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後ろ盾選びで未来が決まる!頼朝に学ぶ陰謀術/世渡りの日本史(1)

彼らは誰を謀ったのか、何に謀られたのか……? 東大教授にして史料編纂のプロ・本郷和人氏の著書『世渡りの日本史 苛烈なビジネスシーンでこそ役立つ「生き残り」戦略』より、日本史の闇に隠れた“権謀の歴史”からビジネスのヒントを読み解きます(第1回)。

中小企業レベルだった北条家

自分に大きな力がないとわかっているとき、お金も人もリソースが足りないとわかっているとき。そんなときこそ人は策略をめぐらせます。

ベンチャー企業では、「小さく生んで大きく育てる」というビジネスモデルで成功を目指しますが、お金も人も人脈も限られている中では、自分の知恵がまずは頼りになります。

その知恵は、時として「陰謀」に姿を変え表に出てくることもあるのです。

「陰謀渦巻く」というテーマでまず挙げるのは、北条時政・義時父子。

時政・義時は、鎌倉時代に「陰謀」によってのし上がったと言っても過言ではありません。言い換えれば、「陰謀」をもってして初めて力を持つことができたのです。

時政・義時の時代は、鎌倉幕府のリーダーである源頼朝が君臨していて、その妻が時政の娘であり義時の姉である北条政子。つまり、北条家は時の権力者の外戚(母方の親戚)だったわけです。

日本では、天皇家の外戚であった藤原家が貴族の中で力を持ったという経緯もあって、外戚である北条家ももともと輝く存在であり、権力を持っている家だと思うかもしれませんが、それは違います。

北条家はそもそも企業でいえば、地方の中小企業です。そんな中小企業がいかにして時の実力者になっていくのか。ここに様々な陰謀がからんでくるのです。

頼朝にとって北条家は、妻の実家という点で大事な家ではあります。

時間を戻してみると、頼朝は京都で始まった「平治の乱」(1159年)で負けて、敵方の平清盛にとらわれ、静岡県の韮山にある蛭ヶ小島(ひるがこじま)というところに流されています。この蛭ヶ小島の一番近くにいたのが北条家でした。そんなに大きい家ではありませんでしたが、まあ、そこそこの武士ではありました。

頼朝といえば政子、というくらい結びつきの強い夫婦であることは知られていますが、もちろん政子は頼朝にとって初恋の人ではありません。

頼朝が最初に恋仲になった相手は、流罪にあっていたころ、伊豆の伊東で一番有力だった伊東祐親の娘でした。これが純粋な恋なのか、はたまたいずれ後ろ盾になってもらいたいという打算なのか……、それは頼朝にしかわかりません。ただ、私は後者だと思います。あの頼朝ですからね。

その国を代表するような武士の家というのは、いざ戦いになったときに300人ほどの家来を引き連れて行ける規模のこと。伊東祐親はまさにそんな武士でした。その娘を頼朝は射止めたのです。

頼朝が伊東祐親の娘と親しくなったころ、当の祐親は京都にいました。朝廷の警護にあたっていたのです。しかし、任務が終わって地元に帰ってみたら、娘が赤ちゃんを抱いていた。これはどういうことだと娘を問いただしたら、「流人である頼朝と結婚して、子供ができた」と。

祐親は、激怒しました。よりによって、今をときめく平家ではなく凋落(ちょうらく)した源氏であり、かつ平家によって流罪にあっている危険人物じゃないか!

あんなヤツと縁戚になるなんて、とんでもない。ということで、二人の仲を引き裂き、その上、生まれたばかりの赤ちゃんを殺してしまいました。

もっともゆるせないのは、頼朝です。「よくもウチの娘をたぶらかしたな!!」と、祐親は追手を放ちました。ですが、悪運強いのが頼朝。祐親の企みを事前に教えてくれる人がいたため、逃げおおせたというわけです。

頼朝は、「後ろ盾」として、伊東家の資産だけでなく社会的信用も視野に入れていたことと思います。今も、無名の企業や起業家が有力者の後ろ盾を得て飛躍するケースは少なくありません。

ミドリムシの加工で知られるユーグレナは、創業当初にホリエモン(堀江貴文氏)が援助したことで広く知られるようになりました。

「後ろ盾」の選び方とタイミングはとても重要で、その点で頼朝は間違っていなかったと思いますが、今回はアプローチの仕方が間違っていた。かえって恨みをかってしまいましたからね。

伊豆有数の武士である伊東家と縁続きになるチャンスを失った頼朝。やむをえず、泣く泣く頼ったのが北条氏なのです。

◇ ◇ ◇

正しい「後ろ盾」を選ぶことがその後の流れをスムーズにする



本郷 和人

カテゴリ:スキルUP

【著者紹介】本郷 和人(ほんごう・かずと)
東京大学史料編纂所教授、博士(文学)。1960年、東京都生まれ。東京大学・同大学院で日本中世史を学ぶ。専攻は中世政治史と古文書学。著書に『戦国武将の明暗』(新潮社)、『日本史のツボ』(文藝春秋)、『東大教授がおしえるやばい日本史』(ダイヤモンド社)など多数。

【書籍紹介】『世渡りの日本史 苛烈なビジネスシーンでこそ役立つ「生き残り」戦略』(KADOKAWA)

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