スキルUP

1枚で伝える!トヨタの「A3文化」とは?/トヨタの習慣①

トヨタには社員が日々実践する「習慣」があった!――スピードと質を追求した上で「付加価値」を生む“最強の習慣”を、(株)OJTソリューションズの『仕事の生産性が上がる トヨタの習慣』からご紹介します(第1回)。

トヨタには「A3文化」と呼ばれるものがあります。

問題解決を行なうとき、①「問題を明確にする」、②「現状を把握する」、③「目標を設定する」、④「真因を考え抜く」、⑤「対策計画を立てる」、⑥「対策を実施する」、⑦「効果を確認する」、⑧「成果を定着させる」という8つのステップを踏むことが原則となっていますが、これらをA3サイズの用紙1枚に簡潔にまとめることが習慣化されています。

分厚い資料を用意すると、当事者はやった気分になりますが、ムダな文章や余計なデータが並んでいたら、むしろ相手に本当に伝えたいことが伝わりづらくなります。結論やポイントが簡潔に読み手に伝わる資料でなければ、それこそ時間と紙がムダになります。ひいては大量の書類を保管しようと思えばスペースが必要になり、場所のコストもかさみます。働きやすいオフィス環境の妨げにもつながるのです。

トヨタでは、こうしたムダな資料のことを「紙料」「死料」と呼び、社員に読みやすい資料の作成を促しているのです。


特にオフィスワークでは、大量の資料が発生します。会議用の資料を作成して配布したけれど、読まれないままデスクの上に置き去りにされていた……といったことはないでしょうか。

資料は、それを読んだ相手になんらかの行動を促すものでなければ意味がありません。そのためには、簡潔でわかりやすく、相手に一目瞭然で伝わる資料でなければなりません。

職場の資料も、紙1枚で十分に伝わるケースは多々あります。A3、あるいはA4でもかまいませんが、簡潔に伝えることを心がけることで、あなたが伝えたいことが明確になり、相手にも理解してもらえます。

ホワイトボード1枚にまとめる

トヨタでは、現場にも「1枚にまとめる」という文化が浸透しています。

問題やトラブルが起きたとき、「(アンドンの)紐を引く」のがトヨタの習慣です。

ラインを止めざるをえないような大きな問題が発生したとき、作業の当事者だけでなく、班長をはじめ、組長、工長などの各責任者、前後の工程の関係者、技術者が問題の工程に集まって、その問題を引き起こしている真因の追究をし、対策を打ち出します。

このときにトヨタの現場で活躍するツールのひとつが、ホワイトボードです。

トヨタでは、会議室だけでなく、生産現場にもホワイトボードが置いてあり、いつでもホワイトボードの前で会議や打ち合わせができる環境になっています。そして、現場で立ったまま、現地・現物を確認しながら、データなどの資料を貼り出したり、現状や問題点、対策などをホワイトボードに書いていったりするのです。


ホワイトボードを活用することによって、「どんな問題が起きたのか」「現状はどうなのか」「どんな対策を打っているのか」といった情報がひと目で入ってくるので、現場で起きていることが一目瞭然になります。

ホワイトボードをそのまま残しておけば、その場で議論に参加していなかった人も、あとで情報を確認できます。また、常にホワイトボードの情報を更新するようにすれば、リアルタイムで起きていることがわかります。

「現場で起きていることを、ひと目でわかるように簡潔にまとめる」という意味では、ホワイトボードの使い方にも「A3文化」があらわれているといえます。


一般的な会社では、ホワイトボードはせいぜい会議室に置いてある程度で、ほとんど使われていないケースすらあります。しかし、現場を離れて、会議室で問題対策などの議論をしていると、「実際はどうだったっけ?」といった疑問が上がることもあり、大変不便です。

トヨタでは、エレベーターにホワイトボードを乗せて移動している光景を見かけることもあります。人の集まっているところにホワイトボードがないのであれば移動させてでも使える状態にする、それがトヨタの習慣なのです。

ボードの前に集まって議論する

OJTソリューションズ専務取締役の森戸正和は、「ホワイトボードを使うことには、もうひとつ大きなメリットがある」と言います。

「現場でホワイトボードを使うと、自然と立ったまま議論することになるので、集中力が増し、だらだらと会議が続くことはありません。パッと集まって、パッと議論し、パッと行動に移れるのは大きなメリットです。

ホワイトボードのほかにも、トヨタではA3用紙が数枚貼れるサイズの持ち運び用のパネル(ピンを留められるプラスチックのボード)を活用しています。資料やデータを貼って留めておき、それを使って報告や打ち合わせをします。〝動く展示会〟みたいなものですね。

この場合も、パネルの前に関係者が集まってくるので、立ったまま議論をし、短時間で集中的に終えることができます。説明にも躍動感が生まれ、居眠りするような人もいません。ムダな紙が発生しないのもメリットです」


生産性の低い会社には、ムダな会議が多くあります。人は集まるけれど何も決まらない会議、議論が活発化しない会議、何も生み出さない「会議のための会議」などなど……。

もちろん、大人数で腰を据えて行なう会議も必要ですが、会議の種類や性質によっては、ホワイトボードや持ち運べるパネルを使って、立ったまま議論をする。ちょっとした打ち合わせであれば、こうした方法のほうが短時間で終わり、生産性が高い会議になります。そして、すぐに問題解決や改善などのアクションにつながり、成果を生むことができます。みなさんの職場でも試してみてはいかがでしょうか。


◇ ◇ ◇

【POINT】1枚で伝える
情報量が多すぎても相手に伝わらないことがある。簡潔にわかりやすく伝えることで、チームの意思疎通はうまくいく。



(株)OJTソリューションズ

カテゴリ:スキルUP

【著者紹介】(株)OJTソリューションズ
2002年4月、トヨタ自動車とリクルートグループによって設立されたコンサルティング会社。トヨタ在籍40年以上のベテラン技術者が「トレーナー」となり、トヨタ時代の豊富な現場経験を活かしたOJT(On the Job Training)により、現場のコア人材を育て、変化に強い現場づくり、儲かる会社づくりを支援する。
本社は愛知県名古屋市。60人以上の元トヨタの「トレーナー」が所属し、製造業界・食品業界・医薬品業界・金融業界・自治体など、さまざまな業種の顧客企業にサービスを提供している。
主な著書に20万部超のベストセラー『トヨタの片づけ』をはじめ、『トヨタ仕事の基本大全』『トヨタの問題解決』『トヨタの育て方』『[図解]トヨタの片づけ』『トヨタの段取り』『トヨタの失敗学』、文庫版の『トヨタの口ぐせ』『トヨタの上司』(すべてKADOKAWA)があり、シリーズ累計80万部を超える。

【書籍紹介】『仕事の生産性が上がる トヨタの習慣』(KADOKAWA)
トヨタが何より大事にしているのは、スピードと質を追求した上で、「付加価値」を生むこと。「ムダがなくなる」「同じ失敗を繰り返さない」「課題を解決する」「チームが成長する」。創業以来80年、トヨタが磨き上げてきた「最強の習慣」を紹介する一冊です。

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