スキルUP

時代をリードするイノベーターが語る、デジタルテクノロジーの“最前線”

デジタルテクノロジーの進歩が社会にもたらした影響は計り知れない。この変化をどう捉え、どう生きていくべきか。ITジャーナリストの第一人者・林信行氏が語ったITの<現在・過去・未来>とは――。

去る12月17日、クリエイティブなビジネススタイルのヒントを提示するセミナー「MY SMART WORK LIFE」が、東急不動産ビジネスエアポート六本木で開催された。

第6回目となる今回は、ITジャーナリストの第一人者として名高い林信行氏が登壇。最新のテクノロジーが社会や経済にどのような変化をもたらしているか、そしてそんな時代に生きる私たちはどのようにテクノロジーと向き合っていくべきか、さまざまな事例を交えながら自身の考察を語った。

1990年ごろからデジタルテクノロジーの最前線を追い続けてきた林氏の目には、今、何が映っているのか。時代をリードするイノベーターの視線を通じて明らかにされた、現代の「リアル」を紹介する。

テクノロジーが巻き起こした3つの「革命」

林氏いわく、現在テクノロジーの進化による3つの大きな革命が起きている。

まず1つ目は、ソーシャルメディアの誕生による「社会構造の革命」。

今や国境・人種・性別・世代・社会的地位といったあらゆる枠を超えて、誰もが世界中のいたるところからインターネットを通じて情報を発信し、独自のネットワークを構築することが可能になっている。林氏はこれを「縦割り社会の横串」と表現し、社会の構造を大きく変えた事例の1つとして挙げている。

2つ目は、3Dプリンター・3Dスキャナー・レーザーカッターなどに代表されるFabがもたらした「製造技術の革命」。

3Dプリンターの特筆すべき利点は、どんなに複雑な構造でも金型を使うことなく成形できることにある。金型が不要ということは、つまり「大量生産からの脱却」を意味しており、あらゆるプロダクトの適量生産が可能になる。一人ひとりのニーズに応じて個別にプロダクトを製造する、BtoI(Business to Individual)のビジネスモデルが世の中の常識となる日も、遠い未来の話ではないのかも知れない。

そして3つ目は、スマートフォンの登場による「道具の革命」。

2007年1月、Macworld Conference & Expoの場において、スティーブ・ジョブズがiPhoneのリリースを高らかに宣言した。それから12年の月日を経た今、スマートフォンは世の中の景色を変えるほど人々の暮らしに大きな変化をもたらし、社会・経済に欠かすことのできない重要なデバイスへと発展を遂げている。スティーブ・ジョブズが語った「時おり革命的な製品が生まれて、それは世の中のすべてを変えてしまう」という言葉が、まさに現実のものとなった。

林氏はこう証言する。

「テクノロジーによるエンパワーメントは、これまで社会的弱者であった人々に恩恵を与え、大きな飛躍のきっかけを創出した。スマートフォンが世界をフラット化へと導いた」

そして会場のスクリーンには、ハンディキャップを持つ人々の人生そのものを劇的に向上させるようなさまざまな取り組みが映し出され、テクノロジーが人類に幸福をもたらした具体例として提示された。

イノベーションは画面の外側へ

林氏は、さらに近未来を予測する。

「これまで、スマートフォンの画面の中に限定されていたイノベーションが、近年は画面の外側へと広がり始めた。AI・IoT・ウェアラブルといった新しいテクノロジーやデバイスが、私たちが意識しないうちに徐々に生活の中に入り込んできている」

自然言語処理技術、画像認識技術、ディープラーニングといった最新のテクノロジーが、実はすでにスマートフォンの中に数多く組み込まれている。

また、生活の身近にあるさまざまな電気製品やデバイスをスマートフォンと連携させることにより、日々の暮らしをより便利で快適なものへと導くべく、開発者たちがしのぎを削っている。

「AIは、認識・思考・表現のいずれにおいても人間の能力を超え始めている。数年後には、これまで人の手によって行われていた多くの単純作業が自動化され、人々の負担は軽減されていくだろう」

しかし一方で「人間の仕事がAIに取って代わられるのではないか」という問いには、「必ずしもそうではない」という見方を示した。

「今後、単純労働はどんどん自動化されて人間の仕事ではなくなると思う。一方で一見、無駄に見える人間味に大きな価値が生まれてくると思う。リアルな人によるサービスの価値はこれまで以上に高くなると思う。例えばお礼のお辞儀ひとつをとっても、AIやロボットが人を真似して頭を下げても、多くの人は無意味に感じるだろう。

これからのAI時代、人間に必要なのは『課題解決力』ではなく、『課題設定力』。解決はテクノロジーに任せて、人は何がなぜ面白いかや重要であるかを設定していくのが仕事になる。テクノロジーに翻弄されるのではく、自分にとっての本当に必要なものは何かという軸をしっかり持つことが、これからの生き方でますます大切になってくるのではないだろうか」

登壇するITジャーナリストの林信行氏
登壇するITジャーナリストの林信行氏


22世紀に残したい本物の価値

約28年間、デジタルテクノロジーによる社会の変革をつぶさに見てきた林氏は、年を追うごとに「果たしてテクノロジーは人類を幸せにしたのだろうか」という疑問を持つようになったと言う。

毎年のように、おびただしい数のガジェットやデバイスが生み出されては消えていく……。そんな「テクノロジー=資本主義(利益の追求)」という構造に、空虚さを感じているようだ。

「テクノロジーは人間の可能性を広げ、社会に豊かさをもたらす半面、そこに寄りかかりすぎると、物事の本来の価値や人間が本来持っている能力を、後退させかねない危険性もはらんでいる。また、哲学や理念のない有象無象のプロダクトが、エネルギーやレアメタルをはじめとする貴重な資源の消費を加速させている」と林氏は警鐘を鳴らした。

「私たちは今、人類の重要な分岐点に生きている。大きな責任を背負った時代とも言えるだろう。テクノロジーの表層をなぞってそれに振り回されるのではなく、本当に素晴らしいもの、本当に価値があるものを、見極める目と感性を持たなければならない」

林氏が何よりも大切にしているは、「22世紀に残していきたい価値か否か」という視点だ。

テクノロジーに「安い・早い・便利」を追い求めるのではなく、感情を揺さぶるような何かを追求し続けている。それは、テクノロジーの光と影を知り尽くした者だからこそ、たどり着いた矜持と言えるのではないだろうか。

テクノロジーが進化するごとに問われるのは、哲学・倫理・理念といった、人を人たらしめる価値観そのもの。一人ひとりが日々放たれる膨大な情報や環境の変化に惑わされない「軸」を育み、人生のストーリーをていねいに紡いでいくことが、これからの時代をしなやかに生き抜いていくための重要な要素になるであろう。

またそうあってこそ、テクノロジーが本当の意味で人類の幸福に寄与し、希望に満ちた未来に繋がっていくのではないだろうか。

ランサーズ

カテゴリ:スキルUP
■「MY SMART WORK LIFE」
飛躍を求めるすべてのビジネスパーソンに、高品質なシェアオフィス&コワーキングスペースを提供する東急不動産の「Business-Airport」が主催。毎回、各分野の第一線で活躍するイノベーターを招いて、これからの時代にふさわしいビジネススタイルを創造するための指針となる、さまざまな情報を提供している。

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