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会社が倒産したらどうなる? 会社更生法と民事再生法の違いは?/池上彰の経済④

日々のテレビや新聞、ネットに踊る「経済」や「政治」のニュース。そこに登場する「コトバとその意味」をあなたは理解していますか? 経済や政治の情報を正しく読み解くために最低限必要なポイントを、『イラスト図解 社会人として必要な経済と政治のことが5時間でざっと学べる』(池上彰著)からお伝えします(第4回)。

支払い不能で「倒産」に

「倒産」とは、要するに会社がつぶれることです。債務(さいむ)の支払いが不能になった状態のことを指します。「債務」とは、借りたお金を返す義務のこと。つまり借金です。企業が取引先に支払わなければならない代金を支払えなかったり、銀行からの借金が返せなくなったりする状態のことです。

たとえば、企業が取引先から商品を買った際、通常は「手形(てがた)」で支払います。手形とは、「必ず支払います」という約束。ここには支払日が指定されています。言ってみれば、その支払日までお金を借りていることになります。これが、債務ということになります。

手形を受け取った企業は、その手形を銀行に持ち込んで、「現金に換えてください」と要求します。銀行は、手形を発行した会社が銀行に持っている当座預金の口座から、その金額を引き落とします。これを「手形を落とす」と言います。

ところが、手形を発行した会社の銀行口座に十分な預金がないと、手形を現金に換えることができません。これを「手形が落ちない」と言うこともありますし、「手形が不渡りになる」という表現をすることもあります。

この不渡りが一回発生しただけでは倒産になりませんが、一回目に不渡りを出してから六カ月以内に二回目の不渡りを出すと、銀行取引が停止されてしまいます。

そうすると、取引先は、「現金で支払ってくれなければ商品を納入しない」という態度になります。この状態では、まだ会社がつぶれたとは言い切れませんが、仕事ができなくなるので、「事実上の倒産」となるのです(下図)。

でも、たとえばスーパーマーケットだと、銀行取引が停止になっても、店の営業を続けていれば、お客が現金で買い物をしてくれますから、毎日多額の現金収入があります。この現金で商品を仕入れ、とりあえず仕事を続けていくことが可能です。「倒産」のニュースが流れたのに店が営業していた、ということが起こるのは、こういう理由からなのです。

倒産のニュースで聞く「会社更生(こうせい)法」

企業倒産のニュースでよく見聞きする言葉が、「会社更生法を申請した」という表現です。企業の倒産といっても、実は手続きとして何種類もあります。大きく分けると、完全に消滅してしまう道と、敗者復活を目指す道です。「自己破産」の道を選ぶと、会社は完全に消えてなくなります。これに対して、「会社更生法」や「民事再生法」は、会社を残したまま再建を目指す〝敗者復活〟の手続きです。

会社更生法は、企業が裁判所に「会社更生手続開始の申し立て」をすることから始まるのが一般的です。申し立てが行われると、裁判所が「保全管理人」を指名し、「保全処分」が行われます。「処分」という文字が入っていますが、「保全する」という意味なのです。保全管理人には弁護士が選ばれるのが通常です。

とりあえず財産がバラバラにならないように保全しておいて、裁判所が更生手続きの開始を決定すると、保全管理人が今度は「管財人(かんざいにん)」となって、企業再建に向けた計画を作ります。管財人は、いわば会社の社長です。それまでの経営者は、経営責任をとって退陣します。

再建計画では、その企業の債務、つまり借金をどれだけ棒引きしてもらうかの案も作ります。この計画案は、関係者の多数が認めて初めて実行に移されます。再建が軌道に乗るまでには、長い時間がかかるのです。

そこで、会社更生法ほど手間と時間がかからない方法が生まれました。「民事再生法」です。民事再生法では、それまでの企業経営者が引き続き会社にとどまって経営にあたることが認められています。会社更生法のように経営者が総退陣すると、企業の経理内容に詳しい人がいなくなり、再建計画を作るのに時間がかかるなどの不便な点があるからです。

また、再建計画を認めるのに必要な関係者の比率は、会社更生法ほど多くなくてもいいので、計画の作成と実行に時間がかからずに済む利点もあります。

「民事再生法」は、いわば敗者復活の役に立つようにと制定されました。このため、経営が行き詰まった企業は、最近では会社更生法ではなく、民事再生法の適用を申請するケースが増えています。


池上 彰

カテゴリ:スキルUP
【著者紹介】池上 彰(いけがみ・あきら)
ジャーナリスト、名城大学教授、東京工業大学特命教授。愛知学院大学、立教大学などでも講義を担当する。慶應義塾大学経済学部卒業後、NHK入局。記者として数多くの事件や社会問題を取材する。その後、94年4月からの11年間、NHKテレビ番組「週刊こどもニュース」のお父さん役として活躍。2005年にNHKを退局、フリージャーナリストに。現在も、執筆・取材活動を中心に、各種メディアで精力的に活動している。

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