スキルUP

優秀な日本人人材の海外流出、認めるべきか否か?/川尻秀道

日本国外への人材流出を、我々はどのように考えればよいのでしょうか。日頃からMBA取得で様々な人のキャリア相談に乗る川尻秀道さんが、優秀な日本人人材の海外流出に関する持論を述べます。

優秀な人材の海外流出は、将来の日本にとって深刻な問題のひとつです。

このテーマに関して、近年様々なメディアが議論を展開しています。

今回はそのうち、

・「日本は“超エリート”をGAFAに奪われている」(佐藤信/東洋経済オンライン、2018/09/26)
・「対GAFAで研究者の処遇改善 NTT、流出に危機感」(日本経済新聞、2018/11/20)

の2つのニュース記事を取り上げながら、優秀な日本人人材の海外流出に対応するための、国家や日本企業の対策について記載しています。

海外流出を認めるべき理由

我々は、優秀な日本人人材の海外流出を認めるべきなのでしょうか、またはおさえるべきなのでしょうか。

私の意見は「優秀な日本人人材の海外流出を認めるべき」ということです。

自分に付加価値を付けるため懸命に努力し、働きやすく報酬の高い外国の企業に就職することは、完全に個人の自由です。

私は人生で一番大切なものは「家族」であると思っています。各々が、家族の幸せのためできる最大限の選択をすることが必要です。

人生の選択に関し、周りの人たちや国がどうこう言えるものではありません。

個人の幸せ vs. 国家の幸せ

日本経済新聞によると、NTTでは30代半ばまでの若い人材の3割がGAFA(=Google, Apple, Facebook, Amazon)などに引き抜かれているそうです。

“(NTT持ち株会社の研究開発の人材は)35歳になるまでに3割がGAFAなどに引き抜かれてしまう。”
(「対GAFAで研究者の処遇改善 NTT、流出に危機感」より)

また、東京大学先端科学技術研究センター助教の佐藤信氏は、東洋経済オンラインの記事で「個人の幸せと国家の幸せが別物になっている」としたうえで、多くの優秀な日本人人材は個人の幸せのために日本の職場を踏み台にしてGAFAの本社へのステップアップを目指しており、これは国家の視点から見れば人材流出ということになる、と述べています。

“日本の職場を踏み台にして、GAFAの日本法人に入り、そこから本社に行ってみたいと考えるのも、個人の幸せを追求した結果としては当然でしょう。”
(「日本は「超エリート」をGAFAに奪われている」より)

「日本で働きたくない」が当然な理由

このようなGAGAへの人材流出に対抗するため、NTTは19年度に賃金制度の改革を実施することのことです。

しかし、報酬だけで優秀な人材を獲得したり流出を防いだりすることはできないことは、いくつかの学術論文で議論されていることです。

佐藤信氏も同記事で、日本社会の多様性の欠如と劣悪な労働環境が人材確保の足かせになっていると述べています。

報酬だけではなく(または報酬ではなく)、トップのビジョンに対する支持、仕事のやりがい、自己成長の機会、意思決定への参加など仕事に関する動機付け要因も考慮していく必要があるでしょう。

“高度プロフェッショナル人材に日本の魅力をアピールするだけではなく、社会も多様性に寛容でなければないはずです。”
“実際には日本での労働環境が劣悪なために、比較的単純労働に近い労働力でさえ十分に確保するのが難しい現実があります。”
(「日本は「超エリート」をGAFAに奪われている」より)

多様性でいえば、女性、子育て世代、LGBTの方々が安心して働ける社会にしていく必要もありますし、労働環境でいえば、労働者に対して肉体的にも精神的にも大きな負担を与える企業を排除する必要もあります。

また、我々消費者が日本企業の劣悪な労働環境をつくっているケースも多々あります。

企業のサービスに何でもかんでもクレームを付けるモンスターカスタマーによって、労働者には無駄または過剰な仕事が発生し、劣悪な労働環境に閉じ込めているということも、理解する必要があります。

自分の身は自分で守る

とはいえ、日本の社会保障制度や借金返済する気もなさそうな財務政策、政治家による不祥事などの昨今のニュースを見ていても、将来何かがあったときに国が家族や自分を助けてくれるのかは、疑わしいものです。

個人レベルとして、国家の幸せに全力を尽くすより個人の幸せを優先するのは、自然な流れだと思います。

以上のような理由から、私は個人の幸せを優先して国や企業を問わず自分が活躍できる労働環境を求めていくことに賛成です。

読者の皆さんは、どう思いますか?


川尻 秀道

カテゴリ:スキルUP

【著者紹介】川尻 秀道(かわじり・ひでみち)
ラウンジグループ株式会社代表取締役兼CEO 。
1978年1月生まれ。静岡県出身。少年時代は、勉強「普通」、スポーツ「普通」、顔「普通」。三拍子そろった普通の少年。あまりの「普通」の人生に危機感を感じ、人生最大のリスクを背負って2007年8月よりMBA国際認証トリプルクラウン校であるクイーンズランド工科大学(オーストラリア)のQUT Business SchoolへMBA留学。現在は、ラウンジグループ株式会社代表取締役兼CEOとしてMBA・大学院留学支援サイト「MBA Lounge」や留学準備とビジネスの会員制コミュニティ「U29 Lounge」などの事業を展開。「留学支援とビジネス教育を通じて『自ら行動し、自らの人生を豊かにできる』人財を育て社会に貢献する」ことをミッションに掲げ日々奮闘中。

※参考記事
日本は「超エリート」をGAFAに奪われている/東洋経済オンライン
対GAFAで研究者の処遇改善 NTT、流出に危機感 /日本経済新聞電子版

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