スキルUP

読書で得たモノは「吸ったら吐く」で脳に焼き付ける/本の使い方(3)

本を読むときは、1行たりとも読み飛ばしてはいけない。稀代の読書家である出口治明氏の著書『本の「使い方」1万冊を血肉にした方法』より、本を選び、読み、活かすにはどうすればいいかを深く、やさしく解説します(第3回)。

人間は、言語化する動物である

人間は、言葉を使って物事を考えます。人間は言葉で考えるように訓練された動物です。自分が感じたこと、腹落ちしたことは、言語化して初めて整理できるのです。したがって、本や人から得た情報を脳に焼き付けておくには、言語化する必要があります。

インプットとアウトプットは、コインの表裏です。インプットしたものは、アウトプットしてこそ、記憶に留めておくことができます。

アウトプットとは、言語化することです。本を読んだら「自分はどうしてこの本をおもしろいと思ったのか」を言語化しておくと、本の内容を頭の中に取り入れることができます。


僕はよく、簞笥(たんす)を例にして話をするのですが、みなさんは時々、簞笥の中を整理していると思います。では、どうして中を片付けようとするのですか? 上から洋服などを整理をせずに詰め込んでしまうと、取り出しにくくなるからです。

人間の脳も簞笥と同じです。インプットした情報を言語化して整理しておかないと、うまく取り出すことができません。

本の感想を人に話したり、ツイッターやフェイスブックで発信したり、ブログに綴るのもいいでしょう。インプットした情報を言語化することは、簞笥を整理することと同じなのです。


元米国国務長官のコンドリーザ・ライスさんは、ブッシュ元大統領と一対一で議論するとき、大統領執務室に入る前に、自分の考えをもう一度メモに書き出したそうです。あれほど頭のいい人でも、言語を使ってアウトプットをして、自分の考えを整理しているのです(『ライス回顧録─ホワイトハウス 激動の2920日』〈コンドリーザ・ライス・著 福井昌子 他・訳 集英社〉)。

僕の場合は、自分で書いた文章を声に出して読んでみることがよくあります。声に出して客観化してみると、すぐおかしいところに気づくなど、自分の考えをよりよく整理することができます。


僕は、頼まれて数年前にしばらく、若い人を対象に『貞観政要(じょうがんせいよう)』(第5回目で詳述)の読書会を開いていました。この勉強会では、参加者に原文(漢文)を音読してもらっています。

どうして音読するのかといえば、声に出してアウトプットをすると、漢文の構造、たとえば「対(つい)」になっていることなどがよりわかりやすくなるからです。

「大ならしむれば則ち薄く、小ならしむれば則ち厚し」とか「明主は短を思ひて益々善に、暗主は短を護りて永く愚なり」など、声に出して読めばとてもよくわかります。

江戸時代の寺子屋では、子どもたちが大声を上げて漢文を読んでいました。僕たちの先達(せんだつ)は、「声に出したほうが、覚えやすい」ことをよく知っていたのでしょう。

アウトプットするから、インプットされる

僕はかつて、「アウトプットよりもインプットのほうが大事だ」と思っていた時期がありました。浴槽に水を入れていけば、放っておいても水が溢れるのと同じように、インプットの量を増やしていけば、放っておいてもアウトプットできると考えていたわけです。

ですが、実際はどうだったかというと、僕自身、インプットした内容をすぐにアウトプットしていた気がします。

学生時代は、友人と、本や映画や演劇について議論をするのが好きだったので、喫茶店や下宿にしょっちゅう集まっては、「オレはこう思ったけど、おまえはどうだった?」などと話し合っていました。

オンラインサイトにブログを掲載したり、職場で「こんなおもしろい本があったよ」などと話すことで、簞笥の整理(頭の中の整理)ができます。つまり、インプットした内容をアウトプットしているからこそ、強い記憶が残っているのかもしれません。

先日、三井物産の槍田松瑩(うつだしょうえい)会長と対談する機会がありました。槍田会長が「何かを知りたくなったらすぐに話を聞きに押しかける。そして、感動して帰ってきたら、誰かをつかまえて全部話してしまう」と言われたのを聞いて、最高の勉強方法だと思いました(http://toyokeizai.net/articles/-/41559)。

知りたいと思ったときにインプットするのも最高なら、感動したときにアウトプットするのも最高です。みなさんはそう思いませんか。

水泳でも、大きく息を吐く(アウトプット)からこそ、上手に息を吸える(インプット)のです。まさにインプットとアウトプットはコインの表と裏なのです。

母国語で考える

頭の中でインプットした情報を言語化するためには、母国語を大切にしなければなりません。

最近は、幼稚園でも英語教育が取り入れられています。グローバリゼーションの時代を展望すれば、英語は話せたほうがいいに決まっています。

ですが、子どもが物事を考えるときに「日本語で考えるのか、それとも、英語で考えるのか」どちらかを親は決めておくべきだと思います。そのほうが、しっかりと考える子どもが育つでしょう。

「今日は日本語で考えて……、明日は英語で考えて……」と両方を使って考えるのは、バイリンガルの人でも難しいのではないでしょうか。小さな子どもに英語を学ばせるときは、親が、「どちらの言語で考えるのか」をきちんと決めておかないと、子どもがかわいそうだと思います。

出口 治明

カテゴリ:スキルUP
【著者紹介】出口 治明(でぐち・はるあき)
APU(立命館アジア太平洋大学)学長。京都大学法学部を卒業後、日本生命保険相互会社入社。退職後にネットライフ企画株式会社を設立し、代表取締役社長に就任。ライフネット生命を開業し、東証マザーズ上場。『座右の書『貞観政要』 中国古典に学ぶ「世界最高のリーダー論」』(KADOKAWA)など著書多数。

【書籍紹介】『本の「使い方」1万冊を血肉にした方法』(KADOKAWA)

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