スキルUP

良きプレイング・マネージャーはどうやって部下を育てるのか?/倉下忠憲

部下が成果を挙げ、成長していくためには、マネージャー側が適切な育成の手順を踏んでいく必要があります。今回は倉下忠憲さんが、プレイングマネージャーのための部下育成術を解説します。

以前の記事で、「マネージャーになれる人とそうでない人の違い」について紹介しましたが、その中で登場したのが、「他人の成果に興味を持つ」という特徴です。

自分が直接何かをするのではなく、他の人に成果をあげてもらう。しかも、一人ではなく、チームで成果をあげてもらう。そのような考え方が重要になってきます。

当然そのためには、人を適切に育成していかなければなりません。そこで今回は、育成を行なう上でのコツを紹介していきます。

場数サイクルを回す

まず具体的な育成方法ですが、これは実はかなり単純で、「場数を踏ませる」ことが一番効果があります。

理念や理論をいくら説いても、それだけで実践力が上がるわけではありません。むしろ、知識ばかりが増えて身動きが取れないような状況も起こりえます。それはできれば避けたいところです。

もちろん、最初にきちんと理屈やコツを教えておくことは大切ですが、人間の脳はまったく新しい情報を簡単には受け入れてくれません。よく言われる「何がわからないのかが、わからない」というのがだいたいのスタートラインです(そのため、「わからなかったら聞いてくれ」というアドバイスもあまり役には立ちません)。

よって、最初に理屈やコツやノウハウを一通り教えたら、そのまま実戦に「放り込んで」しまうのが一番です。

当然、そのような状況でいきなりうまくいくことはないでしょう。だいたいは失敗するはずです。そして、そのときが、知識を一番吸収しやすい状況でもあります。

あらかじめ言われていた注意点がなぜ重要なのか、理屈や知識がどんな判断において効いてくるのか。そうしたことをありありと実感した後であれば、知識の導入はスムーズになります。

つまり、理屈→実践→理屈という教え方がよいわけです。これを繰り返していく「場数サイクル」が人を育てていきます。

その人のリアルな特性を見極める

そのような場数サイクルを回していくと、結果としてそれぞれの人の特性(長所・短所)が見えてきます。先入観によるものでもなく、履歴書などのデータから生まれる印象でもない、その人のリアルな特性がわかるようになるのです。

それがわかれば、その人の特性に合わせた仕事の振り方ができるようになります。細かい注意が払える人に数字の管理を任せたり、人当たりの良い人に折衝の仕事を任せたり、といった判断ができるのです。

判断を繰り返していけば、ますますその人たちは経験を積み、能力を伸ばしていくでしょう。

ここまでくれば、ようやくチーム・マネジメントがそれらしくなってきます。単なる寄せ集めではなく、個々の特性を活かした「チーム」ができあがるのです。

逆に言えば、それぞれの人の特性を知るまでは、本来的なチーム・マネジメントは行なえません。

たとえば、サッカー選手のプレイをまったく見ないでポジションの決定や戦略の構築などは行なえないでしょう。仕事の現場でもそれは同じです。特に、自分の特性を、本人自身が知らない(気がついていない)場合も多いので、実践の中でそれを把握していくことは欠かせません。

評価していることを伝える

また、単にその人の特性に合わせた仕事を任せるだけでなく、自分がそれを評価しているということをきちんと相手に伝えましょう。面談の場があるならそのときに、それがなければ日常的なフィードバックに織り交ぜてもいいでしょう。

自分が相手のことを評価しているつもりでも、それがまったく相手に伝わっていないことはよくあります。ときには、まるで逆のように受け取られることすらあります。

こうした「齟齬」はできるだけ避けたいところですし、そうでなくても「自分がやっていることはこれでいいのだろうか」と不安を抱かせてしまっては士気に関わります。

「言葉にしなくてもあいつには伝わっているだろう」といった思い込みは一切捨ててしまって、評価していることをきちんと伝えるようにしましょう。

1人だけに仕事を任せない

特性に合わせた仕事の振り方をしていく場合でも、一極集中にならないようにすることは大切です。

「〜〜については、Aさんに完全にまかせる」というやり方は、効率的ではありますが、仕事をまかされたその人の負荷が高まりすぎる恐れがありますし、その人が何らかの事情で抜けてしまった場合のフォローがまったく効きません。これは、リスクを無視したマネジメントです。

特性について考慮しつつも、二番手・三番手のメンバーを育成していくように仕事を割り振っていくことが、全体としてのチームの強度に関わってきます。

自分のやり方を押しつけることはマネジメントではない!

今回は、育成法のポイントを紹介してみました。

実践をベースにして、特性に合わせて仕事を割り振っていき、全体としてのチーム力を向上させていく。少し時間のかかる方法ではありますが、それぞれの人が力を発揮させやすい環境を整えることもマネージャーの仕事の一つです。

逆に、絶対にやってはいけないのは、コピーロボットを作るかのように、自分のやり方を押しつけ、相手の特性を押しつぶしてしまうマネジメントです。というか、これは「マネジメント」と呼ぶことはできません。マネジメント力がゼロな、単なる暴政です。

決して、そういうやり方を誇るマネージャーにはならないでください。それは職場全体を不幸にする管理手法です。


倉下 忠憲

カテゴリ:スキルUP

【著者紹介】倉下 忠憲(くらした・ただのり)
1980年、京都生まれ。ブログ「R-style」主宰。コンビニ業界で働きながら、マネジメントや時間・タスク管理についての研究を実地的に進める。その後、執筆業に転身。現在は書籍執筆やメルマガ運営を主とする物書き。著書に『EVERNOTE「超」仕事術』『Scrap box情報整理術』(C&R研究所)、『ハイブリッド発想術』(技術評論社)などがある。自分で出版を行うセルフパブリッシングも意欲的に取り組んでいる。

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