スキルUP

「女性管理職比率の向上」を目指す考え方は古い!/モチベーション・ドリブン②

せっかく取り組んだ働き方改革が、あなたの会社を壊すかもしれない……。日本の組織変革の第一人者である小笹芳央著『モチベーション・ドリブン 働き方改革で組織が壊れる前に』から、表層的な働き方改革が抱えるリスクとその回避方法をご紹介します(第2回)。

男性・女性から「個性」へ

働き方改革のメニューの一つである女性管理職比率の向上は、「女性の活躍=女性の管理職登用」という考え方が前提にある。これは「活躍に対する報酬=地位の提供」という古い人間観に基づいている。こうした人間観というレベルでボタンを掛け違えていると、働き方改革はまずうまくいかない。

ところが、現在の多くの働く女性のうち、管理職になってリーダーシップを発揮したい、そのために地位報酬を得たいと考えている人は実は少数派ではないかというのが私の実感だ。

自分の専門性をさらに研ぎ澄ましてプレイヤーとして活躍したい人、ナンバー2としてリーダーを支えることに情熱をもつ人、育児や介護のために今はとにかく時間限定で働きたい人など、働く女性の考え方は十人十色で様々だ。

にもかかわらず、女性管理職を増やすことだけが目標になっているため、登用される女性たち自身が、困惑しているケースがある。現場の実態に働き方改革がまったく合っていないのだ。


女性活躍を掲げて働き方改革を進める安倍政権でも、2018年11月現在、女性閣僚は一人しかいない。日本においては、どの企業、どの組織においても、女性管理職の適任者は少ないのが現実だ。

もっといえば、女性、女性と声高に叫んでいること自体が前時代的で、男性や女性ではなく、「個性」を活かすことが、本当はずっと前から求められているのだ。

個性とは、「One for All, All for One」でいうところのONEだ。ONEが輝くためには、役職やポストも大事かもしれない。しかし、それだけでは、十人十色の現在のONEの多くを輝かせることはできない。

報酬においても、金銭報酬や地位報酬に加えて、感情報酬も視野に入れた統合的な報酬設計をしなければならない時代になっており、働き方改革においても、限定合理的な感情人という人間観を無視して推進することは不可能なのだ。

女性管理職比率の向上は百害あって一利なし

女性管理職比率の向上という働き方改革のメニューは、まずモノサシが間違っていると考えている。だから、女性管理職比率の向上について相談されたときには、次のように聞く。

「それって意味あるんですか?」

もちろん、女性管理職比率というモノサシがあってもいい。しかし、一番大事なのは、女性従業員と企業のエンゲージメント度合いだ。

従業員エンゲージメントとは、簡単にいえば、企業と従業員の相互理解・相思相愛度合いのことだ。

女性従業員のエンゲージメントが高ければ、管理職比率が5%でも、10%でも問題はない。管理職でなくても、企業と強いエンゲージメントで結ばれている女性従業員が多いほうが、よっぽど自然な、あるべき姿ではないだろうか。

私は、女性従業員のエンゲージメントを高めることが、本当の意味での女性活躍推進だと考えている。


女性管理職比率は、旧来の人間観に基づいたモノサシだ。管理職にすることが活躍推進であるとする考え方自体が古い人間観を前提にしている。その前提がズレていると思うから「それって意味あるんですか?」と聞くのだ。

ただ、私のところに相談に来るのは、人事担当役員や人事部長のため、「上から言われており、目的化しているので、何年以内に20%にしなきゃいけないんです」などと答える人が多い。

「しなきゃいけない」ということは、無理やりにでも上げなければならないということで、男性に対する逆差別になるのではなかろうか。

当社には、「カンパニーアドミニストレーター」、通称「CA」と呼ばれる役職がある。このCAは、管理職ではない。部長の秘書的な役割であり、いってみれば嫁的な役割でもあり、部のメンバーにとっては、精神的な支柱となっている役割でもある。CAで組織の雰囲気も変われば、業績も変わるからだ。だから、女性社員の憧れの役職になっている。当然、CAには、女性だけでなく男性もなれる。だが実際、男性がCAになったケースでは、うまくいかないことが多かった。

結果、現在のCAは全員女性だ。女性管理職も、結果として人数が増え、比率が上がるのが本来であり、無理やり上げようとすることに意味はない。

いや、意味がないどころか、管理職を期待されたり、打診される当の女性が困惑しているのなら、害があるとさえいえる。

目的化された女性管理職比率の向上は、「百害あって一利なし」ではないだろうか。

小笹 芳央

カテゴリ:スキルUP
【著者紹介】小笹 芳央(おざさ・よしひさ)
1961年生まれ、大阪府出身。早稲田大学政治経済学部卒業後、株式会社リクルート入社。組織人事コンサルティング室長、ワークス研究所主幹研究員などを経て、2000年株式会社リンクアンドモチベーション設立、同社代表取締役社長就任。2013年代表取締役会長就任。著書多数。

【書籍紹介】『モチベーション・ドリブン 働き方改革で組織が壊れる前に』(KADOKAWA)

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