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日本は不景気? 知っておきたい「実際の経済成長率」と「潜在成長率」の関係/池上彰の経済⑥

日々のテレビや新聞、ネットに踊る「経済」や「政治」のニュース。そこに登場する「コトバとその意味」をあなたは理解していますか? 経済や政治の情報を正しく読み解くために最低限必要なポイントを、『イラスト図解 社会人として必要な経済と政治のことが5時間でざっと学べる』(池上彰著)からお伝えします(第6回)。

「経済成長率」はGDPで見る

経済ニュースに登場する「経済成長率」はどうやって出すのでしょうか。これは、GDPの金額の増加率を計算します。GDPとは、Gross Domestic Productの頭文字を並べたもので、「国内総生産」のこと。一年間に国内で生産された商品やサービスの金額の総額です。「生産」という言葉が入っていますが、具体的には、販売された商品の値段を合計したものです。

たとえば、あなたがスーパーで買い物をしたり、外食したり、美容院へ行ったり、映画を見たり、というさまざまな場面でお金を払う、つまり経済行動をするときの金額を合計したものがGDPです。もし、家族でファミリーレストランに行って食事をすれば、支払った金額がGDPに反映されます。

五人家族が一人二〇〇〇円分の食事をすれば合計で一万円になります。これに対して、自宅で料理して食べれば、食材を買った費用しかGDPには入りません。

仮に一人五〇〇円の食材だったら、合計で二五〇〇円にしかなりません。自宅で食事するより外食したほうが経済成長率は上がる、ということになります。

また、家事労働もGDPには入りませんが、家政婦を頼んでお金を払えば、GDPに計算されるのです。こうして具体的に見ると、いろいろおかしな点もありますが、国全体の「豊かさ」を計るには、結局はお金に換算して見るしかない、ということなのです。

経済規模が大きくなると成長率は低下する

戦後の日本がまだ貧しかったころ、経済の規模はとても小さかったので、わずかな経済の拡大でも成長率の数字は高くなりました。一九六〇年代初めには、日本の経済規模は二〇兆円程度でした。このころ、日本経済が一年間に二兆円分拡大すると、経済成長率は一〇%ということになります。

ところが、日本経済の規模が五〇〇兆円ともなると、一年間に二兆円増えても、成長率は〇・四%にしかならない計算になります(下図)。

経済規模が大きくなる、つまり国が豊かになると、生産量がこれまでのような増え方では、経済成長率自体は低くなっていくのです。以前に比べて経済成長率が低くなると、不景気だという気分になるかもしれませんが、経済成長率が低くなったからといって、それですぐに「不景気」とは言い切れないのです。

実際の経済成長率と「潜在成長率」

では、どんなときに「不景気」と呼ぶのでしょうか。実は日本では、正確な定義があるわけではありません。たとえばアメリカでは、三カ月間ごとの比較で、前より二期続いて経済成長率がマイナスになったときに「不景気」と呼ぶと決まっています。

これに対して日本では、実際の経済成長率が「潜在成長率」より下回ったときに、「不景気」と呼ぶことが多いようです。

日本経済には、その実力からして、「毎年この程度は成長していくだけの力がある」と専門家たちが考える数字があります。これを「潜在成長率」といいます。これは日本国内の企業の工場がフル稼働し、働いている人たちが、勤務時間いっぱいに働いた際に達成される成長率のこと。持っている力をフルに生かしたときの能力です。

ところが、「商品を買いたい」という需要があまりなければ、工場が能力いっぱいに生産することはありません。つまり、実際の成長率は「潜在成長率」を下回ってしまうのです。これを「不景気」と呼びます。

不景気でも暮らしが悪くならなかった日本

たとえば、戦後日本の高度経済成長時代、潜在成長率が一〇%程度はあると考えられているときに成長率が八%だと、「不景気」ということになってしまいます。人々は、「経済はもっと成長していいはずだ。この程度しか成長しないのでは景気が悪い」と考えてしまうのです。

「不景気」というと、「前より暮らしが悪くなったこと」だと考える人がいると思いますが、戦後の日本に限ってみれば、そんな状態になることはほとんどなかったのです。

外国と違う日本の「不景気」感覚

日本のGDPは、いまアメリカと中国に次いで世界第三位です。「日本経済はすっかりダメになってしまった」とよく言われますが、世界の中では圧倒的に豊かなのです。実は日本では、バブル崩壊後一〇年間の平均成長率は一%ありました。つまり、日本はバブルのころより物質的には豊かな国になっていたと再認識したほうがいいのではないでしょうか。




池上 彰

カテゴリ:スキルUP

【著者紹介】池上 彰(いけがみ・あきら)
ジャーナリスト、名城大学教授、東京工業大学特命教授。愛知学院大学、立教大学などでも講義を担当する。慶應義塾大学経済学部卒業後、NHK入局。記者として数多くの事件や社会問題を取材する。その後、94年4月からの11年間、NHKテレビ番組「週刊こどもニュース」のお父さん役として活躍。2005年にNHKを退局、フリージャーナリストに。現在も、執筆・取材活動を中心に、各種メディアで精力的に活動している。

【書籍紹介】『イラスト図解 社会人として必要な経済と政治のことが5時間でざっと学べる』(KADOKAWA)

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