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個人と企業の関係は、選び、選ばれる「相互選択関係」に変化した/モチベーション・ドリブン⑥

せっかく取り組んだ働き方改革が、あなたの会社を壊すかもしれない……。日本の組織変革の第一人者である小笹芳央著『モチベーション・ドリブン 働き方改革で組織が壊れる前に』から、表層的な働き方改革が抱えるリスクとその回避方法をご紹介します(第6回)。

「相互拘束関係」から「相互選択関係」へ

これまで、「完全合理的な経済人」から「限定合理的な感情人」へと人間観を変え、「要素還元できない協働システム」という組織観をもつことが、働き方改革、組織変革を行ううえで大切な前提になると述べてきた。

続いて、「One for All, All for One」のONEである、個人にとっての働き方改革を考えてみたい。


近年、個人と企業との関係性が変化している。

戦後から高度経済成長期ぐらいまでは、日本人はお金を求めて働いていた。どんなにつらい仕事内容であっても、厳しい上司がいても、生活をしていくためにはお金が必要であり、そのために働いた。多くの日本人は、「食べるため」に働いていたのだ。

逆にいうと、当時の日本人は、お金だけを求めて働いており、それ以外のことを求めて働く人はごく少数であった。

したがって、企業も個人に対して「カネ」という金銭報酬と「ポスト」という地位報酬を与えていればよかった。

また、終身雇用、年功序列の企業がほとんどであったため、一度入社したら定年まで働き続ける人が大多数であった。個人と企業との関係性は長期的なものであったのだ。


しかし、経済が豊かになった現在、こうした個人と企業との関係性に変化が表れた。

まず、個人の働く目的は、お金以外にも広がった。もちろん、今でもお金を稼ぐために、食べるために働いている人はいるし、誰だって一部はそうだろう。

ただ、大多数の人たちは、上司や同僚に認めてもらいたいという「承認欲求」や、自分の専門性を高めたいという「成長欲求」、誰かに貢献している実感をもちたいという「貢献欲求」など、お金以外の目的のために働くようになった。

マズローの欲求階層説でいえば、生理的な欲求や安全の欲求といった段階から、社会的欲求や承認欲求、自己実現欲求といった高次元の欲求を満たさんとする人たちが大幅に増えたのだ。そして、こうしたお金以外に広がった十人十色の欲求を実現するために転職することすら当たり前となった。


これらのことにより、個人と企業との関係は、縛り、縛られる「相互拘束関係」から、選び、選ばれる「相互選択関係」に変わった。

では、相互拘束関係から相互選択関係に変わったことで何が起きているだろうか。

答えは、二極化だ。個人も、組織も、二極化が進んでいる。

相互選択関係というのは、いわば自由恋愛と同じだ。人気のある人には多くの人たちが恋焦がれるが、人気のない人には誰も近づかない。

優秀な個人は多くの企業から引く手あまたで高額報酬を提示されるが、そうでない人はなかなか就職できず、面接の機会すら与えられない人もいる。

企業も同様だ。人気企業には多くの人が集まるが、魅力のない企業からは人がどんどん去っていく。

モテ人材・モテ企業と、モテない人材・モテない企業とに二極化が進んでいるのが、現代の日本なのだ。あなたは、そしてあなたの属する組織は、どちらだろうか。

企業と人間の寿命が釣り合わない

変化は、個人だけではなく、企業にも起きている。

まず、商品のライフサイクルが短くなった。

たとえば、日本の主要製品である自動車は、ひと昔前まで、一度ヒット車種を生み出せば、それから数年間は売れ続けた。しかし、今は違う。

ヒット商品を生み出しても、それを模倣したかのような類似商品がすぐに登場する。類似商品があふれることで消費者に飽きられるのが早くなり、短期間でヒット商品はただの商品となってしまう。

ソフトの世界は、さらに商品やサービスのライフサイクルが短い。スマートフォンのアプリは毎日続々とリリースされ、日々便利に更新されている。

商品市場の競争は激化しており、ヒット商品を生み出し続けられない企業は、どんどん衰退していく。

だから、企業のライフサイクルも短くなっている。今や、企業の寿命は平均30年といわれるほどだ。一方で、個人の寿命は長期化しており、人生100年時代といわれるようになった。

つまり、個人の寿命よりも、企業の寿命のほうが明らかに短くなったのだ。自分の寿命よりも企業の寿命のほうが短いということは、一つの企業に身を寄せる、身を委ねることが、論理的に考えて個人にとって得ではなくなったということだ。

こうした企業の短寿命化の影響もあり、新卒で大企業に入れば定年まで安泰という人生モデルは崩壊の一途をたどっている。

また、ひと昔前までは、企業に入れば、企業が個人のキャリアを考えて仕事のローテーションを組んでくれた。個人は、自分のキャリアを意識することも、考える必要もなかったのだが、今は、自分が主体となって自分のキャリアを切り開いていく必要がある。

企業という大きな看板に個人が守られていた時代は終了したのだ。



小笹 芳央

カテゴリ:スキルUP

【著者紹介】小笹 芳央(おざさ・よしひさ)
1961年生まれ、大阪府出身。早稲田大学政治経済学部卒業後、株式会社リクルート入社。組織人事コンサルティング室長、ワークス研究所主幹研究員などを経て、2000年株式会社リンクアンドモチベーション設立、同社代表取締役社長就任。2013年代表取締役会長就任。著書多数。

【書籍紹介】『モチベーション・ドリブン 働き方改革で組織が壊れる前に』(KADOKAWA)

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