スキルUP

小さな問題を放置するのは悪。問題は芽のうちに摘め!/トヨタの失敗学⑥

「トヨタの現場では、たくさんの問題やトラブルが起きる。でも、『失敗』という言葉はほとんど聞かなかった」。トヨタ在籍40年以上のベテラン技術者がトレーナーを務める(株)OJTソリューションズの著書『トヨタの失敗学 「ミス」を「成果」に変える仕事術』より、仕事の「質」と「速さ」を変えるメソッドをご紹介します(第6回)。

「放置」は悪である

トヨタでは、失敗は隠さずに、すべて表に出すのが基本です。

小さい問題であっても、それを隠してそのまま放置していれば、再発するリスクが高くなりますし、大きな問題となって降りかかってくることもあります。

人は、悪い問題であればあるほど隠したがります。怒られるのが目に見えていますから。しかし、悪い問題を放置していれば、状況はますます悪化します。

だから、トヨタでは「バッド・ニュース・ファースト」が実践されています。つまり、都合の悪い問題こそ、隠さずに報告するということです。

トレーナーの土屋仁志は、組長時代にこんな経験をした、と言います。

土屋が所属する研磨工程では、朝、昼、夜の3回、部品の品質チェックをしていました。このとき使用していたのが定規のように、製品の大きさを確認する「ゲージ」です。ゲージは、見本品であるマスターの大きさに合わせて製作され、定期的に製品と照合することで正しく製品が生産されているかを確認するための道具です。

たとえば、部品のサイズが7~8ミリの間に収まっていれば品質に問題がない場合には、上限マスターのゲージは8ミリの大きさで製作されます。土屋の工程には、上限マスターとゲージのみがあり、下限マスターやゲージはありませんでした。

そんなある日、品質不良が発生します。部品の内径が下限の数値より低い製品が流れてしまったのです。

当時は、上限マスターとゲージでチェックすればOKというのが会社のルールでしたが、下限マスターとゲージでもチェックしていれば、今回の問題は防げました。

後日、ある技術員が土屋のところに来て、こんな話を打ち明けてくれました。

実は、2年前にも同じような失敗が発生していたというのです。ただ、そのときは実害もなく、改善の優先順位も低かったため、下限マスターとゲージを導入するといった対策を打たなかったというのです。

土屋は、当時のことを次のように振り返ります。


「現実的なことを言えば、すべての問題に対して対策を打つことはできない。リソースはかぎられていますから、優先順位の高いものから改善していかざるをえません。だから、私には技術員の彼を責めることはできませんでした。実際に、下限マスターとゲージを全社的に導入しようと思えば、億単位の予算が必要になります。私が彼の立場だったら、やはり対策を打てなかったと思います。

ただ、この経験から教訓として心に刻んだのは、小さな問題は放置しておくと、やがて大きな問題となって顕在化するということ。小さくても問題発生の兆候をつかんだら、小さいうちに摘み取っておくのが原則であることはたしかです」

問題を芽のうちに摘む

問題は小さいうちに手を打ち、解決することが大切です。

もちろん、すべての失敗の兆候に手を打つことは現実的ではありませんが、たとえ小さくても同じような問題が2度続くようであれば、早急に対策を施す必要があります。2回も同じ問題が発生するということは、明確な原因が潜んでいるはずです。

たとえば、書類作成で部下が立て続けに計算ミスをした場合。社内の書類であれば、リカバリーも利きますが、お客様に提出する書類で計算ミスをすれば、会社の信用問題に発展する可能性もあります。

その部下がどうやって計算しているのか、どういうプロセスで書類を作成しているのかを確認し、ミスが起きる原因を探ることが大切です。

トヨタでは、どの問題から手をつけるかを判断するために、次の3つの観点から総合的に問題を比較検討することがよくあります。


①重要度――問題が影響を及ぼす範囲と大きさ

②緊急度――ただちに手を打たないと、どんな影響があるか

③拡大傾向――このまま放置しておいたら、どれだけ不具合が拡大するか


客観的に問題の大きさを評価したいときは、3つの項目ごとに、「◎(高)」「○(中)「△(低)」などの記号で評価し、「◎」の多いものを優先するといいでしょう。

ここでのポイントは3つ以上の複数の視点から判断すること。必ずしも先の3つの項目である必要はありません。職場や仕事に合わせて、「実現可能性」(現実的に実行可能か)、「コスト」(お金がかからないか)といった指標を入れてもかまいません。

なお、問題解決の手法について、さらにくわしく知りたい場合は、拙著『トヨタの問題解決』が参考になります。


◇ ◇ ◇

最初は小さな失敗でも、見て見ぬふりをしていれば大きな失敗に拡大する。失敗は絶対に放置してはいけないのだ。

(株)OJTソリューションズ

カテゴリ:スキルUP
【著者紹介】(株)OJTソリューションズ
トヨタとリクルートが設立したコンサルティング会社。在籍40年以上のベテラン技術者がトレーナーとなり、豊富な現場経験を活かした人材育成、変化に強い現場づくり、儲かる会社づくりを支援。製造・食品・医薬品・金融など、さまざまな顧客企業にサービスを提供。著書は、20万部突破の『トヨタの片づけ』ほか、『トヨタの段取り』『トヨタ仕事の基本大全』『トヨタの問題解決』『トヨタの育て方』『[図解]トヨタの片づけ』『トヨタの上司』、文庫『トヨタの口ぐせ』『トヨタの片づけ』(すべてKADOKAWA)など累計80万部を超える。

【書籍紹介】『トヨタの失敗学 「ミス」を「成果」に変える仕事術』(KADOKAWA)

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