AIは人の仕事を奪わない。労働という概念を変えるだけだ/俵谷龍佑

「十年後にほとんどの仕事はAIにとって代わる」といった未来予測をよく目にします。はたしてAIは今後、本当に仕事を奪う脅威の存在になるのでしょうか? ブロガーの俵谷龍佑さんが未来を予測します。
「AIが人の仕事を奪う」。ここ最近、このような言葉を頻繁にニュースで耳にする機会も増えたかと思います。
はたしてAIは今後、本当に仕事を奪う脅威の存在になるのでしょうか?
将来に訪れるシンギュラリティ(技術的特異点)やAIによって、仕事のあり方、人の働き方はどのように変質するのかについて、私なりの考え方をお伝えしていきます。
遠くない未来に、AIの知能は人類を超える
AIやドローン、IoT、仮想通貨といた最新技術が実用段階に到達し、ニュースでも取り上げられる機会が増えたように感じます。
皆さんは、AIについてどのようなイメージを持っていますか? アンドロイド? 人型ロボット?
あらためてAIという概念について調べてみると、「IT用語辞典バイナリ」では以下のように定義されていました。
「人間の知的営みをコンピュータに行わせるための技術のこと、または人間の知的営みを行うことができるコンピュータプログラムのこと 」
ロボットの類ではなく、あくまでプログラムの概念そのものを指しています。
実は、このAIという言葉は古くから使われていて、1950年代にジョン・マッカーシーが提唱し、同年代には、人工知能かどうかを判別する「チューリングテスト」が人工知能の父と呼ばれるアラン・チューリングによって開発されました。
では、なぜ今になって、AIの話題が持ち上がるようになったのでしょうか?
それは、AIの知能が人類を超越することが現実的になり始めているからです。いわゆるシンギュラリティ(技術的特異点)です。シンギュラリティは、一般的には2045年に到達するといわれていますが、一部の意見ではもう少し早くなるといわれています。
特にAIについて多くの人も知ることとなった衝撃のニュースが、2016年に囲碁のプロ棋士がAIに大敗を喫したというニュースです。その後も、AIは将棋、チェスなど、様々なゲームでプロ棋士を打ち負かしています。
日本の労働人口の49%がAIに置き換わる?
AIは将棋や囲碁だけではありません。医療、経済、介護、鉄道、運送など、あらゆる分野において、成果を出し始めています。
野村総合研究所がオックスフォード大学と共同で行なった研究によれば、2030年ごろには日本の労働人口の49%、つまり約半数がAIに置き換わるという試算が出ています。
置き換えられる可能性が最も高いのが電車の運転士で、確率は99.8%といわれています(※参考記事:「AI代替の可能性」601職業を分析 1位すでに実例/朝日新聞)。
非常に衝撃的な研究結果ですが、日暮里・舎人ライナー、ゆりかもめ、大阪市高速電気軌道南港ポートタウン線といった一部の電車は、すでに自動運転が実用化されており、試算がすでに現実になりつつあります。
さらに、2019年1月には山手線も自動運転試験を開始しました。国内の鉄道が自動運転に置き換わる日も、そう遠くないかもしれません。
「仕事がなくなる」のではない。働き方が変質する
AIに関しては、「仕事がなくなる」「仕事を奪われる」といった悲観論が多いです。
しかし、私自身はあまりそのように考えていません。というのも、新しい技術が定着する過程では、様々な業務が発生し、今までになかった新しい仕事が生まれているからです。
インターネットを例に挙げても、システムエンジニア、ネットショップオーナー、YouTuber、ブロガー、Webライター、プラットフォーマー(Googleや楽天、Amazonなど)と、書ききれないほど多くの職業が誕生しました。
さらに、仕事が増えるだけでなく、労働そのものの考え方が根本からひっくり返ると思っています。
インターネットの普及において、連絡手段は電話からメールに、クラウドサービスができてペーパーレスになりました。リモートワークやワーケーションという概念が誕生し、オフィスに出勤するという概念も今やあいまいになりつつあります。
このように、AIが仕事や生活に溶け込むことによって、そもそもの労働という概念が変わっていくものと思われます。
より単純労働は自動化・機械化され、元来の人の強みである「思考する」「作り出す」といったクリエイティブな仕事に収斂されていくのではないでしょうか?
仕事を自分で作り出せる大きなチャンスが待っている
むしろ、AIが台頭する先で見えるのは、仕事が奪われる危機感ではなく、今までにない新しい仕事を創出できる希望です。仕事を自ら作っていきたいと考えている人にとっては大きなチャンスの波がやってくるのかもしれません。
俵谷 龍佑
【著者紹介】俵谷 龍佑(たわらや・りゅうすけ)
Webライター、ブロガー、音楽イベンター、ボーカリストなど様々な顔を持つ。「遊びが仕事に。仕事を遊びに。」を信念に、1箇所に囚われず、地方都市や様々な場所で仕事をする神出鬼没なノマドワーカー。働き方、自身のADD(注意欠陥障害)改善の記録、仕事効率化、ITをテーマとしたブログ「おれじなる」を運営。
※参考記事
「AI代替の可能性」601職業を分析 1位すでに実例/朝日新聞
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