スキルUP

問題を発生させる「真の原因」を潰さなければ、同じ失敗を繰り返す/トヨタの失敗学①

「トヨタの現場では、たくさんの問題やトラブルが起きる。でも、『失敗』という言葉はほとんど聞かなかった」。トヨタ在籍40年以上のベテラン技術者がトレーナーを務める(株)OJTソリューションズの著書『トヨタの失敗学 「ミス」を「成果」に変える仕事術』より、仕事の「質」と「速さ」を変えるメソッドをご紹介します(第1回)。

「真因」をつぶせ

何度も同じような失敗を繰り返してしまうのは、それを引き起こす原因を取り除かずに、放置しているからです。

トレーナーの原田敏男は、ある指導先でこんな光景を目にした、と言います。

その工場では不良が発生すると、品質管理部に報告書を提出することがルールになっていました。

いざ不良が発生すると、現場の責任者は毎回、「担当者の判断ミスでした」と報告書に書いて提出していました。

不良が発生した根本的な原因を追究することなく、担当者個人に責任を押しつけてしまうために、何度も「判断ミス」で同じ不良が発生していました。品質管理部も「報告書を出しさえすればいい」というスタンスだったので、不良発生を根本的に解決することを促すことはありませんでした。

毎回、表面的な対策のみを記載した形式だけの報告書で済ませていたので、何度も同じような不良が発生することになります。


トヨタでは問題が発生したら、まず、何が原因でその問題が生じたのかを考えます。その原因を取り除かなければ、何度も同じような問題が再発するからです。


失敗には必ず原因があります。特に問題を発生させる真の原因のことを、トヨタでは「真因」と呼んでいます。

この真因を取り除くことによって、初めて問題は解決し、再発を防止することができます。

一方、同じような問題が何度も起きてしまう場合は、表面上の原因を解消したにすぎず、真因が解決されていないと考えるのです。

「今後はよく注意します」「気をつけます」では終わらせません。第2回目で述べるように「なぜ?」を5回繰り返して、その原因を追究していくのです。

「魔のT字路」で事故が多発する真因とは?

トレーナーの橋本亙(わたる)が働いていた工場では、「魔のT字路」と呼ばれる道路があったといいます。

工場の敷地から一般のバイパス道路に出るためのT字路に信号がついていないので、左折時は合流のための車線にしたがって、右から車が来ていないのを確認しながら曲がります。しっかり確認すれば、事故が起きるようなT字路ではないのですが、続けざまに4件の追突事故が発生していました。

いずれも工場の敷地からバイパス道路に出るため左折する車が、同じように左折しようとしている前方車に追突してしまうパターンでした。

一連の事故を受けて、工場では当然、対策を立てることにしました。注意を促す横断幕を張ったり、T字路に監視員をつけたりと、さまざまな対策を立てましたが、効果はありませんでした。また、信号機を設置してもらえるように警察署に陳情しましたが、実現しませんでした。


しかし、試行錯誤を繰り返すうちに、真因にたどり着いたのです。

T字路には、バイパス道路への合流をガイドするラインが引かれていました。ドライバーは左折をするとき、この合流ラインにしたがって車を進めますが、一方で、右方向から走ってくる車に注意を払っています。しかし、右方向からの車が途切れたタイミングで、複数の左折車が「今だ!」と五月雨(さみだれ)式にバイパス道路に出るときに、前後の車のタイミングとスピードがずれてしまっていたのです。前の車がスピードを落としているのに、後ろの車がスピードを上げてしまうことで、追突事故が起きていました。つまり、いったん停止することなく、複数の車が五月雨式に発進することに原因があったのです。

そこで、橋本たちは、左折の合流ラインを消す手続きをとりました。すると、通常のT字路のように前方の車が発進したあとに、ドライバーがT字路でいったん停止して右からの車を確認してから左折するようになったので、パタリと事故がなくなりました。真因は「左折の合流ライン」だったのです。

「事故の原因はドライバーの不注意にある」というところで思考が止まっていたら、おそらく次の事故が起きていたことでしょう。


このように真因を取り除かないかぎり、同じような問題は何度も発生します。何度も同じような失敗を繰り返してしまう職場は、真因を放置している証拠なのです。


◇ ◇ ◇

失敗には必ずそれを引き起こす真の原因がある。改善で真の原因を取り除かないと同じ失敗を繰り返すことになる。



(株)OJTソリューションズ

カテゴリ:スキルUP

【著者紹介】(株)OJTソリューションズ
トヨタとリクルートが設立したコンサルティング会社。在籍40年以上のベテラン技術者がトレーナーとなり、豊富な現場経験を活かした人材育成、変化に強い現場づくり、儲かる会社づくりを支援。製造・食品・医薬品・金融など、さまざまな顧客企業にサービスを提供。著書は、20万部突破の『トヨタの片づけ』ほか、『トヨタの段取り』『トヨタ仕事の基本大全』『トヨタの問題解決』『トヨタの育て方』『[図解]トヨタの片づけ』『トヨタの上司』、文庫『トヨタの口ぐせ』『トヨタの片づけ』(すべてKADOKAWA)など累計80万部を超える。

【書籍紹介】『トヨタの失敗学 「ミス」を「成果」に変える仕事術』(KADOKAWA)

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