スキルUP

真の原因を解明する前に、まず「なにが起こったか?」を確認する/トヨタの失敗学②

「トヨタの現場では、たくさんの問題やトラブルが起きる。でも、『失敗』という言葉はほとんど聞かなかった」。トヨタ在籍40年以上のベテラン技術者がトレーナーを務める(株)OJTソリューションズの著書『トヨタの失敗学 「ミス」を「成果」に変える仕事術』より、仕事の「質」と「速さ」を変えるメソッドをご紹介します(第2回)。

最初のひと言は「何が起こった?」

トヨタの上司は、部下が失敗をしても、「何をやっているんだ!」「なんとかしろ!」と怒ることはありません。

失敗したのは個人ではなくしくみが悪かったからであり、一度起きてしまったことをとやかく言っても状況はよくならないからです。それよりも、どうやって問題の真因を見つけて、改善し、再発しないようなしくみをつくるかにエネルギーを使います。

したがって失敗をした際にも、基本的にトヨタの上司は部下に対して怒ることはしません。まず、理由を聞きます。


「なぜ、こうなったのか?」


問題が発生すると、トヨタでは「真因を追究せよ」という言葉が飛び交います。「なぜ?」と言うのは、あくまでも事実を確認して、状況を把握し、真因を突き止めるのが目的です。

トヨタには、真因を突き止めるために「なぜ?」を5回繰り返すという文化があります。これを「なぜなぜ5回」などと呼びます。

通常、1回や2回の「なぜ?」では、問題を引き起こす真因にたどり着くことはできません。問題解決に慣れていない人ほど、真因にたどり着く手前で「これが真因だ」と決めつけてしまいます。

だからこそ、3回、4回、5回としつこいほどに「なぜ?」を繰り返すことを意識して、真因に迫っていく必要があります。


たとえば、第1回目で取り上げた「魔のT字路」での交通事故の問題は、真因が道路に引かれていた「左折の合流ライン」でした。

「なぜ?」で考えていっても、「前の車がスピードを落としたときに後ろの車がスピードを上げてしまうから」という段階で原因の深掘りをやめてしまったら、「前の車をよく見て発進する」「『前方注意』という横断幕を掲げる」といった対策を打つことになります。しかし、真因にはたどり着いていないので、これらの対策を講じても、事故は減りません。

「これ以上、『なぜ?』を掘り下げることができない」というところまで、思考を深めることにより、ようやく真因が見えてくるのです。


もちろんケースによっては、3回の「なぜ?」で真因が見つかることもあれば、10回繰り返した末に見つかることもあります。

大切なのは、短絡的に「これが真因だ」と決めつけずに、問題を引き起こす真因を最後まで辛抱強く絞り込んでいくことです。

これを怠ると、同じような失敗が再発する結果となります。

仕事で失敗してしまったら、「なぜ起きたのか?」と自問自答する姿勢が大切です。「なぜ?」と自らに問うと、質問に答えようと脳が活性化し、自然と答えを探そうとするはずです。

「なぜ?」は詰問ではない

部下が失敗したときにも、「なぜなぜ5回」は有効です。部下と一緒に真因を考えていくことによって、同じような失敗を防ぐことができます。

ただし、「なぜ?」の問いかけ方には、少々注意が必要です。

OJTソリューションズで専務取締役を務める森戸正和は、「『なぜなぜ5回』が、誤って理解されているケースもあるように感じる」と話します。


「『なぜ?』という言い方は、相手を詰問しているように聞こえるようです。言い方によっては『なぜ、そんなバカなことをしたのか?』と責められているように感じる人もいるのでしょう。実際、海外では『Five Why』は受け入れられにくい。1回目の『Why?』で険悪な雰囲気になり、2回目の『Why?』で殴り合いのケンカが始まるという冗談もあるくらいです。

自分の失敗に対して『なぜ?』と自問自答するのはいいですが、相手に考えさせるときは、ニュアンスとしては『何が起こった?』のほうがなじむかもしれません。あくまでも事実を確認するというスタンスです」


実際、相手に「なぜ?」を問うときは、まずは「何が起こった?」と尋ねて事実を確認してから、真因を追究していくことをおすすめします。


◇ ◇ ◇

問題が発生したとき、トヨタでは人を叱ることはない。まずは問題を引き起こす真因を追究するのが先決だからだ。



(株)OJTソリューションズ

カテゴリ:スキルUP

【著者紹介】(株)OJTソリューションズ
トヨタとリクルートが設立したコンサルティング会社。在籍40年以上のベテラン技術者がトレーナーとなり、豊富な現場経験を活かした人材育成、変化に強い現場づくり、儲かる会社づくりを支援。製造・食品・医薬品・金融など、さまざまな顧客企業にサービスを提供。著書は、20万部突破の『トヨタの片づけ』ほか、『トヨタの段取り』『トヨタ仕事の基本大全』『トヨタの問題解決』『トヨタの育て方』『[図解]トヨタの片づけ』『トヨタの上司』、文庫『トヨタの口ぐせ』『トヨタの片づけ』(すべてKADOKAWA)など累計80万部を超える。

【書籍紹介】『トヨタの失敗学 「ミス」を「成果」に変える仕事術』(KADOKAWA)

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