スキルUP

高額報酬で高スキルな人材を集めても、業績は上がらない/モチベーション・ドリブン⑧

せっかく取り組んだ働き方改革が、あなたの会社を壊すかもしれない……。日本の組織変革の第一人者である小笹芳央著『モチベーション・ドリブン 働き方改革で組織が壊れる前に』から、表層的な働き方改革が抱えるリスクとその回避方法をご紹介します(最終回)。

高スキル人材をかき集めても業績が上がらないのはなぜか

流行に飛びつくのと同様に、高いスキルをもった人材にやたらと飛びついて、高額報酬で次々と採用する企業がある。

しかし、こうした企業の多くはうまくいかない。なぜなら、そのスキルに魅せられるあまり、自分の企業が目指す姿や文化、DNAなどに対して、従業員全員の共感度合いが薄いからだ。

「for All」として束ねるビジョンなり、理念なり、考え方がないために、どんなにスキルが高い人を雇っても個人能力を発揮するにとどまってしまい、組織力が発揮されることがない。

スキルが高い人がリーダーになっても、根本の考え方や目指す姿が共有されていなければ、メンバーがつらくなり、「何なんですか、あの人は」となる。


特にスタートアップには、こうしたスキル人材偏重に陥る企業が多い。

スキルが高い人を雇って、「自由にやっていいよ。成果出してね」といったら、業績が上がるわけではまったくないのだ。

人間は限定合理的な感情人なので、要素還元的に個人が仕事をして、その集まりが企業である、ということではない。直接間接的な連携関係や協力関係があり、そうした関係を心地良く感じる人もいれば、逆に、関係に苦しむ人もいる。組織によって苦しんでいる個人もいれば、組織からかけがえのないもの、生きがいを与えられたと感じて働いている人もいる。

それぐらい人間は感情人なので、組織文化とのフィット度合いや良好な人間関係、組織からの承認といったものが、昔以上にものすごく重要度を増している。

つまり、感情報酬がどんどん大事になってきているのだ。

感情報酬を適切に提供し、従業員の意欲を高め、成長エンジンとしている企業を、私たちは「モチベーションカンパニー」と呼んでいる。

モチベーションカンパニーでは、金銭報酬や地位報酬に加えて、働く個人一人ひとりに感情報酬を提供する。それによって、優秀な個人を引き寄せる。


勘違いする人はいないだろうが、金銭報酬と感情報酬の関係でいえば、金銭報酬が大前提となる。金銭報酬は生きていくうえでの食い扶持だから、なくては生きていけないものだ。金銭報酬があっての感情報酬である。

ただ、金銭報酬がある程度まで得られたら、金銭報酬が5%増えるよりも、感情報酬が10%増えるほうが嬉しいと感じる。それが今の働き手だ。

生き死にのレベルでギリギリ生活している人はよりお金がほしいと思うが、たとえば、年収が500万円を超えたら、感情報酬のほうを求めるようになる。

さらに年収が1000万円を超えたら、それは自分の自尊心を保つ記号となり、1500万円になればさらに記号化する。

自分の尊厳や承認されている感覚、誰かに貢献している実感、そういったものを強く求めるようになるのだ。

企業にとって新陳代謝は必然

国全体として人材が流動化することは、リソース配分として当然のことだ。

これは企業にも当てはまる。企業を一つの生命体と考えれば、一定レベルの新陳代謝は必要だ。

しかし、人材を次々に採用しては、次々と辞められてしまう企業がある。これは、一定レベルを超えてしまっており、過剰な新陳代謝だといえる。人材のコストアップにもなり問題だ。

一定レベルが何%ぐらいなのかは、業種・業界にもよる。だが、適度な新陳代謝は企業にとって必然なのだ。なぜなら、企業には常に変化が求められるからだ。ビジネスモデルを変えることもあれば、競争ルールが変わることもある。新しいビジネスに挑戦することも多くなった。


企業の変化に対して、働く個人が企業に合わせて自分をチューニングしようという意識があり続ければ、その企業に残ることになる。しかし、「ちょっと違うな」と思えば、辞める。

こうした個人がいることは自然なことで、企業にとっても、個人にとっても互いに幸せなことである。だから、適度な新陳代謝は企業にとって必然なのだ。過度な人材流出はすぐに対策するべきだが、ある程度の新陳代謝を過剰に恐れることはない。

小笹 芳央

カテゴリ:スキルUP
【著者紹介】小笹 芳央(おざさ・よしひさ)
1961年生まれ、大阪府出身。早稲田大学政治経済学部卒業後、株式会社リクルート入社。組織人事コンサルティング室長、ワークス研究所主幹研究員などを経て、2000年株式会社リンクアンドモチベーション設立、同社代表取締役社長就任。2013年代表取締役会長就任。著書多数。

【書籍紹介】『モチベーション・ドリブン 働き方改革で組織が壊れる前に』(KADOKAWA)

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