スキルUP

「凡人が天才を殺す」悲劇を起こさない組織の在り方とは/けいろー

世の中の人間を「天才」「秀才」「凡人」に分けるとき、才能に恵まれた「天才」を殺さず、組織の中で創造性を発揮させるにはどうしたらよいのでしょうか。ベストセラー『天才を殺す凡人 職場の人間関係に悩む、すべての人へ』(北野唯我著)について、ライターのけいろーさんが紹介します。

2018年2月、ある個人ブログの記事が話題になりました。

タイトルは、「凡人が、天才を殺すことがある理由。――どう社会から『天才』を守るか?」。Facebookで1万回以上もシェアされたこの記事は、公開間もなく30万PVを記録。各界の著名人からもコメントが寄せられるなど、瞬く間にウェブ上に広がっていきました。

そんな記事の内容をよりわかりやすく、誰でも読みながら理解できるように再構成したのが、本書『天才を殺す凡人 職場の人間関係に悩む、すべての人へ』(北野唯我著/日本経済新聞出版社)です。

元になった文章は私も読んでいたのですが、なんとなく漠然とした印象で語られているように感じられて、あまり共感できませんでした。

しかし、本書を読んでその認識を改めました。

「天才の生かし方」を論じているように思われた筆者の主張は、同時に「凡人の立ち回り方」や「秀才との関わり方」を述べたものでもあったのです。

前提となる「才能とはなんぞや」という話も納得のいくもので、とてもおもしろく読めました。

3つの「才能」とは

そもそもの問題として、「才能」とはいったいどのようなものなのでしょうか。本書ではまず「才能」を3種類に分け、読者がどれに近い人間であるかを問い掛けています。

“1. 独創的な考えや着眼点を持ち、人々が思いつかないプロセスで物事を進められる人

2. 論理的に物事を考え、システムや数字、秩序を大事にし、堅実に物事を進められる人

3. 感情やその場の空気を敏感に読み、相手の反応を予測しながら動ける人”(P.34より)

この3者はそれぞれに異なる評価基準を持っており、1は「創造性」という軸で物事を評価する「天才」、2は「再現性」を基準に考える「秀才」、3は「共感性」を重視する「凡人」であるとしています。

この説明によれば、「凡人」と言ってもすべてにおいて劣っているわけではなく、「共感性」の面では天才の持ち得ない視点や判断ができるそう。

また、すべての人がはっきりと3つのパターンに分けられるというわけでもありません。

「創造性」「再現性」「共感性」の軸は誰しもが自分の内に持っており、特に何を重視しているかによって、その人を「天才」「秀才」「凡人」のいずれかに分類しています。

各々が異なる評価軸で物事を考えることの多い、天才・秀才・凡人の三者。ビジネスにおける意思決定の場では、その「軸」の違いが衝突につながることも珍しくありません。

・どのような業界においても、組織が大きければ大きいほどに天才の語る「創造性」は軽視されやすい。

・秀才が説く「再現性」によって経営を軌道に乗せることが重視され、そこに組織の大多数を占める凡人が「共感」して追従する。

・結果、居場所のなくなった天才は、やがて組織を去ることになる――

そんなケースは決して少なくないと聞きます。

では、そのように「天才」を殺さず、組織の中で創造性を発揮させるにはどうすればいいのでしょうか。

本書では「天才」「秀才」「凡人」の3者の特徴と関係性を説明しつつ、それぞれの「才能」の生かし方を順を追って明らかにしています。

凡人が持つ最強の武器「自分の言葉」

“天才を殺す凡人”というタイトルが踊る本書ですが、冒頭でも触れたように、何も「天才を台無しにする凡人は悪である」と断言しているわけではありません。

それどころか、凡人には計り知れない天才や秀才目線の考え方をわかりやすく示したうえで、「天才には凡人の存在が不可欠」とまで書いています。

最終的には「凡人としての戦い方(立ち回り方)」に尺を割いて説明するなど、むしろ「凡人」の強みを生かすための考え方が数多く登場するのです。

たとえば、凡人が持つ「最強の武器」について。筆者は本書の後半で、凡人だからこそ発することのできる「言葉」の存在を指摘。

特に社会の大多数を占める凡人ならではの「自分の言葉」こそが、秀才も天才も持ち得ない「最強の武器」であると説明しています。

“凡人が「最強の武器」を手にするための、二つの方法
1. 他人の言葉をデトックスすること。
2. 白状すること。”(P.180より)

どこかの誰かが作った便利な表現ばかりを使うのではなく、自分の言葉で物事を語ることの大切さ。

小学生でもわかるような表現を用いて、自らのありのままを白状すること。そのような過程を経れば、必ず人を動かすことができる。筆者はそう断言しています。

ただでさえせわしない仕事の中では、説明を短縮するために難しい言葉を使いがち。もちろん、それによって効率的な連絡や意思決定ができていることは間違いありません。

しかし一方では、そうやってショートカットすることで取りこぼしてしまっているものも、少なからずあるのではないでしょうか。

意見が対立したときや、初対面の相手を動かそうとするときにこそ、「等身大の言葉」が必要になる。そして、それを効果的に使えるのが「凡人」の強みである――。

この指摘自体がシンプルながら力強いものであり、ひとりの凡人として、読んでいて強く共感しました。

90分で読める物語

ところで、もともとはブログ記事だった本書。その内容ですが、書籍化されるにあたって大きな変更が加えられています。と言うのも、本書はいわゆる「ストーリー形式」のビジネス書なのです。

「物語」の体裁をとったビジネス書について、苦手意識を感じる人もいるかもしれません。

かく言う私も序盤は懐疑的な目で読み進めていました。ですが最終的には、「ストーリー形式だからこそすんなりと理解できた」と言えるほどに読みやすく感じたのも事実です。

本書の登場人物は、それぞれが役割を持っています。主人公は「凡人」であり、彼の勤める企業の社長は「天才」。そのほかのキャラクターにも、各々に異なる役割が与えられています。

「才能」という目に見えない概念を知るにあたって、人物別に割り振られたこの「役割」の存在は間違いなく理解の手助けとなりました。

そして巻末の解説によれば、この本は次のような意図で書かれているそうです。

“この本は、日本の組織が抱える問題をギューっとエッセンスだけ濃縮し、「90分で読める物語」にすることを目指したものなのです。”(P.223より)

誰しもが持つ「才能」について紐解いた内容でありながら、「組織論」としての気づきも多い本書。

読みはじめた当初は若手社員向けのハウツー本という印象がありましたが、このような点を考慮すると、もっと幅広い世代に勧められる本であると言えそうです。気になった方はぜひ、手にとって読んでみてください。

けいろー

カテゴリ:スキルUP
【著者紹介】けいろー
フリーライター。ネットカルチャーを愛するゆとり世代。新卒入社したメーカーを退職後、趣味で始めたブログ「ぐるりみち。」経由で仕事をもらえるようになり、ノリと勢いで独立。本、グルメ、街歩き、旅行、ネット、アニメなどに関心あり。執筆実績として『HATSUNE MIKU EXPO 2016 Japan Tour』公式パンフレットなど。バーチャルな存在になりたい。

【書籍紹介】『天才を殺す凡人 職場の人間関係に悩む、すべての人へ』(日本経済新聞出版社)

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