見せたくてしょうがない、お客様の心理/すごいお店の秘密④

なぜ、繁盛する店と、繁盛しない店があるのでしょうか? いい商品や、美味しい料理を提供しさえすれば店は繁盛するはず……。はたして、それは本当でしょうか?『8割のお客様をリピーターに変える「すごいお店」の秘密』(高井洋子著)から、儲かるお店の最強メソッドをご紹介します(第4回)。
生ハムのインパクトでお客様の感情を刺激する
大阪を拠点に東京にも展開している「イベリコ屋」の仕組みもご紹介しておきます。
イベリコ屋は日本でも珍しいスペイン原産のイベリコ豚専門のレストランで、経営者の山本真三社長は、ビジネスモデル塾の塾生さんでもあります。
店で使用されるイベリコ豚は、世界で唯一ランク付けがされている最高級品で、なんと樹齢200年以上のドングリの実だけを食べて育つそうです。
この店のウリの生ハムは、なんと4年の歳月を経て熟成され、あまりの希少性のために市場に出回ることがなく、スペイン王室やローマ法王庁など世界のVIPのみに献上されているものなのです。
なぜ山本社長が輸入ができるかって?
確かに疑問ですよね。
山本社長のお父さんが生前に5年の歳月をかけて日本政府やスペイン政府に交渉し、やっとの思いで、日本で初めてイベリコ豚の輸入を実現させたといいます。やはり成功する人は、粘り強いものです。ちょっとやそっとでは諦めません。
すっかり信用を築いた山本社長は、イベリコ豚の輸入取扱量が国内シェアの80%を占めているといいます。
ご実家が精肉店を営んでいて、日本国内のホテルやデパートに卸をしています。
そして、びっくりなのがこのイベリコ屋の「おや?」づくりです。なんと、高額な生ハムを丸ごと足一本キープできるようになっているのです。しかも店の一番目立つところにショーケースがあって、誰の目にも留まるような導線になっています。そこにはキープした人のネームプレートがデカデカとつけられているのです。
このレストランのターゲットは、「自称『美食家』で、人にサプライズするのが大好きな男性経営者」です。
生ハムキープは、なんと1本25万円もするにもかかわらず常に予約でいっぱい、順番待ちになっています。
実際は生ハムが足りないのではなく、ショーケースのスペースに限りがあって、キープできる数が限られているのですが、逆にこの「なかなか手に入らない」が、ターゲットの感情ニーズをくすぐるのでしょう。
キープした生ハムは、丸ごと足1本の状態でテーブルまで運んで来てくれて、店員さんが目の前でスライスしてくれます。初めて見る人はびっくりします。
キープしている男性社長は、生ハムを見せたくて見せたくて必ずといっていいほど友人を連れて来店するそうです。「すご〜い」と言わせたいのでしょう(笑)。
次から次へと知り合いを連れて来ては、スタッフが説明しなくても自らイベリコ豚のウンチクを語って聞かせているそうです。
なんだかこの心理がわかる気がしませんか?
「自慢したい!」
「驚かせたい!」
「希少性のあるモノを見せたい!」
消費は感情が起こしているのです。
山本社長はイベリコ豚の独自性だけに頼りすぎることなく、他にもたくさんの戦略を打って大成功していらっしゃいます。
見せたくて、見せたくてしょうがない。
あなたの店や会社でも顧客に見せたくて、見せたくてしょうがなくさせることができないでしょうか?
ぜひ考えてみてください。
◇ ◇ ◇
イベリコ豚専門レストラン「イベリコ屋」の成功に学ぶ、
お客様のくすぐりかた

高井 洋子
この連載をもっと読む
【著者紹介】高井 洋子(たかい・ようこ)
株式会社Carity最高顧問。経営者として任された家具の販売会社を3年で事業拡大し、立ち上げから3年でグループ年商70億円を達成。その後、2012年に優秀なブレーンと共に経営コンサルタント会社「Carity」を設立、代表取締役社長に就任。 全国の中小企業の経営者を対象にした「ビジネスモデル塾」は約6年ですでに54期を開催、全国から800社以上の経営者・経営幹部・独立希望者が集う講座となっている。 活動を日本だけに留まらず世界に広げるため、2017年に株式会社Carityの代表取締役を辞任。自らもシンガポールにてビジネス展開を図っている。世の中のビジネスモデルを分析し、どのように儲けているかを検証するのが趣味。著書に『400円のマグカップで4000万円のモノを売る方法』『すぐに1億円 小さな会社のビジネスモデル超入門』(共にダイヤモンド社)がある。
【書籍紹介】『8割のお客様をリピーターに変える「すごいお店」の秘密』(KADOKAWA)
3年でゼロから年商70億円の著者が教える儲かる店の最強メソッド! 「顧客成長」の仕組みがわかれば、お客様があなたの店を儲かる店にしてくれる! 誰をターゲットにするかで、店(会社)のウリは変わります。つまりターゲットとする人のどんな感情を満たすかがカギとなるのです。そのカギさえつかめば、ほとんどのお客様をがっちりリピーターにとり込んで離さない繁盛店=「すごい店」を誰でもつくれます。カギのつかみ方・使い方をお教えします!