スキルUP

「異質」の排除で会議がありきたりに。誤解やずれこそが大切/オープンダイアローグ⑤

『対話』こそが組織課題の「根本解決」につながる! 大阪ガスエネルギー・文化研究所の主席研究員である鈴木隆著『仕事に効くオープンダイアローグ 世界の先端企業が実践する「対話」の新常識』から、最新の精神療法にもとづく、シンプルで強力なコミュニケーションについてご紹介します(第5回)。

会議がいつも「ありきたりな話」になるわけ

コミュニケーションで伝わる内容としての情報は、ベイトソンさんによれば、「違いを生む違い(a difference which makes a difference)」です。違いを生まない違い(a difference which makes no difference)、すなわち、どっちだっていいようなただの違いではなく、違っていることに違いがある違いです。

たとえば、花の種類についていえば、桜の花といっても厳密には一輪一輪違いますが、植物学者でもない一般の人たちには、それは違いを生まないただの違いです。桜の花と梅の花の違いこそが、花の種類としての違いを生む違い、すなわち情報です。テレビのリモコンのチャンネルや音量は、だれにとっても違いを生む違いとしての情報ですが、使うこともない機能は、テレビメーカーの技術者にとっては違いを生む違いであっても、一般の生活者にとっては違いを生まないただの違いにすぎません。

にわとりの学習実験でも、違いを生む違いという情報の定義が裏づけられています。薄い灰色の標識のあるエサを食べ、濃い灰色の標識のエサを食べないように、にわとりに数百回の強化訓練を行います。そのあと、濃い灰色の標識を取り除き、薄い灰色よりもさらに薄い灰色の標識に置き換えたところ、かなりの頻度でこちらを食べるようになりました。つぎに、当初の濃い灰色の標識とさらに濃い灰色の標識にしたところ、今度は当初の濃い灰色の標識のエサを食べる頻度が多くなりました。にわとりも、違いを生む違いとして情報を認識していることが明らかとなったのです。

同じような経験しかない社内の似たようなメンバーばかりで会議をしても、いつも「ありきたりな話」にしかならないのは、違いを生む違いである情報が枯渇するからです。異質な経験がないと、比べることができず、違いを見いだせません。自身や自社を知るためにも、外へ出て他者や他社を知らなければなりません。異質なメンバーを加えなくてはならないのです。

有益な誤解による理解

こうした情報のやりとりだけでは、実はまだ空疎で無意味です。情報の受け手が送り手とやりとりするなかで、その意味を生みだすことが必要です。人間は意味を求める存在であり、コミュニケーションは意味の追求のための営みなのです。

実際にやりとりされる情報の意味は、受け手の置かれた時と所の状況(コンテクスト)に応じて、送り手とやりとりするなかで受け手が生みだすことになります。

たとえば、「すみません」と言われても、お詫(わ)びなのか、お礼なのか、はたまた来意を告げているのか、状況によってその意味は異なります。「お上手ですね」と言われても、称賛なのか、皮肉なのか、状況によって意味は正反対になりえます。意味は、物事に内在している何かを見いだすのではなく、物事に関わる関係から生みだされるものなのです。

コミュニケーションにおいて、実際に状況がどこまで当事者どうしで共有できているかは、定かでありません。状況は、人の関心に応じてつくりだされるものだからです。しかも、コミュニケーションのたびに、それぞれの状況は上書きされ、変化していきます。さらに、状況そのものの認識ばかりでなく、理解の基盤となる状況についてのイメージ、体系的な知識や個別の知識についても人それぞれです。たとえば、仕事といっても、嫌だと苦痛に思う人もいれば、楽しいと快楽を感じる人もいます。完全に同じ内容を共有していることはありえません。

コミュニケーションは、いわば有益な誤解をし合いながら理解し合うという、複雑で微妙な行為なのです。さらに、こうしたコミュニケーション以前に、わたしたちの知覚する対象、認識する世界が、まったく同じであるということからしてありえませんから、コミュニケーションにおいても不一致や食い違い、ずれやゆらぎが生じないほうが不思議です。このようにコミュニケーションは、理解するための試行錯誤の繰り返しなのです。

鈴木 隆

カテゴリ:スキルUP
【著者紹介】鈴木 隆(すずき・たかし)
東京大学法学部卒業後、大阪ガス入社。国際大学大学院国際関係学研究科修了。2001年、社内起業により国内初の本格的な住宅リフォーム仲介サイト「ホームプロ」を立ち上げる。現在、大阪ガスエネルギー・文化研究所の主席研究員。

【書籍紹介】『仕事に効くオープンダイアローグ 世界の先端企業が実践する「対話」の新常識』(KADOKAWA)

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