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対人関係のストレスを「活力」に変えるために最も大切なこと/けいろー

ストレスのほとんどは人間関係の悩みといわれますが、そうした悩みを認め、活力に変えるためにはどんな思考が必要でしょうか。ライターのけいろーさんが書籍『それでいい。』(創元社)を紹介します。

「人間の悩みは、すべて対人関係の悩みである」。

アドラー心理学で有名なアルフレッド・アドラーのこの言葉――どこかで聞いたことがあるという人も多いのではないでしょうか。ベストセラーになった『嫌われる勇気』でも登場するため、そこで読んだという人もいるかもしれません。

勉強したことのない人からすれば、どことなく小難しいイメージもある心理学。

その理論をわかりやすく説明した『嫌われる勇気』は、2014~2015年にかけて多くの人の支持を集めました。

同書以来、書店には対人コミュニケーションを取り扱う本が増え、ちょっとしたブームになっていたような印象もありますね。

心理学を題材としたものではありませんが、2017年に発売した『それでいい。』も、そのうちの1冊です。

筆者は、『ツレがうつになりまして。』の細川貂々さんと、精神科医の水島広子さん。コミックエッセイというスタイルで描かれる本書は、ほかのどのような本よりも明快で読みやすい、対人関係の入門書となっています。

対人関係のストレスを活力に変えるには?

『それでいい。』の筆者であり、本書では主人公として登場するマンガ家・細川貂々さん。

ベストセラー本を排出した人気作家である細川さんですが、この本の冒頭で彼女は、そんな自分を「ネガティブ思考クイーン」と表現しています。

何をやってもうまくいかない。
すぐに嫉妬してしまう。
他人の目ばかり気になる。
自分の意見をはっきりと言えない。
人付き合いが苦手。
考えすぎて空回りする。
――などなど。

これらは細川さんの自己評価に過ぎません。

でも実のところ、このようなネガティブな思考に陥りがちな人は、決して珍しくないのではないでしょうか。

どうしてもいつも悪いほうに考えてしまって、なかなかポジティブになれない。でも社会では明るい人のほうが好まれるから、明るく振る舞おうと頑張ってみる。

それでもやっぱりポジティブになれないから、自分が嫌になり、落ち込み、ネガティブな感情の渦にのみ込まれてしまう――そんな人。

そんな傾向を持つ細川さんが出会ったのが、本書の共著者にして精神科医の水島広子さんでした。

水島さんが専門とするのは、対人関係療法。これは「人間は身近な人間関係によって影響を受けている」ことを前提として、コミュニケーションを通じて健康的な関係性を構築し、現状の生活をより良くしていこうという療法です。

言い換えれば、「対人関係から受けるストレスを減じ、対人関係から得る力を増す」こと。それが、対人関係療法のめざす解決策です。

たしかに「人間の悩みはすべて対人関係の悩みである」のかもしれない。けれど同時に、対人関係によって自己を肯定し、喜びを得ることもできるのでは――?

本書が教えてくれるのは、無理をせず、自分の感情を大切にしながら、より良い関係性を他者と育むことによって、日常生活を豊かにしていこうという考え方です。

 


自己肯定感を育む「対人関係療法」とは

細川さんと水島さんの対話を通じて、日常の対人関係を掘り下げ考えていく本書。

「対人関係療法」と言われると難しそうな印象も受けますが、一言でまとめれば、本書は「自己肯定感を育むことをめざす」内容であると言えます。

曰く、「人間の変化は、現状の肯定からしかあり得ない」。対人関係を考えるにはまず、自身の気持ちの有り様を知り、どのような場面で感情が動くかを把握し、自分では「良くない」と考えていることもひっくるめて「認める」必要があるのだそうです。

それらの感情に「ネガティブ思考」という名前をつけてしまうと、まるで感じてはいけない感情のように思いますし、自分がそう感じていることを認めたくなくなります。

しかし実際には、「自分は怒っている」ということに気づかなければ、「自分は困っている」ということにも気づかず、「誰に助けてもらおうか。どうやってこの困った状況から脱しようか」ということにも考えを進めていけない、つまり自分にとって困った状況がそのまま放置される、ということになるのです。(『それでいい。』P.41より)

現状の肯定なくして、物事を改善することはできません。

まず自分を認めることの大切さ

水島さんが話すのは、第一に自分を、そして他人を「認める」ことの重要性。

対人関係療法において大切な「感情を大切にする」「それって人間として当たり前だよね」という2つのキーワードを挙げつつ、ネガティブな部分も含めて「自分を認める」ための考え方を次々に示していきます。

何よりも大事なのは、「それでいい。」と思うこと。

人間が何かに反応して感情を抱くのは自然なことですし、負の感情=悪いものではありません。むしろ「マイナスに考えるのは悪いことだ。だからこの気持ちを外に出してはいけない」と考えて口をつぐんでしまうことで、かえって他人とのコミュニケーションに支障をきたしてしまうことだってあり得ます。

自身の現状を肯定したうえで周囲に目を向け、対人関係を考えていく――。

このような流れで展開する本書は、短期間で劇的にコミュニケーションが上手になる会話術を教えてくれるものではありません。

でも着実に一歩一歩、少しずつ変わっていくための考え方を、わかりやすく示してくれる1冊であると感じました。

◇ ◇ ◇ ◇

変わろうとする気持ちに年齢は関係ありません。

筆者である細川さん自身も40代という話ですし(執筆当時)、誰もが生まれてから死ぬまで人間関係とは無縁でいられない以上、本書はどのような人が手に取って読んでもOKです。

この本を読み終えたときには、あなたもきっと「これでいい。」と思えるようになっているはず。

自分にも他人にもちょっとだけ優しくなれる、気持ちのいい読後感を得られるコミックエッセイです。

けいろー

【著者紹介】けいろー
フリーライター。ネットカルチャーを愛するゆとり世代。新卒入社したメーカーを退職後、趣味で始めたブログ「ぐるりみち。」経由で仕事をもらえるようになり、ノリと勢いで独立。本、グルメ、街歩き、旅行、ネット、アニメなどに関心あり。執筆実績として『HATSUNE MIKU EXPO 2016 Japan Tour』公式パンフレットなど。バーチャルな存在になりたい。

【書籍紹介】『それでいい。』(創元社)

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