スキルUP

赤字からのV字回復に必要だった、たった1つのこと/0秒経営①

倒産寸前だったメガネスーパーは、なぜV字回復できたのか?「君たちの給料を小売業界No.1にしよう」で知られるメガネスーパー・星﨑尚彦著『0秒経営 組織の機動力を限界まで高める「超高速PDCA」の回し方』から、負けグセがついたチームや組織を丸ごと変える「0秒経営」をご紹介します(第1回)。

メガネ1本3万6000円でも「安い!」

そう、たった4、5年前までメガネスーパーは倒産寸前だった。

そこからの復活劇は、私たちにとって大きな成功体験だ。まだまだ課題は多く、油断もしていられないが、自分たちの戦い方は間違っていないと確信するには十分な体験をした。今は、次の決算が楽しみでならない。

メガネスーパーは、何が変わったのか。

まず、ビジネスモデルの大転換がある。

2014年6月、私たちは「アイケアカンパニー宣言」を掲げた。

これを境に、安売りメガネのイメージを払拭し、「眼の健康」にまつわる専門知識を武器に、高付加価値のサービスを提供するようになった。

ターゲットは、遠近両用レンズなどを使い始める40歳以上のミドル・シニア。最大50項目を超える独自の検査を行い、お客さまの眼の健康を考えたメガネを、オーダーメイドで作り上げる。これが、老眼や「合わないメガネ」からくる体の不調に苦しんでいた中高年のお客さまから、絶大な信頼を得た。今では、お客さまの7割が40代以上である。

「レンズ代0円」という業界慣習からも脱却した。レンズを有料化し、メガネ一式の平均価格は3万6000円と、業界水準を大きく超える高価格に変わった。この高価格に見合った検査や接客ができるよう、店舗のリニューアルも漸次進めている。

また、これも無料が当たり前だった保証を有料化し、「HYPER保証プレミアム」サービスを始めた。通常の保証でも購入6カ月以内なら何度でも度数変更無料、正常な使用で品質に問題があったら1年以内なら無料で交換・修理を受け付ける。

有料保証では月々300円の費用で、自責他責問わず3年間何度でも、度数交換やフレーム交換にわずかな費用で対応する。もし交換をしなければその保証費用分のメガネスーパーのギフト券をお渡しするので、お客さまにとってはまったく損がない保証サービスとなっている。


どれもこれも、メガネ業界の常識を破壊する、インパクトが大きい施策ばかりだ。

とりわけ、レンズ代0円に慣れているお客さま、また「眼の健康」をとくに意識することのない若いお客さまには、

「メガネ1本に3万6000円は、高すぎる! だってJINS やZoff なら……」

と思われてしまうかもしれない。

しかし、考えていただきたい。大切なのは価格ではなく、その価値である。

仮に、メガネ1本を3年で買い換えるとしても、月当たり1000円、1日当たり33円ほどでしかない。情報の8割が入ってくるという眼の健康、そんなかけがえのない価値が、1日33円で手に入る。決して高くはないのではないだろうか。私たちはそのように考え、ご提案している。

事実、アイケアカンパニー宣言後のお客さまには、むしろ「安い!」と感謝されるようになったぐらいである。店舗も連日、大変な賑わいだ。


8年連続赤字からV字回復できた、たった一つの理由

おかげでメディアは、華麗なる復活劇、と称賛してくれる。私のことも、「再生請負人」として、少々注目してもらえるようになった。

だが、メガネスーパー復活の本質は、ビジネスモデルの転換そのものではない。

本質は、「社員の意識改革」にある。

すなわち、「指示待ち」社員が、自分から動ける社員に変わった。

長引く苦境のなかで自信を失った社員が、やる気にあふれる社員に変わった。

「やる」といったら必ず「やる」社員に変わった。

きわめてシンプルな話、会社経営においては、やる気イコール、売上だ。やるべきことをやらなければ売上は落ち、やるべきことをやっていれば売上は伸びる。

問題は、やる気を出せと言われて、出せる社員などいないことだ。

8年も赤字が続いていたら、なおさらだ。かつてのメガネスーパーは、自分のアタマでものを考えられなくなっていた。「やってごらん」といっても黙るだけだった。

トップが「やれ」と命じても動けなかった。

だから私は、現場に足を向けた。

現場に自分の考えを伝え、「どうしたら黒字にできるか」彼らと一緒に考え、行動した。現場を動かす前に、まず自分の頭と体を動かした。そのうちに彼らも「こんなことをしてみたらどうだろう」とアイデアを出すようになった。すかさずそれを試す。失敗する。イチローでさえ、四割バッターにはなれないのだ。私たち凡人の考えることは、ともすれば半分以上は失敗する。失敗するのは当たり前だ。

けれども、「やってもダメなんだ」と思考停止するのではなく、「どうしたらうまくいくだろうか」と軌道修正して、またチャレンジする。このサイクルを毎日、超高速で回した。やがて結果が出始めた。「自分たちはやれる、売れる!」という経験が積み重なっていく。負けグセが染みつき、シラけていた店舗に、熱が生じた。


その熱を作り、広げていくための施策は、確かに私が用意したかもしれない。

意識改革の現場として、社長が直轄する「天領店」を設けた。私が現場にいき、接客から内装、コスト管理に至るまで、スタッフと共に見直した。

本社と現場、全部門から200人を集めての「アクション会議」をスタートさせた。

毎週月曜日、およそ10時間、ぶっ通しの議論だ。

100人の有志を連れて全国の店舗を回るのは、「ホシキャラバン」だ。天領店で培った「成功事例」をコピペ(コピー&ペースト、そっくりそのまま横展開)する弾丸ツアー。私は社員を乗せたマイクロバスを運転し、現地に着けばスタッフ全員と個店ミーティングをして、その後はスタッフとの個別面談、それが終わればチラシ配りである。夜はキャラバン隊全員で懇親会である。

すべての発端は、社員から生じた熱である。

そのことは何度強調しても、し足りない。それこそメガネスーパー復活の原動力であるということを冒頭に、お伝えしたかった。0秒経営も、アイケアカンパニー宣言も、われわれ皆の、努力の賜物なのだ。

星﨑 尚彦

カテゴリ:スキルUP
【著者紹介】星﨑 尚彦(ほしざき・なおひこ)
1966年生まれ。早稲田大学法学部卒業後、三井物産(株)に入社。MBA取得後の2000年、スイスの宝飾メーカー「フラー・ジャコー」日本法人の経営者に就任、短期間で同社業績の飛躍的向上に成功。2012年にアドバンテッジパートナーズからの要請により、アパレルメーカー「クレッジ」の経営再建を担い、1年半でV字回復を達成。2013年6月、メガネスーパーの再建を任され、2016年に同社9年ぶりの黒字化を果たす。2017年11月には株式会社ビジョナリーホールディングスの代表取締役社長に就任。

【書籍紹介】『0秒経営 組織の機動力を限界まで高める「超高速PDCA」の回し方』(KADOKAWA)

あなたへのオススメ記事

  • 赤字企業なのに「忙しい」が口癖、施策は「今やる」「すぐにやる」/0秒経営⑤
  • 客が来ないのにノーアクション、「効果なし」もそのまま放置!/0秒経営④
  • 実態の見えない「現場」って誰だ?社長が現場になることでわかったこと/0秒経営③
  • メガネ戦国時代に、メガネスーパーは負けるべくして負けた/0秒経営②
  • 「電験三種」ってどんな資格? 仕事内容・試験概要・合格率・攻略法を徹底解説!

    「電験三種」ってどんな資格? 仕事内容・試験概要・合格率・攻略法を徹底解説!

  • 言われてみると…どっちがどっち?? 違いがわかる雑学クイズ

    言われてみると…どっちがどっち?? 違いがわかる雑学クイズ

  • あの英語にそんな意味が! 色・天気の英語雑学クイズ

    あの英語にそんな意味が! 色・天気の英語雑学クイズ

  • そうだったのか! 知って驚く 人体にまつわる雑学クイズ

    そうだったのか! 知って驚く 人体にまつわる雑学クイズ

  • パパ、ママ、すごい!って言われる 子どもに話したくなる雑学クイズ

    パパ、ママ、すごい!って言われる 子どもに話したくなる雑学クイズ

  • オンライン英会話と英会話スクール、比較するとどっちがおすすめ?

    オンライン英会話と英会話スクール、比較するとどっちがおすすめ?

スキルUPの人気記事ランキング

  • 「死ねよ」よりキツい「信頼してたのに」…どう応える?/新人営業女子・えりた(5)

  • 北海道の「道」って? “北海県”ではないが昔は道内に県があった!/毎日雑学

  • 人間の身体で一番大きい「臓器」は何?/人体の雑学クイズ(3)

  • 【SE女子の日常】22時を過ぎても人が多い/ぞえ

  • 朝6時からスタバで仕事!それって本当に意識高い系?/突然辞める若者(3)

{ カテゴリ別ランキングを見る }

ページトップに戻る