スキルUP

表情、口調…「言外の意味」は内容よりも重視される/オープンダイアローグ③

『対話』こそが組織課題の「根本解決」につながる! 大阪ガスエネルギー・文化研究所の主席研究員である鈴木隆著『仕事に効くオープンダイアローグ 世界の先端企業が実践する「対話」の新常識』から、最新の精神療法にもとづく、シンプルで強力なコミュニケーションについてご紹介します(第3回)。

コミュニケーションのとらえ方①意図しなくても、勝手に伝わり続ける

人はコミュニケーションをしないではいられません。もとの英語では、One cannot NOT communicate. と、二重否定で強調されるとおりです。人の活動や人の手になるものはすべてコミュニケーションなのです。何も伝えないように一所懸命努力したとしても、勝手につぎつぎと伝わってしまいます。

試しに、ふたりで無表情かつ無言で向かい合ってみてください。それでもいろいろと伝わってしまうことがわかるでしょう。対面していなくても、届いた電子メールやLINEに返事を出さずに放置するだけで、忙しい・忘れている・後回しにしている・嫌っている・拒んでいるなどが、その時と所の状況に応じて伝わります。

「〇〇さんとは最近コミュニケーションしていない」などと言われることがあります。コミュニケーションしていない、というようなことはありえません。〇〇さんと話をしていないのであれば、「話をしていない」というコミュニケーションを〇〇さんとしているのです。

コミュニケーションは、送り手や受け手の意図を超えて、勝手に同時多発的に循環するやりとりです。コミュニケーションのたとえとして、よくキャッチボールが引き合いに出されますが、双方から雪を丸めつぎつぎに投げ合う雪合戦にたとえたほうが適切です。

コミュニケーションのとらえ方②雑音である関係を重視して、内容を判断する

コミュニケーションには、「内容」と「関係」のふたつのレベルがあります。

まず、内容そのものを伝える、通常考えられているコミュニケーションがあります。それに加えて、関係を伝えて行動を限定・拘束するメタ・コミュニケーションがセットになっているのです。

メタというのは、〝より高い次元の〟という意味です。メタ・コミュニケーションは、コミュニケーションの一段上のコミュニケーション、コミュニケーションについてのコミュニケーションということです。

実は、わたしたちは、内容そのものよりも、それより高次にある関係に、よりいっそう注意を払っています。コミュニケーションが主にことばで行われるのに対して、メタ・コミュニケーションは、表情・口調・姿勢など、非言語行動で多く行われます。「目は口ほどに物を言う」と言われるとおりなのです。

メタ・コミュニケーションは無意識に行われることが多く、感情を理解する手がかりとなります。ことばでは語られない本音が現れます。最近では、こうした「正直シグナル」のデータをセンサー機器で収集し、統計分析する取り組みも行われています。たとえば、経営者は、ビジネスプランの内容そのものよりも、提案者の自信や決意を示すシグナルに、より大きな影響を受けることなどが確認されています。

このように、行動に影響を与える関係のメタ・コミュニケーションにこそ着目しなくてはなりません。もっぱら内容を重視して、それ以外は雑音として切り捨てる電気通信とは逆に、関係を伝える雑音こそが、人のコミュニケーションにとって内容以上に重要なのです。

たとえば、上司が「忌憚(きたん)のない意見を聞かせてほしい」などと口では言っても、しかめ面で腕組みしていては、部下はだれも本音を話そうとはしません。同じ「バカ」と言うのでも、上司が部下を叱責する場合と、彼氏が彼女に囁(ささや)く場合とでは、受け取られ方が違います。

電子メールは文字だけなので関係を伝える術(すべ)が限られます。電子メールの絵文字や顔文字は、文字の内容に関係を加えて伝えるための工夫です。たとえば、「バカ」とだけ送ると怒られますが、♡を付けて「バカ♡」として送るとニヤニヤされるでしょう。

人は内容だけでなく、関係も同時に伝え受け取っています。このふたつは切り離すことができません。内容を伝えることばだけに限らず、関係を伝え、行動の拘束をもたらすものすべてを、広くコミュニケーションとしてとらえなくてはなりません。

鈴木 隆

カテゴリ:スキルUP
【著者紹介】鈴木 隆(すずき・たかし)
東京大学法学部卒業後、大阪ガス入社。国際大学大学院国際関係学研究科修了。2001年、社内起業により国内初の本格的な住宅リフォーム仲介サイト「ホームプロ」を立ち上げる。現在、大阪ガスエネルギー・文化研究所の主席研究員。

【書籍紹介】『仕事に効くオープンダイアローグ 世界の先端企業が実践する「対話」の新常識』(KADOKAWA)

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