ノートや手帳に書いておくか、プリントアウトしたものを挟み込んでおけばよいでしょう。直接書かずに、付箋に書いて、表紙かその近くに貼っておく手もあります。

デジタルであれば、EvernoteやOneNoteのようなノート系アプリ(できればクラウドが望ましいです)か、WorkFlowyのようなアウトライナー、そしてScrapboxのようなwikiシステムに書き込んでおき、よく目に触れるように上部にセットしておきましょう。上部にセットできない場合は、リマインダーを設定する手もあります。

どのような手法を使っても構いません。とりあえず、自分が日常生活で目に触れる場所に、その「虎の巻」を置いておき、折に触れて見返して、「そうだ、これをやろうと思っていたのだった」「そうだった。このやり方を実践するのだった」と思い返せるようにしましょう。

そこから生まれる実践の繰り返しによって、ようやくノウハウというのは身の内側に浸透していきます。

効果が上がらないときは、他のノウハウを探す

上記の4つの手順を踏めば、本の中にあったノウハウを、自分の脳にインストールできるようになります。

ただし、これは極めて理想的な状態を想定しています。きっちりまとめを作り、それを何度も見返して実践しているのに、効果が上がらないことは当然起こります。その場合は、たいていノウハウに問題があります。

そうしたときは、一度原典に戻って、全体を再読してみてください。読み逃していた文脈が見つかるかもしれません。

先ほど、こんなことを書きました。「他の環境に依存しない独立的なノウハウであるならば」。そうなのです。そのノウハウが、何かの環境に依存している場合は、他の人が真似してもまったく効果が上がりません。ネットのジョークに「ただしイケメンに限る」というのがありますが、あれと同じです。

もともとお金持ちだった、もともと容姿に恵まれていた、もともと優れたスキルがあった、もともと気の良い友人が多かった、もともと住んでいる場所が良かった。だからその「ノウハウ」でうまくいった、ということが起こるのです。

そうして語られるノウハウは、一見ノウハウのように見えて、他人にはほとんど再現性がありません。そうしたものをどれだけ努力して取り組んでも効果は挙がらないでしょう。

そういう場合は、あっさりと「自分には縁がないものだった」と見切りをつけて、別のノウハウに取り組むのが良いでしょう。せっかく虎の巻を作ったんだからとこだわる必要はありません。

むしろ、そうした「無駄足」を踏み重ねることによって、「ノウハウ」と「一見ノウハウに見えるもの」の見分けも付くようになってきます。これだけ大量にノウハウ本が溢れる時代ですから、その目利き力は意外に役立つかもしれません。


倉下 忠憲

カテゴリ:スキルUP

【著者紹介】倉下 忠憲(くらした・ただのり)
1980年、京都生まれ。ブログ「R-style」主宰。コンビニ業界で働きながら、マネジメントや時間・タスク管理についての研究を実地的に進める。その後、執筆業に転身。現在は書籍執筆やメルマガ運営を主とする物書き。著書に『EVERNOTE「超」仕事術』『Scrap box情報整理術』(C&R研究所)、『ハイブリッド発想術』(技術評論社)などがある。自分で出版を行うセルフパブリッシングも意欲的に取り組んでいる。

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