スキルUP

客が来ないのにノーアクション、「効果なし」もそのまま放置!/0秒経営④

倒産寸前だったメガネスーパーは、なぜV字回復できたのか?「君たちの給料を小売業界No.1にしよう」で知られるメガネスーパー・星﨑尚彦著『0秒経営 組織の機動力を限界まで高める「超高速PDCA」の回し方』から、負けグセがついたチームや組織を丸ごと変える「0秒経営」をご紹介します(第4回)。

客がこないのに「待ち」の接客

果たして、私が天領店で目にしたものは、本社の会議室で語られる「現場」の姿とはまるで違っていた。そこには、どこに向かっていいのか解らなくなっている人や、働く意欲をなくしたスタッフたちがいた。本社の人間と同じだ。彼らもまた、自分の頭で考えるということを放棄して(あるいは諦めざるを得ない環境下に)いた。

「おかしいと思ったらおかしいといわないとダメだ!」

「なぜ、そんなことをしているんだ!」

私は、1000本ノックのようなダメ出しを繰り返すばかりだった。


ある店では、こんなことがあった。

「メガネが壊れて困っているんです。急いで作ってくれませんか」

夜遅く、駆け込んできたお客さまにたいし、スタッフはこう返したのだ。

「申し訳ありません、あと1時間で閉店なので、ほかの店にいってください」

なぜそんな、顧客満足とは正反対の接客ができるのか。聞けば、本社から、コスト削減の一環として、残業代を削るよう命じられていたのだ、本社のいうなりになるあまり、「困っているお客さまのために」という、サービスの根本が見失われていた。

接客スタイルも、おかしなことになっていた。

当時のメガネスーパーは、基本的に「待ち」の姿勢で接客をしていた。スタッフが店頭にたって呼び込みをせず、お客さまが来店しても近寄っていかず、声もかけなかった。

なぜだ? 放っておいてもお客さまがきてくれた時代ならよかったのだろうが、こうして店に閑古鳥が鳴いているのにじっと待つ、というのは不可解だ。

理由を尋ねると、彼らはこう答えた。

「お客さまにゆっくり見てもらうため、声をかけないようにしていました」

このとき一つ、わかったことがある。彼らは彼らで「よかれと思って」やっていることがたくさんあるということだ。また、もともとメガネ学校を運営していたこともあるメガネスーパーには眼の検査やメガネ加工の技術者が多い。接客は基本、苦手だったのである。

しかしそれは、小売業の本来あるべき姿とは、まるで真逆だ。

誰かがサボっているわけではないのだが、どこか歯車がかみあっていない。やるべきことをやらない理由ばかりを探している。足下の既存店売上は、前年比80~85%ほどで推移しており、毎月の赤字額は2億円に達していた。お客さまをただ待っているヒマなど、あるはずがないのに。

こういうときは論より証拠、スタッフの目の前でやってみせるのが手っ取り早い。

私は、店頭で呼び込みを始めることにした。

すると、どうだろう。たったそれだけのことで、店内をのぞいてくださるお客さまが増えるのだ。入店してくださったお客さまにアプローチすれば、メガネも自然に売れていった。

これで、スタッフが「接客しない理由」が、一つなくなった。

声をかければメガネは売れる。声をかけなければ売れない。ちょっとしたことだが、これは大きな可能性を感じさせる発見だった。

やることをすべてやった上で赤字を脱出できないのなら、文字通り「万策尽きた」とサジを投げるほかない。私の出番もなかったことだろう。だが、自分が現場そのものになってみると「やるべきことをやっていない」現実が明らかになった。つまり、メガネスーパーには打つべき手がまだまだ残されている、ということ。ここには伸びしろがあるのだ。

「よかれと思って」が逆効果

私がメガネスーパーにやってくる以前から、ファンド主導で経営改革が進められていた。

それら一つひとつを見る限り、どれも決して悪い施策ではなかったように思う。しかし、どこかチグハグで、現場の感覚とズレがあった。

「よかれと思って」始めたものの、現場では効果なし。それでも「会社がいうなら仕方がない」と放置されたまま、というのが、よくあるパターンだった。

ある店舗では「入り口の木の格子の飾りが邪魔だ」という声がスタッフから上がっていた。

経営改革にあたって全面的にリニューアルされ、経営陣も絶賛していたオシャレな店舗だったのだが、

「格子があるせいで、外にいるお客さまが店内をのぞけない」

「スタッフからも外の様子がわからない」

と、現場からの評価は散々なのである。

「だったら、今すぐ外してしまおう」と私はいった。

「いやいや、大変なことになります」とスタッフが答える間もなく、脚立に乗ってバキバキと外してしまった。皆、仰天である。

だが、売上をあげるため、私たちが向き合うべきは経営陣でも上司でもなく、お客さまであるはずだ。その、肝心のお客さまが「格子が邪魔で、店に入りにくいと感じている」というのなら、「外す」という判断を下すのに、躊躇はいらないと私は思う。

そこで「外せない」理由を持ち出すのは、ものを考えているように見せかけた、思考放棄だ。

「そんなことして、本当にいいんですか……」とスタッフは不安そうにしていたが、社長がこうしてやってみせているのだから、いいに決まっている。

「何がダメなんですか? 経営陣がいったことでも、機能していないことは変えていかないと、売上は上がらないでしょう」

なんどもそう話した。

これでまた一つ、やらない理由がなくなった。はい次! である。



星﨑 尚彦

カテゴリ:スキルUP

【著者紹介】星﨑 尚彦(ほしざき・なおひこ)
1966年生まれ。早稲田大学法学部卒業後、三井物産(株)に入社。MBA取得後の2000年、スイスの宝飾メーカー「フラー・ジャコー」日本法人の経営者に就任、短期間で同社業績の飛躍的向上に成功。2012年にアドバンテッジパートナーズからの要請により、アパレルメーカー「クレッジ」の経営再建を担い、1年半でV字回復を達成。2013年6月、メガネスーパーの再建を任され、2016年に同社9年ぶりの黒字化を果たす。2017年11月には株式会社ビジョナリーホールディングスの代表取締役社長に就任。

【書籍紹介】『0秒経営 組織の機動力を限界まで高める「超高速PDCA」の回し方』(KADOKAWA)

あなたへのオススメ記事

  • 「やらないこと」を決めて、時間を上手に使う/儲ける社長の24時間365日①
  • 赤字からのV字回復に必要だった、たった1つのこと/0秒経営①
  • メガネ戦国時代に、メガネスーパーは負けるべくして負けた/0秒経営②
  • 実態の見えない「現場」って誰だ?社長が現場になることでわかったこと/0秒経営③
  • 知っていたら自慢せずにはいられない! マニアックすぎる雑学クイズ

    知っていたら自慢せずにはいられない! マニアックすぎる雑学クイズ

  • 食通だったら全問正解!? 日本ならではの「食べもの」クイズ

    食通だったら全問正解!? 日本ならではの「食べもの」クイズ

  • その言い方、大丈夫? 上司&取引先への言葉遣いのマナー

    その言い方、大丈夫? 上司&取引先への言葉遣いのマナー

  • 知られざるエピソードにびっくり! ネーミングの秘密がわかるクイズ

    知られざるエピソードにびっくり! ネーミングの秘密がわかるクイズ

  • 喪服が黒なのはなぜ? 日本文化を深掘りするクイズ

    喪服が黒なのはなぜ? 日本文化を深掘りするクイズ

  • 観戦がもっと楽しくなる!? スポーツの英語雑学クイズ

    観戦がもっと楽しくなる!? スポーツの英語雑学クイズ

スキルUPの人気記事ランキング

  • 「10日以降」「10日以後」では10日を含む? 含まない?/毎日雑学

  • 一白水星の2020年は大転換の年。1月は口論に注意、麺類が吉/展望と開運2020(1)

  • 五黄土星の2020年は久々の高運期! 1月は心身ケアを忘れずに/展望と開運2020(5)

  • うさぎは寂しいと死ぬって本当?なぜそう言われるようになったの?/毎日雑学

  • 知ってる? ミーハーの意味と語源。実は英語じゃなく「みいはあ」だった!/毎日雑学

資格・スクール情報

  • 中小企業診断士とは? 試験&仕事内容を解説

    中小企業診断士の仕事内容は? 養成課程って何? 中小企業診断士について知っておきたいことを詳しく解説します。

    中小企業診断士とは? 試験&仕事内容を解説
  • 行政書士とは? 試験&仕事内容を詳しく解説

    行政書士って何? どんな仕事をするの? 試験の難易度は? 行政書士に関する素朴な疑問を解決します。

    行政書士とは? 試験&仕事内容を詳しく解説
ページトップに戻る