スキルUP

あらゆる「あたりまえ」を疑え! 一流は常に疑っている /けいろー

国際化や働き方改革によって、これまでの常識が通用しなくなるビジネスシーン。常識に縛られずあらゆる慣例を疑うことが、次の可能性を示してくれます。今回は澤円著『あたりまえを疑え。 自己実現できる働き方のヒント』を、ライターのけいろーさんが紹介します。

私がメーカー勤めをしていた頃の話です。営業所の上司が口を酸っぱくして新入社員に話していた説教のひとつに、「社会人らしくあれ」というものがありました。

上司からすれば、お客様と話す機会も多い営業という仕事柄、「いつまでも学生気分でいてもらっては困る」という思いがあったのでしょう。

私自身、油断するとフランクな口調が出てしまうことがあったため、上司がそう指摘するのも当然だと感じていました。

しかし一方では、「社会人らしく」という言い回しにちょっとした反感を覚えることもありました。

「新入社員は誰よりも早く出勤するべき」だとか、「飲み会ではお酌をするのが当然」だとか。事あるごとに「そうすることが社会人だ」と押し付けられ、疑問を挟むことすら許さない職場。その雰囲気に、少し息苦しさを感じていたのです。

このような押し付けがましさを感じられるのは、何も職場で指摘される「社会人らしさ」だけに留まりません。

「普通はこうするだろう」「そんなの常識だろう」といった形で、立場が上の人間や周囲から強いられる同調圧力。しばしば他人を思いどおりに動かすためにも使われる同様の表現は、私たちの日常にありふれています。

ですが実際のところ、誰もが認める「常識」と呼ばれるものは、はたして本当に存在するのでしょうか。

なんとなく「常識だから」「そうするのが普通だから」と思考停止して信じ切ってしまっていることが、かえって仕事の効率を悪くしたり、誰かを不幸にしたりしていることもあるのでは――?

今回ご紹介する『あたりまえを疑え。 自己実現できる働き方のヒント』(澤円著/セブン&アイ出版)は、そのような思い込みを排除し、新たな視点を読者に与えてくれる1冊。現代日本のビジネスシーンに蔓延する「あたりまえ」の価値観を疑い、その問題点と解決策を提示していく内容となっています。

常識に縛られたら、思考は停止する

「常識とは、18歳までに身に付けた偏見のコレクションである」というアインシュタインの言葉は有名ですが、本書の筆者も、「常識」という言葉がはらんでいる問題を指摘しています。

曰く、「常識に縛られたら、思考は停止する」。本書では「あたりまえ」と表現していますが、「常識」にせよ「あたりまえ」にせよそれは一種の思い込みに過ぎず、決して万人に当てはまるものではありません。

たとえば、よく言われる「いい大学に入ればいい企業に入社できる」「転職は35歳まで」といった話。これも実のところは、一部の人間がそうだと考えている「ものさし」のひとつでしかありません。

どんなにいい大学を出ても就職がうまくいくとは限りませんし、逆に40代で転職して新しい環境で活躍している人だっています。

そうやって何かを「あたりまえ」だと決めつけてしまうことは、諦めや思考停止につながります。「いい大学に入れなかったから、いい企業に入社できない」「もう40代だから、転職するには遅すぎる」と思い込み、積極的に行動しなくなってしまう。

「あたりまえ」に縛られ、何もかもを諦めるような考えに至ってしまうのは、未来の可能性を狭めてしまうだけです。

“「思うようにいかない理由」「自己実現できない理由」というのは、簡単に見つかります。恐ろしいことに、「~だから無理」と思った瞬間、そこがゴールになってしまうのです。"
(P.5)
“そこで大切になるのは、そんな思い込みを捨てて「どうすればできるのだろう?」と考えること。なぜなら、思考は行動に直結するからです。これまで「あたりまえ」と思っていた思考のクセを根本から疑い、自分の頭で考えることができるようになれば、一歩前へと進んでいけるでしょう。"
(P.5)

せわしなく過ぎていく日々の中で私たちは、誰かが話す「常識」や「あたりまえ」を疑うこともなく信じてしまいがちです。

ですが、それが「普通」であるとして疑問にすら感じていなかったことの中にも、よくよく考えてみると「そうとは限らないんじゃない?」と思えるものは数多くあります。特に現代の日本企業にはそのような「あたりまえ」が蔓延しており、それが業務効率の低下を招いているのではないか――。筆者は、そのようにも指摘しています。

本書が取り扱うのは、「時間」「ルール」「コミュニケーション」など、主に職場をはじめとするビジネスシーンではびこっている「あたりまえ」の是非。そのうえで、誰も幸せになることのない、息苦しいだけの「常識」を蹴っ飛ばし、前向きに生きるための考え方を示していきます。

その会議、本当に必要ですか?

「時間・タスクを疑う」と題したCHAPTER1に始まり、本書では全5章にわたって「ルール・慣例」「コミュニケーション」「マネジメント」を、そして最後には「自分自身」をも疑う内容となっています。

たとえば、入社1年目の新入社員が「社会人の常識」として叩き込まれるものとして、「報連相」の考え方があります。

組織やチームで仕事に取り組む際には、「報告」「連絡」「相談」が何よりも重要である――という、有名な考え方ですよね。ビジネスコミュニケーションの基本として、マナー講座などに組み込まれていることも少なくありません。

言うまでもなく、チーム内での情報共有は大切です。若手の独断専行やそれによって生じるミスをなくそうとするにあたって、間違いなく意味のある考え方だと言えるでしょう。

私自身、入社1年目に「報告」を怠ったことで上司に迷惑をかけた経験があり、以降はしっかりと報告・連絡・相談を心がけるようになりました。

しかし一方では、必要以上に「報連相」を重視することで現れる弊害の存在も無視できません。

そのひとつが、昔から声高に叫ばれている「日本企業には無駄な会議が多い」という問題です。長時間にわたって会議をする割に何も決まることなく終わってしまうのは、「報告」に時間をかけすぎているからなのではないかと、筆者は指摘しています。

“考えてみれば、「報告」と「連絡」は過去から現在までのすでに起きたことについての話なので、本来はITツールを用いて自動化し効率化できるはず。データは、「見ればわかる」ものです。それをわざわざ時間を使って、人を集めて報告させることにまったく意味はありません。また、出席者は会議のために移動しなければなりません。ビジネスにおいて移動時間はなにも生み出さないので、これもまた無駄なものです。"
(P.35)

会議で話すべきは、「過去」ではなく「未来」の話。前年度の振り返りや現状の整理も欠かせませんが、それにしても時間をかけすぎている印象があります。

大切なのは、自動化・効率化が可能な「報告」「連絡」は最小限に、未来を見据えた「相談」に時間を割いて、そのような話をする場として「会議」を設けること。

「今日も何も決まらなかった」と自嘲するのではなく、そこで「なぜいつも会議がうまくいかないのか」を考え、原因を発見し、対策を打たなくてはなりません。

そのためにも、まずは現状を「疑う」必要があるのです。

人から与えられた「正解」を疑う

私たちは、しばしば何事にも「正解」があると考えてしまいます。「報連相」もそうですし、冒頭で触れたお酌や出勤時間などの「新入社員はかくあるべし」という考え方もそう。

ですが、誰かが話す「常識」や「普通」が、必ずしも正解であるとは限りません。

特に日本企業の場合、上の世代が話す「あたりまえ」の中には、「過去の成功体験に即した習慣を思考停止的に続けているだけ」というものも少なからず存在しています。

あなたが所属する会社は、時代にそぐわない「普通」をだらだらと続けてきたことで、仕事の効率化が進まず、若手の意欲が削がれ、組織全体の停滞を招いてしまっている――なんてことになってはいませんか?

“正解があるという前提で考えているから、正解を持っていそうな人の意見ばかりを聞いたり、従ったりしてしまうのです。また世の中には、自分たちの世代の体験をもとにして、若い人たちに「正解のようなもの」を教えることでお金を稼いでいる人がたくさんいます。"
(P.91)

価値観が多様化し変化が激しい現代において、新たな価値を創造しつつ前へと進むためには、それまでの「あたりまえ」をまずは疑う必要がある。

筆者は続けて「正解を求めたら絶対にイノベーションは生み出せない」「正解がある時点でイノベーションではない」とも書いていますが、旧態依然とした集団が時代に取り残されないようにするためにも、ますますこの「疑う」姿勢は重要になってくることでしょう。

しかし同時に、「あたりまえを疑え」という筆者の主張を参考にするなら、こういう見方もできます。彼が話す「イノベーションを生み出すべき」という「あたりまえ」の考え方に対しても、疑ってかかるべきなのではないか――と。

実際、誰も彼もが想像力やアイデアを持っているというわけではないでしょうし、新たな価値を創造することだけが企業活動ではありません。

伝統の継承や現状維持も一種の「価値」であることに変わりはなく、それを守るために「あたりまえ」を続けるのも、ひとつの選択なのではないでしょうか。

もちろん、その選択のうえでも「疑う」視点を持ち続けることは忘れずに。

ともあれ、「あたりまえ」に立ち向かう方法がわからずにモヤモヤを抱え続けている人にとって、本書はきっとひとつの指針となるはず。働き方改革が叫ばれ、ビジネスシーンにおいても価値観が多様化しつつある今だからこそ、読んでおきたい1冊です。

けいろー

カテゴリ:スキルUP
【著者紹介】けいろー
フリーライター。ネットカルチャーを愛するゆとり世代。新卒入社したメーカーを退職後、趣味で始めたブログ「ぐるりみち。」経由で仕事をもらえるようになり、ノリと勢いで独立。本、グルメ、街歩き、旅行、ネット、アニメなどに関心あり。執筆実績として『HATSUNE MIKU EXPO 2016 Japan Tour』公式パンフレットなど。バーチャルな存在になりたい。

【書籍紹介】『あたりまえを疑え。 自己実現できる働き方のヒント』(セブン&アイ出版)

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